誰かの願い part12
森からの出口も見つかり、無事にフィルア家へ戻った俺達は急いでティルディーとトバッシュ子息を医者に診てもらった。二人とも重症だったらしく、これから回復専門の魔術師が来て、処置をしてくれるそうだ。
『重症の怪我人以外は病室に近寄らないように』と言われてしまったため、俺たちはフィルア嬢を専属侍女に引き渡した後、客室でくつろいでいた。否くつろいでいたわけではない、救急箱を貸してもらい、傷の手当てをしていた。
キラも見た目のわりには重傷で医者に診せるか?と聞いたが、あの二人が優先ということで断っていた。
「・・・・」
治療が終わっても俺達は部屋へ戻らない。まだティルディーの容態が分からないからだ。俺たちは沈黙のまま客室の扉が開くのを待っていた。使用人にティルディーの無事が分かったら教えてくれと伝えておいたので何か分かったら連絡が来るはずだ。
「ティルディー様大丈夫でしょうか・・」
「・・・・・」
スフィーニアがポツリと呟いた言葉に俺は何も言えなかった。もうティルディーを医者に診せてから二時間ほどが経過していて、本当に大丈夫かなんて俺にも分からなかったから。無事でいてくれ・・そう願った時だった。
「はぁっはぁ・・・」
部屋の扉が突然開いて、侍女が息を切らしていた。もしかしたらティルディーに何かあったのかもしれない。俺はそう思い、侍女の言葉を待った。
「ティルディー・・様が目を覚まされました。・・・無事・・です」
「「「!」」」
侍女が嬉しそうな顔でそう言った。だが俺たちは侍女の言葉が言い終わるよりも早くに客室を出ていた。だってティルディーが目を覚ましたんだ。大丈夫だって心の中で思っていても不安なものは不安だ。
病室へ入るとそこにはにっこりと笑うティルディーがいた。
「あ!みんな・・・」
「ティルディー様!心配したんですよ!」
真っ先にスフィーニアがティルディーに抱き着いた。顔をティルディーのお腹らへんに埋め泣いている。まぁそりゃそうだよな。
「ごめんね、スフィーニア。でももう大丈夫!僕は元気だよ!」
「うーっ・・・ぐす・・」
数分間抱き着いていて満足したのかスフィーニアはティルディーから離れた。離れたといっても三十cmほどだが。
「元気そうでよかったよティルディー」
「本当です。寝不足も少しは解消したようで良かったです」
そう言ってキラは笑った。キラの言う通りティルディーの目元にあった隈は無くなっている。なんというか健康そうだ。
「そうね・・・でも僕もう少し寝たいかも・・」
ティルディーは大きな欠伸をして目をこすっていた。目元もトロンとしていて、意識があるのかも微妙だ。
「そうか。じゃあまた明日だな・・」
「そうですね。ティルディー様。お大事に」
俺たちはそう言い残し病室を出た。さすがに長居しすぎたらティルディーだって長く休めないだろうしな。それに俺も体が痛い。・・このまま部屋へ直行して寝るか。俺は欠伸をしながら廊下を歩いた。
ーーーーーー
そして後日・・。フィルア嬢が話をしたいということで、フィルア家の一室に俺たち四人が集められた。
「冒険者様方・・この度は助けていただき本当にありがとうございました」
そう言ってフィルア嬢は深々とお辞儀をしてきた。前までは貴族からの礼をされるなんてと思っていたが、何回もされると人は慣れるものである。俺も少しは慣れた。
「いえいえ、こちらこそ依頼を引き受けたのに、フィルア嬢を危険な目に合わせてしまい申し訳ありませんでした。・・・怪我はありませんでしたか・・?」
ぱっと見フィルア嬢が怪我をしていなかったので、専属侍女にそのまま渡してしまったのだ。もし怪我をしていたら「傷物」と社交界で言われてしまうかもしれない・・そうしたら俺には責任を取ることができるのだろうか。
「はい!私は元気です!それにまたトバッシュ嬢とお会いすることができるなんて・・私うれしいですわ!」
「覚えていてくれたんですね・・あれ?でも前会ったときと一人称が違う?」
「あ。それは公私を分けているんです。普段の私はこんな感じです。それに、トバッシュ嬢を忘れるはずがありませんわ。・・あ。それよりも事情聴取というか、情報共有をしようと思って皆さまを呼んだんでした」
フィルア嬢は恥ずかしそうに顔を赤らめ、姿勢を正した。というかめっちゃお喋りだなこの令嬢。
「私の従者、ルイヴィス・・ええと皆様を案内した赤髪の従者の名前なんですが、そのルイヴィスから聞いた情報も含んでお話しますわね。おほん・・・これは遡ること三週間前・・
この頃から夜七時頃になるとルイヴィスがこっそり外出するのを目撃するようになりまして・・私気になって追いかけたんです。その時にたまたま話を聞いてしまって・・」
「話?」
「えぇ。背丈の高い男性の方とルイヴィスは話していました。
『助けてやった代わりに、私の手足となれ』
『手足?』
『あぁ。近いうちに金髪で赤目の女がここへやってくる。そいつを生け捕りにして捕らえろ△〇□は〇□△〇#♭』
あまり聞こえないわ・・もう少しだけ近くに・・
ゴトン
「「!?」」
うっかり右手に持っていたランプを落としてしまったんです。そこから記憶が曖昧なんですが、ルイヴィスが言うには私はそこで操り人形となり・・魔物に供物を持っていくようになったみたいです。供物を持って行った理由としては魔物の食事のためらしいですが・・・」
「魔物って茶髪の?」
「いえ。水色の髪色でしたよ?すごく綺麗だたので覚えています。名前は・・」
水色の髪色で魔物・・それって・・。俺とティルディーは顔を見合わせフィルア嬢を見た。
「もしかして・・リボン様?」
「そうです!よくわかりましたね。もしかしてトバッシュ嬢はエスパーですか」
リボン様・・やっぱり関わっていたのか。ーー調べる手間が減ったのは良かったが・・。待てそもそもリボン様の目的って本当にティルディーなんだよな?でもティルディーが白薔薇の祭りに行く前に自分から魔力は譲渡できない・・みたいなことを言っていた気がする。
普通魔物は力・生存のために星を喰う。なのに力も手に入らないティルディーを襲って何があるんだ?・・・もしかしたらだがティルディーを食べることがリボン様の目的なのではないのかもしれない。こう、もっと違う理由なのかもしれない・・。
(んーでも、もう少し詳しく話が聞きたいな。あとでルイヴィスに話を聞くか。それと情報をまとめた表でも作ろう・・)
「エスパーじゃないけど・・・情報ありがとう。フィルア嬢」
「いえいえ、どういたしましてトバッシュ嬢。またお困りならお助けしますわ。だって私は第一王子グスタンの婚約者ですもの!権力はありますわ!」
そう華のようにフィルア嬢は微笑んだ。ーー今更だが第一王子の名前ってグスタンって言うんだな。本当の本当に今更だが・・・。
俺はそんなことを考えつつ、目の前の机に置いてあるフィナンシェを一つ取った。
(ん・・美味い・・)
気付いたら3000PV超えてました!読者の方々ありがとうございます!
これにて『誰かの願い編』終了です。いつもより少し長めの話だったのですが、お付き合いありがとうございました。数日後に各キャラの八章の後日譚のようなものを投稿しようと思っています。




