FEAR
「腹減ったなぁ~」
街灯も着かずカーテンから漏れる家の微かな光しかない夜道にゼオが嘆く。
瓶がカランと音を立てた。
「飴いる?」
「大阪のババアかよ!ぐしゃぐしゃの黒飴なんかいらねーぞ!?」
「いや、なんか昼間に散歩してたらピエロから貰った」
「昼間に散歩て、ジジイかよ、てかピエロってなんやねん」
「いやいたんだよ、風船持って、子供に飴配ってた」
「…なんか怪しくねぇそれ」
「うん、そう思って隠れて見てたら1人だけの子供をどこかに連れて行こうとしてた」
「はぁー!やっぱり人身売買かよ!で?殺した?」
「飴と一緒に首も転がってるよ」
「よくやった!」
ゼオがスっと手を差し出して開く。
「ん?」
「くれよ、飴」
「あぁいるのね、はいよ」
ゼファーはポケットからパケに入っている物を出す。
飴と言うよりタブレットに近い物だ。
可愛らしい熊の絵柄が彫られている。
「…ゼファー、これ飴じゃねーよ…」
「え?そうなの?」
「タマだよ!MDMA!いらねーよこんなの!」
ゼオは投げ返すと裾に付着していた肉片までゼファーに飛ばす。
「うわぁ!きたなぁ!」
「俺が汚ぇみたいにやめろ!ったく」
ゼオが小石を蹴飛ばす。
「はぁー腹減ったなぁー、なんか食いたいもんねぇーの?ゼファー」
「ギトギトのラーメン」
「うっわそれ反則」
「こっちじゃ食べれないもんねぇ…パスタ麺で作ってみる?」
「やだよ、絶対失敗すっだろ」
「悪い人達の間では薬物練り込み麺もあるらしいよ」
「ゼファー俺をヤク中にしようとしてねぇ?」
「ははっまさかぁ」
中身のない雑談を続けているとUnreality社の近くまで来ていた。
異変に気付いたのはすぐだった。
「なんか、ホームレスの人達死んでない?」
Unreality社の近くはホームレスがたまり場にしている道があるのだ。
そのホームレス達が何者かによって刃物で切り裂かれていたのだ。
「嘘だろケビン……誰がやりやがった…っ!」
ゼオは腹部を切り裂かれ腸が飛び出している1人のホームレスに近寄った。
ゼオは結構ホームレスの人達を茶化したり仲が良い人もいたりする。
「その人…知り合いだったんだ…」
「しらねーよ誰だこいつ」
「まぁた適当な事言って…」
「はぁーーまたかーー!」
「またって?」
「行きゃわかるよ」
2人はUnreality社に向かって歩いた。
Unreality社に着くと玄関の壁に大きく FEAR と血で書かれていたのだ。
「えっと、これは何?バンクシー?」
「ヘッタクソなバンクシーだなおい、俺が本物見せてやる」
ゼオは右手の親指に黒煙を纏わせ自らの人差し指の先を切り落とし何かを描き始める。
「…何描いてるの」
「うんこ、しかもなんと1本グソ」
「君が本物のバンクシーだよ…」
「ふっ、2人とも!」
大声が聞こえた矢先ニコルズとその他数名の社員が影から姿を現した。
「おっす~おっさん元気だった?」
「元気も何も何人も殺されてしまったんだ!」
「うるせ~見りゃわかるわ」
「頼むよ!何とかしてくれ!中にまだ優秀な社員が取り残されてるんだ!」
「わーた!わーたて!騒ぐなメガネ!」
そしてニコルズは壁の血文字を観る。
「こ、これはまさか……!」
「バンクシー作の1本グソ、傑作だろ」
「FEAR……またあの連中だったのか!」
「なに?クソの絵は無視かよクソヤロー」
「その、FEAR?ってなんなんですか?」
ゼファーは聞いたこともない、そして、また、とは何なのか。
「前に言ったろ?Darknessを奪おうとしてくる連中」
「言ってたね…奪おうとしてくる…って」
「どう奪うかはさーっぱり、前にも1回同じ事が起きて何人も殺されたよ」
「俺がまだ目覚めなかった時の事か…」
「そう、そんときは俺が奴ら皆殺しにしたよ」
するとニコルズがゼオの両肩を正面から掴む。
「いいかいゼオ君!前回は仕方なかった!しかし同じ事は繰り返さないでくれたまえよ!」
