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雨の日には

 「うわわああっ!ソアン濡れちゃう、あそこの大きな木の下で雨宿りしよ!」


 ティルディーが俺の服の腕の裾を引っ張ってそう言った。雨はどんどんと強くなる。外にいた村の人はもうすでにいなくなっている。もう・・突然の雨はやめてほしいものだ・・。


 「そうだな!」


 あ。そう言えば俺ら一文無しだったな。今日は野宿か。心の中で二度目の雨が降りながら呟いた。雨なのに中に入れないなんて悲しすぎる・・。事情を話せば入れてくれるだろうがもうびしょ濡れの俺たちを中に入れてもらうのはなんだか申し訳ない。


 「ゴホッゴホ、ティルディー寒くないか?」


 俺は半袖のティルディーを見て聞いた。俺は上着を着ているので寒く・・いやさっき雨に濡れて少し寒いけどティルディーの方が雨に濡れて寒そうだ。


 俺の上着を貸そうと思い上着を脱ごうとしたらティルディーに制止された。首を振っていたので大丈夫ということだろうか。


 「大丈夫だけど咳大丈夫?ソアンの方が寒いんじゃない?」


 「いや大丈夫だ。飲めば治るから・・・。」


 「?飲めば?ふーん。まぁいいならいいけど。」


 不思議そうな顔をしてティルディーは言った。そう。俺の場合は飲めば抑えられる。なので鞄にしまった瓶を取り出し中身を一粒飲んだ。・・水無しは少しきついが水筒の水は無くなってしまったのでしょうがない。


 飲み終わった後にあ、ティルディーに水頼めばよかったと後悔したがもう遅い。


 「・・・・。」


 「・・・・。」


 雨のせいで気が落ち込んでいるせいか沈黙が続く。何か話した方がいいか?いや、でも沈黙がいい時もあるし。一人で悩んでいると。


 「ねぇ。」


 ティルディーが話しかけてきた。


 「!!!ん、なんだ?」


  少し、いやかなりビビった・・・。陰キャ男子の心臓に悪い・・。まぁこんなこと陽キャ属性のティルディーにはこの気持ちわからないだろうが。


 「ソアンはさ、雨を見てどう思う?」


 急な質問だな・・・。雨・・雨かぁ・・。でも雨に特別思い出があるわけでもない・・。悩んでいるとまたティルディーが話し出した。


 「僕はね雨を見ると星が泣いているんだなって思うんだ。」


 ティルディーは雨を掴むように手を空へ向かって伸ばした。ティルディーの手のひらにどんどん雨が流れていく。


 「どうして?ただの雨だろ?」


 俺は不思議そうにティルディーに聞いた。俺は雨には何の感情もわかない。少しだけ落ち着くとは思うがそれ以外には何にもない。でも新月の夜に雨が降るときには星が見られなくてもやっとした気持ちになる。・・・悲しいの間違いかもしれないが・・。


 「うん。でも雨は冷たくて静かに地面に降り注ぐ。きっと魔物が仲間を食べて仲間を失った悲しみで星が泣いていると思うんだ。」


 ティルディーは泣きそうな顔をしながら空を見上げた。


 「泣いて・・。」


 星が泣いている。雨に対しそういった感想を言っている人を初めて見た。雨は気づいたら降ってるし気づいたらやんでいる。そしてたまにだけど雨上がりには虹が出る。


 雨とは俺にとって自然現象の一環でしかなく雨に対しての情はないと思う。多分・・。ディルディーの考えに対し俺の頭の中で考えを発展させているとまたディルディーが話し始めた。


 「星は僕たち人間にとって神様のようなもの・・。きっと僕達を見守っててくれる。そう信じている。でも星は魔物から身を守らなくちゃいけないし僕達を見守らなきゃいけない。星は何よりも儚く壊れやすいのに星は誰からも守られない・・・。星だって生きているのに・・。」


 「・・・。」


 「知らないって罪だよね。星を勝手に想像して語っているから星の本質なんて誰にも見られないんだ。それに本質を隠されている方だってなんでもない顔で役目を実行する。それが正しいと疑わずに・・。」


 「本質・・。」


 ・・・あまり星について考えたことなかった。だって俺が生まれてからずっと空に浮かんでいてそれが当たり前だった。俺たちが魔物を倒すという対価と共に人々を守るということに。


 星について知ろうとも思わなかったし・・それほど考えたいと思わなかった。だって誰かの本質を知ることはとても怖いことだから。


 それは星に限らず人にも言えることだ。その人の本質を見ずに押し付ける。誰かが間違っていると言わないそう言う人がいない限り役割を押し付けられる方は間違いだと気づけない。


 「・・ごめんね!変な話しちゃって。少し雨に思うことがあっただけなの!気にしないで・・・。」


 そう言うとティルディーは地面に寝っ転がった。あ、そこだと髪汚れるぞと思ったが魔術で何かしたのか微妙にティルディーの頭が浮いている。


 すごいな・・と思うと同時にさっきの話を振り返った


 「星・・・。」


 俺はもう一度空を見上げた。雨が降っているせいで今日は星は見えない。星・・・。いまだに謎が多い存在。でも、いつか星と話すことができるなら


 その時は人と星(神)とか守る、守られるではなく対等な関係で・・・。話をしてみたい・・。星という本質を理解したうえで。


 今日のジークとトナカイの魔物のように・・・あんな二人みたいに。


 「友達に・・なりたい。・・・かな。」


 「・・・・・・。」


 「ティル・・あれ?寝ちゃったか。」


 横を見るとティルディーはすやすやと寝息をたてて寝ていた。


 「まぁ色々あったしな。俺も寝るか。」


 ティルディーに「おやすみ」と言い俺も寝ることにした。雨もやみ夜空に星が輝く、その下で。


  


  


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