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マリッジ・コントラクト 番外編特設ページ  作者: 星つむぎ


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3/3

放課後の思い出

「翠、それ、何作ってるの?」

「ん~なんだろうね?」


休憩時間、美咲ちゃんが声をかけてきた。

私の手元には、ビーズのパーツがたくさん……。


「なにか思いついたから材料引っ張り出したんじゃないの?」

「いや、最初、ブレスレット作ろうと思ったんだけど……」

「思ったんだけど?」

「あるもので作るとなったら、ちょっと色がね……気に入らなくてさ」


うだうだ悩んでいたら、お手洗いに行っていたかおりちゃんが帰ってきた。


「翠、美咲も。今日帰りに新しく出来たクレープ屋さん寄らない?」

「あ、あの駅前にできた屋台の?」

「そうそう! めっちゃ美味しそうだったの!」


高校からの帰宅時に前を通る駅前に、小さな屋台のクレープ屋さんが出来た。

幼稚園からの付き合いのかおりちゃんは、甘いものに目がない。きっともう、何を食べるかまで決めているんだろう。

高校で仲良くなった美咲ちゃんは、クレープよりも、今から私が何を作り上げるのかが気になっているようだった。


「フルーツたっぷりのクレープも美味しそうなんだけど、なんか、チョコのやつも美味しそうでさ~」

「と言いつつ、かおりはきっともう買うクレープを決めていると……」

「ははは……」


思わず、乾いた笑いがこぼれる。

雑談しているうちにチャイムが鳴ったので、授業のためにそれぞれが席に戻っていった。




***




結局、放課後までにブレスレットのいい案が出てこなかったので、材料は家に持ち帰ることになった。


「残念。翠のつくるブレスレット気になってたのに~」

「と言われても……」

「ま、イメージが湧かなかったなら、そういうこともあるって。手芸ってそんなもん!」


三人で歩道を駅に向かって歩く。他の人の通行を邪魔しないように、横に広がらないよう気をつけながらおしゃべりを続ける。

美咲ちゃんの要望に答えられないことを申し訳なく思いつつも、思ったようなものが作れないから仕方ないと言おうとすると、かおりちゃんが先に口を開く。

相変わらず、面倒見が良い。


「新しい材料ほしいけど、今のお小遣いじゃちょっと厳しいな……」

「翠って、結構お小遣い厳し目の管理してるよね~」


美咲ちゃんが不思議そうに言う。

一応、管理項目別に分けてはいるんだけど、今月手芸品に回せるお小遣いをかなり使い込んでしまった。

面白そうだと思ったことには、ことごとくお金をかけてしまう……。要改善だ。


「こういう、寄り道して買食いする時の分の予算とか、基本は項目別で分けてるよ。お母さんが公認会計士だから、そういうところずっと真似してきたからね」

「あ、そうか。おばさん、そういうの細かく管理してそうだもんね」

「なるほど、翠の真面目さに影響してるんだ。おじさんは、警察官なんだっけ?」

「そう。今は地域課? で仕事してるはず……交番に出勤してるよ。制服着て」


部署異動があったとき、部下の人が昇進祝いとしてかなり上等なお肉をプレゼントしてくださった。

正確に言うと、地域課を経由して別部署の管理職に移動になるらしい。

そこら辺がいまいち、よく分からない。

守秘義務の関係もあるとかなんとか……。

警察官って難しいんだね。


「警察官ってなんか、門限とか厳しそうなのに、翠はあんまりうるさく言われてないんだ?」


美咲ちゃんが不思議そうに聞いてくる。

そう言えば、あんまり言われたことないな……。


「護身術として剣道を習っておけって言われて、お父さんの知り合いの刑事さんのご実家の剣道場に通ってるからか、あんまり言われないな……」

「下手な変質者なら、翠、返り討ちにしちゃうだろうからね……」


通っている剣道場の話を出すと、かおりちゃんが遠い目をした。

そうなんだよね、そこそこ、私、剣道の筋が良いらしくて、中学から始めたのに中学三年の時点で昇段試験を勧められて今は初段だ。

来年、二段の昇段試験を受ける予定になっている。


「来年の四月頃かな、二段の昇段試験を受ける予定だよ」

「私、全然分からんけど、すごいことなの?」


美咲ちゃんが不思議そうに聞いてくる。

かおりちゃんもあんまり分かってないから、私の方を見てきた。


「……一応、柳田先生いわく、『筋が良い』らしい。ただ、それがすごいことなのかどうかは私も分かんない」


柳田先生にそう言われたけれど、正直、どれくらいすごいことなのかは今でもよく分からない。


「あ、あれあれ! あのクレープ屋さん! 美味しそうでしょ!」

「かおりちゃん、自分のお店じゃないのに、なんでそんなに自慢げなの……」

「……へぇ、結構色んなメニューあるっぽいね。屋台はこじんまりとしてて可愛い」


目的のクレープ屋さんが見えて、かおりちゃんのテンションが上がる。美咲ちゃんも屋台の印象が気に入ったらしく、興味津々だ。


「私、抹茶にしよう~」

「あれ、かおりが意外なところに行った! フルーツたっぷりのクレープに行くと思ってたのに!」

「うん、悩んだけど。抹茶が美味しそうに見えたんだ。抹茶チョコ」


私、どれにしようかな……。


「美咲ちゃん、どれにするの?」

「私? どうしようかな……翠は?」

「悩み中」


列ができている最後尾に並んで、最後尾のプラカードを持ったスタッフさんからもらったメニュー表を見ながら、二人でうんうん悩む。

どれも美味しそうだ。

ひときわ目を引くのは、ベリー系メインのクレープだけれど……。

いや、やっぱりそうしよう。


「私、ベリークリームにしようかな……」

「お、翠はベリー系行ったか……。私はどうしようかな~」


美咲ちゃんはずっと悩んでいる。


──結局、私たちの番がくるまで、美咲ちゃんは悩み続けていた。

高校生の頃の翠。

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