「ゼオ何かしたの?」
「ははっしょーがなかったんだって」
「ゼファー君、彼は前回人質の社員もろとも撃ち殺してしまったんだ…」
「だってぇ、助ける作戦なんて考えつかなかったしぃ?」
「仕方の無い事だとしても!もっとこう!何か無かったのかね!?」
怒鳴られたゼオは癇に障ったのかニコルズの首を鷲掴みにする。
「さっきからうぜぇんだよ、てめぇでやるか、てめぇからやっちまうぞ?あぁ?」
「がっ…がっ…ごぼぉ…」
ニコルズはゼオの手をパンパンと叩くとゼオは拘束を解いた。
「はぁっはあっ……すまない…気が動転してて怒鳴ってしまった」
「でもゼオ、ニコルズさんの言ってる事もわかるよ」
「そうなんだけどよ、過ぎた事ごちゃごちゃうるせぇ」
「すまない…許してくれ、ただこうしてる間にも……私には力がない…恥を忍んでお願いするよ…」
「最善を尽くしてみますよ」
「ありがとう……ゼファー君……」
「ゼオ」
「あーわかったよ!でも必ず助けられる保証はねーからな!」
「……頼んだよ…私達は事が済むまで身を潜めているよ…さ、皆」
ニコルズは肩を落とすと社員を連れ何処かに向かって走り始めた。
「とは言えよーなんか作戦あんの?」
「いや、全く」
「ぎゃはは!お前もテキトーだなゼファー」
「ま、なる様になるでしょ」
「んじゃまサクッと行きますか!」
2人は入口に向かって歩き出す。
「あぁ?自動ドア反応しねー電気系統も死んでんのか?」
「手動だよ、元々」
「んなわけない!俺の方が知ってるんだ!」
ゼファーが取っ手に手をかけ扉を開ける。
「ほら、手動だろ?」
「ほら開いた、な?自動だろ?」
「うっっっわ凄いムカつく」
「いっくぞぉー!」
「はいはい」
2人は社内に入る。
そこは凄惨な現場だった。
あちらこちらに切断された手足、頭部 四肢の無い死体。
鉄の臭いがツンと鼻を突く。
「うっふぁー血だらけじゃねーか!バッラバラ!」
「清掃に時間掛かりそうだね」
「まだなんか生温いぜ」
ゼオが指で血をすくう。
「そんなに時間経ってないんでしょ」
「よっしゃ!う、ん、こ!っと!」
「なにしてんの」
「バンクシー再来!奴らもびっくりストリートペイント!」
「だからって死体のおでこに書かなくても…」
「物足りねーから量産型にするか、よし、もう1人にも」
「おい!Slaughterだな!」
暗闇からスーツを着て仮面を被っている男が現れる。
手には肉切り包丁。
「ああっ?」
ゼオがメンチを切る。
「取引に応じたのか、さっさとこい!」
「馬鹿野郎、まだ量産してないっての、これじゃジェットストリームアタックができねー」
「取引に応じた覚えはない」
ゼオが冗談を言っている最中だが面倒なのでこちらで進める事にした。
「なんだと?人質がどうなってもいいのか!?」
「救い出す、さぁどうする?」
「人質諸共お前ら殺す!」
肉切り包丁を突きつけてきた。
「おいおいおい、これお前両足無いじゃん!これじゃジオン…」
「ゼオ、ガンダムはわかったから」
「ふざけてんじゃねぇ!」
男が突っ込む。
「!」
男は動きを止めた。
何故なら先ほどまでしゃがみこんでたゼオに横にいたゼファー、男との距離はあまり近く無かったが、踏み込んだ瞬間、男の喉元に二つの黒煙の刃が突きつけられていた。
「一瞬で…どうやって、何だこの煙は…」
「どうやったんだゼファー?」
「さぁ?どうやったの?ゼオ」
「ははっ!……こうやったっ!」
2人は手を振った。
男が最後に見た光景は額にうんこと書かれた人間の頭部だった。
「うーん、今回も手下しかいないんかなぁ」
「前回はどうなの?」
「下っ端数人」
「早く終わらせよ、お腹も空いたしシャワーも浴びたい」
「ちょっと待ってろよー血のシャワーなら直ぐに浴びれっから」
「…サイコー」
「血の足跡あっからいこーぜ」
「ここはよく迷うからね、親切だ」
「ここを右っ!インド人を右に!」
「うおぉぉぉぉ!!」
