間話 1 姉は弟と仲良くなりたい
僕はゆっくりと目を開け、ベッドから上半身を起こした。
(ふかふかで柔らかい・・)
僕は意識がまだぼんやりとしながらも、身支度を済ませる。傷も徐々にだけど癒えてきて、もう普段通りの生活ができる。
まだソアンはこの家に滞在すると言っていた。なら、僕が今すべきことは・・!
(弟との交流だ!)
僕は本を一冊抱え、ルチャードが療養している部屋へとやってきた。
フィルア家に戻ってからは僕も自分の怪我を治すのに専念していたのでルチャードには会えていなかった。でもせっかく自分の怪我が治ってきた今ならルチャードに会うことができる。
ルチャードとも和解したことだし、もう少し仲良くなれたらなと思っていた。
何もないのもあれなので、僕のお気に入りの一冊を持っていくことにした。タイトルは『星の神様』だ。
子供なら誰でも読むとティルディー(星になった方)は言っていて、僕も地上に降りてきたばかりの頃に読んでもらった。
それからはその本が気に入り、初めての地上での誕生日の日に、誕生日プレゼントとしてディルディーから貰った。
ルチャードも読んだことはあるだろうが、どうせなら僕の好きな本を一緒に読めたらと思ったのだ。
(それに最近はあの声も聞こえないしね)
「ルチャード!来たよ、元気?」
「!姉様!はいっ元気です。姉様は元気ですか?」
「僕?元気だよ、もう動けるようになったんだ!」
そう言って僕はその場で飛び跳ねたり、筋肉ポーズをした。そうするとルチャードは少しだが笑ってくれた。
ずっと面と向かってルチャードと話すまでルチャードは笑ってなかったと思う。だけど和解してからは少しだが笑うようになった。
不器用そうに笑うルチャードは年相応に見えて僕は嬉しい。
こう言ってはなんだがティルディー(星になった方)とルチャードはやっぱり姉弟なんだと思う。
ティルディー(星になった方)だって大人っぽく振る舞ってて本当の自分は隠してた気がする。
たまに年相応の振る舞いをする時は、いつもティルディー(星になった方)の心が弱っている時だった。
僕は心の仮面を被ったことがないからティルディー(星になった方)やルチャードのような生き方は分からないけど僕は、そんな人達の心の拠り所になれたらなって思う。
「そうだルチャード。今日ね僕本を持ってきたんだ。本って言っても絵本だけど」
僕は手に持っていた絵本をベッドで上半身を起こしているルチャードには渡した。子供の頃に読んだことあったら懐かしむかな?と思っていたが、反応は予想外のものだった。
「絵本・・?ってなんですか」
「え?」
「あ、すみません。姉様が持ってきてくれた本なのに。ええと、その、僕絵本という存在がよく分からず。いつも勉強本ばかり読んでいたので・・」
そう言いながらルチャードは顔を赤らめた。ーーというか今時絵本を知らない人間が存在するのだろうか。と思ってしまった。
だって貧困層でも通えるように各国中等部までなら学費は無料だし、東なら高等部まで無料だ。
初等部には絵本は置いてあるとティルディーが話していて・・。
(・・そういえばルチャードは勉強ばっかしてたんだっけ)
姉に追いつくため、姉を超えるため。両親に認められるため。いろいろな努力をしていたんだ。それにあの家では子供を道具としか見ない。
両親と一緒に絵本を見ようなんてありえないのだ。
僕も星で普通の家族というものを知ったのはティルディーの体になってからだ。
だかららチャードが絵本を知らなくても、ありえなくはない。
「じゃあルチャード一緒に読もう。読み聞かせてあげるよ」
「!いいんですか!?ありがとうございます!」
ルチャードが嬉しそうにしてくれたので、僕はルチャードのベットに腰掛けて絵本を広げた。
「じゃあ読むよ?
星は人を見守ってくれている神様です。いつも夜空に浮かんでいて悪いものから、世界中に住まう人々を守ってくれます。
星は『魔法』という不思議な力を使います。『魔法』は特別な力で人間が扱うことはできません。ですが星は『魔法』で人の願いを一つだけ叶えてくれます。お姫様になりたい、強い力が欲しい。どんな願い事でも星は叶えてくれるのです。
でもその場所がどこにあるのかは誰にも分かりません。もしかしたら星は恥ずかしがりやなのかもしれません。なら私たちは私たちにできることをしましょう。
星を称えましょう。星を敬いましょう。星を愛しましょう。だって星は神様なのだから
星は私たちを見守ってくれている だから私たちもそれに応えましょう
ーーーおしまい」
僕はパタンと本を閉じた。この本は少し星の本質を知ろうとしていて僕は好きだ。他の星の童話は星が絶対神という感じで、あまり好きではない。
ルチャードはどうだったかな?と思い僕はルチャードの顔をのぞいた。ルチャードはあれから一言も話さない。本を読んでいる時も凄く真剣な表情だった。
僕的には「わぁ!」「すごい!」とかの簡単な感想でいいのだが・・。真面目なルチャードには絵本はいろんな意味で難しかったかな?
「え」
「え?」
「絵本とは素晴らしいものなのですね!文章もあり、分かりやすいように絵もあるなど・・」
ルチャードはそういうとぶつぶつと早口で何か言い始めた。うーん。そこまで真剣に読まなくでも・・。
(まぁルチャードの面白い一面を知れたからいっかな)
「ねぇルチャード」
「ですから〜・・!はい!なんでしょうか」
「ルチャードって怪我が治ったらトバッシュ家に帰るんだよね?」
「はい、ですが心配なさらないでください。俺は昔の俺とは違います。今はティルディー姉様という味方がいるんです。だから大丈夫です。今の俺は無敵です!」
そう言ってルチャードはさっき僕がした筋肉ポーズをした。何だかそれがおかしくって笑ってしまった。
・・でもそうかルチャードはもう大丈夫。僕が君の心の拠り所になれて良かったよ。
偽物でもちゃんと君を守るよ。




