間話 2 今回の事件について
「ふぁぁっ、はぁー疲れた」
俺は手に持っていた紙を机に置き、ソファーにどかりと座った。今日はとてつもなく疲れた。今何時だ?と思い時計を見ると、針は十二時を指している。
昼の十二時と勘違いしそうになるが完全に真夜中である。窓の外を見ても真っ暗だ。
(そもそも、あいつが早く情報を吐けばすぐに終わったのに・・)
ーーそう。今日俺はフィルア家の元使用人。えっと名前は忘れたが、俺たちを襲った使用人に情報を聞きに行ったのだ。
勿論フィルア嬢からの情報で十分だったが、少し痛めつければもっと情報が手に入るかもしれないと思ったのだ。
実際に手に入ったから良かったが・・
(まさか十二時間かかるとは思っていなかった。というかやっと情報聞き出せたかと思えば挑発してくるし。なんなんだあいつは・・)
おっといけないいけない。心を落ち着かせなければ。
俺は深呼吸をした後、机に置いた紙を手に取った。書いてある内容は、
◯フィルア嬢が毎晩記憶になく外出していたのは魔人の魔法によるもの。(精神系の魔法が得意だったらしい)
音楽で人を誘き寄せる。だがこの音楽は、深刻な悩みを抱えている人にしか聞こえない音という欠点があるそうだ。
悩みがあっても耐性があれば聞こえないらしい。
◯フィルア嬢が毎晩動物の死骸を持って行っていたのは魔人の食事のため。(ただ食べ物を置いていくだけでフィルア嬢に何かしでかすようには見えなかった)
◯転移の魔法陣は合わせて使うもので、欠けている部分を足すことで陣が完成する仕組みだったそう。(毎晩使用人が陣を作り消していたそう)魔人に命令されていたので詳しいことは知らない。
◯窃盗団から助けてくれた魔人と今回戦った魔人は別者(恐らく使用人を助けた魔人がリボン様?)
助けてくれた魔人から、金髪で赤目の女が来たら捉えておけと命じられた。助けてくれた魔人が主かと思ったが、紹介されたのは別の魔人だったらしい。
書かれている情報はこれで全部だ。これが十二時間で得た情報とは・・。
どうせなら美味しいもの食べていたかった。
「・・それに」
それにティルディーがトバッシュ子息と交流を始めたように俺もフィルア当主と話してみたいと思った。別に家族の血が取っているとか家族として認識されたいとか、そういうわけじゃない。
ただ母のこと、働いていた父のこと。なんでもいいか聞いてみたかった。
俺の知らない両親の話が聞ける気がしたから、
(でも突然押しかけるのも変だしな。礼儀作法なんて知らないし。うーむ)
コンコン
「?・・こんな時間に誰だ?」
突然ドアがノックされた。深夜なのに訪ねてくる人などいるのだろうか。・・実際にいたが。え?お化けとかじゃないよな?
ここだけの話お化けとかは割と苦手である。割と・・いや、かなり苦手だ。
まさかな?と思いゆっくりとドアを開ける。
「えっ」
「こんばんは。良かった、まだ起きていたか」
「ななななな、なんで?」
ドアのあの前に立っていたのは、先程話したいなと思っていたフィルア当主である。まさかの本人だ。驚きすぎであいた口が塞がらない。
「いや、少しだけ話したいことがあってな」
話・・とはなんだろうか。俺の血縁系の話?いや流石に顔が似てるからってバレることはないと思う。多分だが。
「お前の母の名は何という?」
「!!」
血縁の話だった。・・ここは誤魔化すか?いやでも・・
ゴトッ
どうしようか悩んでいると、椅子の上から俺のバッグが落ちた。そのバッグの中から、青く輝く宝石が転げ落ちた。
(そうだ。あの宝石元々はフィルア家の・・!)
隠そうと思ったがもう遅く、当主の目は宝石へと行っていた。
「・・やはりお前は姉の・・」
「・・そう・・です」
もうどうしようもなかったので白状した。ここで足掻いても、決定的証拠がある時点でもう言い逃れは不可能だ。
親の駆け落ちを責められるのだろうか。俺の存在をどんなに言っても傷つかないが、親を悪く言ってほしくはない。
フィルア当主にとって悪い人間だったとしても俺の大好きな両親だから。
(ふー、大丈夫。大丈夫。俺は一人じゃないんだ)
よしっ責められる覚悟はできた!どんとこい!俺は勢いよく前を向きフィルア当主の顔を見た。
ーー怒っている方思ったがフィルア当主は穏やかな顔つきをしていた。
「えっと・・」
「いや。甥っ子が元気そうで良かったと思っただけだ。ソアンよ、私の姉は?、まだ元気が?」
「あ・・それは・・」
俺はなんと説明したらいいか分からず下を向いた。死んでしまったというのは簡単だが死亡理由まで聞かれると言葉に詰まる。
だって俺ですら最近知ったんだ。説明するのはまだ・・
「そうか」
そんな俺の表情を読み取ってか、フィルア当主はそう言って俺から視線を逸らした。
「あの・・宝石ですか?もしかして俺に会いに来たのは」
詳しくは俺も分からないが、あの宝石がかなり貴重だってことはわかる。返せと言われたら返すしかないのだが親の形見を渡したくはない。
「そうではない。私は甥っ子の顔を見に来たんだ。宝石はお前が持っておきなさい」
そう言ってフィルア当主は俺の頭を撫で、「おやすみ」と言い廊下を歩いて行ってしまった。ーー本当に俺の顔を見に来たなだけのようだ。
「なんか、貴族って、叔父ってわかんねぇ」
俺は頭を掻き、ベッドで横たわった。