いきなり男が飛び出してきてゼオの腹部にナイフを立てる。
ゼオは銃を出し男の腹に撃ち込んだ。
「な、なんじゃこりゃー!!」
煙を纏わせたゼオが下手な演技をする。
腹に銃弾を撃ち込まれた男はゼーゼーと息を漏らしよろよろとゼファーにもたれ掛かる。
最後の抵抗か、口をニヤつかせゼファーの脚の露出した部分を舐めたのだ。
「!」
このような形で背筋がゾワッと来たのは初めてだ。
気色が悪い。
「おいこら変態野郎!なに太腿舐めてんじゃ!」
黒煙を纏わせたゼオが男の首を切る。
ゼファーの足も一緒に。
「おわっ!」
いきなり右足を切断され、よろけてゼオにしがみつく。
「ごめんゼファー力加減ミスった」
「あぁびっくりした」
「この体制恋の始まり?」
「馬鹿言え」
切断された足から煙が上がりひとりでに起き上がって吸い込まれるように身体へ戻って行った。
「それにしても今回は必死だな奴ら」
「必死?」
「ああ、奴らがこう影から奇襲すんの初めてだ」
「そりゃDarknessが2人だからじゃないのか?」
「そうかな…」
「とりあえず、先に進もう」
2人は足跡を頼りに歩き出した。
「おい、奴らは来たのか?」
「ああ、カメラに2人写った、こっちも2人殺られたぞ」
「そうか、来たらこいつらの首にナイフ
突きつけろ」
そう言って男は人質の社員の襟首を掴んだ。
人質は10名
FEARの連中はその倍はいるだろう。
だが既にSlaughterにより、2名亡き者になっている。
「それにしてもよぉ、あのお方マジでおっかねぇと思わねぇか?」
「本当に、やべえよな、デッケェ剣突きつけてDarkness取ってこいだ、 正気の沙汰じゃないぜったく」
「黙ってりゃ良い女なのになぁ?」
「マジでそう、デケェ乳にあのスタイル、縛って黙らせてヤリまくりてぇなぁ」
「おい待て、奴ら来るぞ」
「!よし!早いとこDarknessとやら奪って俺たちのもんにしちまおうぜ」
「その後はあの女回しちまうか!?はははは!」
人質を匿ってる部屋は会社の3階の会議室らしき場所。
入り口は大きめの扉一つしかなく、後ろからの攻撃はない。
扉の前を映した防犯カメラに2人の少年が映る。
「来るぞ、目の前だ…」
皆、息を飲む。
皆強がっていたものの、流石に怖いのだろう、奴らは不死身なのだから、実際、Darknessをどう奪うのかは知らない。
生け捕りにして、幹部に届けるしかない。
「あれ?ここじゃね?」
扉の向こう側から声が聞こえる。
「会議室、足跡続いてるし雰囲気的にここじゃない?」
「しゃー!行くぞ!」
ガタンガタンガタン
「あれ?開かね、違うんじゃない?」
「馬鹿押すんじゃないよ、引け引け」
ガチャリ
「お、開いた」
「おらァァァァァ!動くんじゃねぇ!」
「人質ぶっ殺すぞおい!」
スーツに仮面の集団が18人。
人質はずさ袋を被せられ一人一人にナイフを突きつけられている。
「うわーどうしよ」
「やあ皆さん!揃いもそろってアホ面してんなーー!」
ゼオが銃を構える。
「銃下ろせ!やっちまうぞ!?」
「待て、撃たねーから待ってくれなんでも言う事聞く」
「銃捨てろガキぁ!」
ゼオがゴトリと銃を落とす。
「ありゃ?随分素直じゃないのゼオ」
「だーってどうすりゃいいかわかんねー」
「ガキ、こっちには爆弾もあんだよ!」
人質には全員ダイナマイトが巻かれている。
「まぁじ?なんででけぇソーセージ巻かれてんのかと思ったわ」
「んなわけないでしょ、どう見ても」
「大人しくこっち来やがれ!」
「待て!待ってくれって!言うこと聞くから!1本だけ電話させてくれ!」
連中は、はぁ、とため息を着く。
「さっさと済ませろ!」
「サンキュー!お前昇格決定!」
「早くしろ!!」
ゼオはポケットから携帯を取り出し耳に当てる。
「もしもーーし!あーおっさん?俺俺!今目の前に人質いんだけどどーすりゃいいかわかんねー!」
(何とかならないのかい?)
「わかんねーから電話してんだろタコ」
(彼らの要求は何かな?)
「俺ら?だと思う」
(ふむ…どうしたものかな…いいかいゼオ君、銃はダメだよ、前回同様、連射したら社員達も犠牲になってしまう)
「わかってるっ……そうだ、閃いた、セミオートだ…」
(そんな!それは無謀すぎる!)
「ばぁーか!俺らのスピードとエイム力舐めんなよ」
(本当に…それが正しい選択なのかわからないけど頼むよゼオ君)
「んじゃま!まかせりまかせりーー!!」
ゼオは電話を切ると携帯をしまい両腕に銃を出現させる。
「ゼファー!セミオートだ!俺らなら狙える!」
「随分賭けに出たねぇゼオ」
ゼファーも銃を出現させた。
「ガキぃ!言うこと聞くっつったろうが!!」
人質にナイフを向ける力が篭もる。
「え?そんな事一言も言ってないよ」
「…2回言ったよゼオ」
「ぶち殺すぞこいつらぁ!」
「いいかゼファー、チャンスは一度きり、俺の初撃に合わせて素早く狙って素早く仮面共を撃てよ?」
「ゼオも失敗するなよ?」
「任せろって」
「おい!人質1人殺せ」
「行くぞ」
ゼオがトリガーに力を入れた。
いつも連射ばかりで狙っていないような撃ち方のゼオから放たれた弾丸は見事に狙いを外れ人質のダイナマイトへ向かった。
ドカン
壮絶な爆音と共に爆風で2人は扉を突き破り部屋から吹き飛ばされ、廊下の壁に叩きつけられたのだ。
「うっわ!び、びっくりしたぁ!」
「な!なに!?何が起きやがった!」
2人は立て篭りが起こっていた部屋を見ると仮面の集団は人質もろとも爆弾によりバラバラに砕け散り辺り一面血と肉片の海と化していた。
「……ゼオ」
ゼオは頭と首を交互にポリポリと指で掻いている。
「……やっちった…」
ゼオはゼファーの顔を見る。
「狙いミスったでしょ」
「やっべぇーー……どーーーしよーー……」
「どうしようも出来ないよ…これ…」
「はぁーーーーーんーーーー!!……はい!!やっちまったもんはしょーがねーーー!!おわり!!!解決!!!」
「あ、開き直った」
2人は立ち上がるとUnreality社の出口に向かった。
「ど、どうしたんだい一体!?大きな音が聞こえたから駆けつけたよ!」
出口から出るとニコルズ達が外で待機していたのだ。
「これはこれはニコルズ様!ご機嫌麗しゅう!はい!これ!ごめんあそばせ~おほほー!」
ゼオはニコルズに何かを渡した。
「わっ!なんだいこれ!」
「小指ですねぇ……ゼオのだなぁ…」
「な、なぜ小指を……!?」
落とし前としてエンコ詰めたのか……すぐ治るくせに……
そして小指はひとりでにゼオの元へ黒煙と共に吸い寄せられて行った。
「一体何があったんだい?ゼファー君」
ゼオはニコルズの後ろの方でソワソワとしている。
はぁ……
「いや、実はですね……」
……
「…そうだったのか……」
ニコルズはゼオの方へ振り向く。
「ゼオ君」
ゼオはソワソワとしていたがドキリと動きを止めた。
「まさか……敵が自爆をしようとしてゼオ君は止めたが間に合わなかったと……」
「……へ?」
ゼオも振り向く。
「俺たちもろとも巻き込んで後から回収しようとしてたみたいです、後から来た敵は迎え撃ちました」
ゼファーがニコルズにそう言い放つ。
「敵も必死になっていたのか……人質となった社員達は本当に残念だが…よく頑張ってくれたね、ありがとう」
ゼオはポカンとした表情。
「私はこれから警察と消防に連絡をとって処理をするよ、2人共、今日はゆっくり休んでおくれ、残った社員さん達、申し訳ないがあと少し付き合って欲しい」
「お言葉に甘えて」
「ああ、おやすみなさい」
「ゼオ、行くよ」
ゼファーはゼオに一声かけると再びUnreality社の中に戻っていく、ゼオはその後を訳の分からぬまま着いて行った。
自らの部屋に着いた時にゼオが声をかけた。
「ゼ、ゼファー…」
ゼファーは後ろを向いたまま
「ゼオ、ゼオの失敗は俺の失敗、連帯責任だ」
ゼオは ? のままだ。
そしてゼファーはゼオの方に振り向きニヤリと笑った。
「だけど責任なんて取りたくないもんね」
「ゼファーーーー!!!」
ゼオはパァっと笑顔になるとゼファーに飛びついた。
「いやぁー!ゼファー様様ーーー!!さすが相棒だぜぇ!!わかってるぅーーーー!!」
「よせってーー!」
「結婚しよ!後で背中流してやるししゃぶってやるーーーー!!」
「それは勘弁」
「ジョーダンだよーーーったく!」
「しかしほんっとに破天荒だよなゼオは」
「それ、俺の通り名でもあるのよーー!けどよ!ゼファーだって悪ぃ奴だなーー!」
「だって悪だもん」
「はっはっはっ!確かに俺らは悪だわなーー!」
2人は笑い合ってるがゼオが突然
「手なわけでシャワー先いただき!!!」
「あ!ずるい!!」
「こちとら血とか肉とか脳とか小便とかでよごれまくっとるんじゃ!!」
「それは俺だって!」
「じゃーねーー!」
この瞬間でゼオは全裸になっていてサッとシャワールームに消えていった。
ちぇ…先に行かれちゃった。
結局、先にシャワーに入られたゼファーはソファーに座り、テーブルに置いてあったわけわからないおもちゃをいじって暇を潰していた。
コーヒーでも貰ってこようかな…
コーヒーを貰いに、ゼファーは部屋を出て、エレベーターに乗る。
社内は遺体の回収、清掃が入っていて、夜中なのに電気はバリバリついている。
あっ ニコルズさんだ。
ドアの狭い窓からチラッとニコルズの姿が見えた。
「ニコルズさん、コーヒー貰えません?」
「はっ…!え?わっわっちょっちょっと待って!」
いきなりノートパソコンをスリープ状態にしたと思えばすぐ閉じてしまった。
「?」
「あっコーヒーね、そこの給湯室にあるから好きに飲んで!」
「あ、はい、貰いますよ」
ニコルズはパソコンを隠すように立って微笑んでいたが、何を見ていたんだろうか。
コーヒーを2杯作り、給湯室を出る。
「ニコルズさん?何隠したんですか?」
「えっ…あっいやぁ、ちょっと立て込んでた仕事をだねぇ…」
「ご苦労さまです、じゃあ、コーヒーありがとうございます」
「ああ、ゆっくり休んで、おやすみ」
コーヒーを持ち、部屋に戻る。
ゼオはとっくにシャワーから出てたようだ。
「んお?ゼファーどこ行ってたんだ?」
「ああ、コーヒー貰いに行ってたんだ、はい」
ゼオにコーヒーを渡す。
「サッンキュー」
「でさ、ニコルズさんがいたんだけど、俺が来たら直ぐパソコン閉じたんだ。」
「どーせAVでも観てたんだろー夜な夜なシコってるぜあのおっさん」
「いや…あんな事が起きた後だよ……しかも仕事って言ってたし」
「前にパソコン覗き見したら貧乳ロリが好きらしい、気をつけろよゼファー」
「いや…何一つ合ってないよ」
「あ、シャワー終わったから、入っていいよ」
「はいはい、待ってましたよー」
ゼファーはコーヒーを飲み干し、シャワーを浴びに行った。