氷竜の渓谷 part4
「強さ・・強さ・・!」
俺はぶつぶつと独り言のように唱えて一つの結論に思い当たった。何でこんなこと分からなかったのだろう。生前父が言っていたではないか
『真の強さにたどり着くには力の強さだけでは不可能だ。心と力この二つの強さが相まって真の強さを見つけることができるんだよ』
ーーと。
「心の強さとかじゃないか?」
「・・・・?でもそれってどうやって分からせるの?見えないじゃん」
当たり前の疑問をティルディーは言った。確かに心の強さは見えない。でもあきらめない心前向きな心、向上心。俺はそういうのが心の強さだと思う。父も言っていたように・・
「あ!そっか。・・・今まで僕達「無理」とか「できない」とかずっと言ったり思ったりしていませんでしたか?」
キラがそう言うと俺たちは少しだけ考え込んだ後頷いた。そうだ迷路のように入り組んだ道でゴールがあると思い込んで迷って。勝手に失望してあきらめようとした。無理だと思った。
「じゃあここから出られる!きっと氷竜にも会える!」
「そうだ!最初から迷路なんて存在していなかったんだ。きっと俺たちの心の中に答えの鍵はあった。だから・・・!」
そう言い俺は後ろを振り返る。きっとゴールなんてない。どこからでも正解の道に行くことができる。俺が振り向いた先にいたのは、高さが建物の七階に匹敵するほどの大きさの白い氷竜だった。
「やぁ。よくここまでたどり着いたね・・」
ゆっくりと氷竜は話し始めた。急に目の前に現れたということは俺たちは幻惑の何か魔術かかかっていたのだろうか。竜に関しては本当に分からない。
「・・・・大きい」
あまりの大きさや出会えたことの感動などが押し寄せ、やっと出てきた言葉が「大きいだった」だが少し冷静になった俺はここから出るためには氷竜と遊ばなければいけないという話を思い出した。
「あ、あの氷竜様!僕達と遊びたいことって」
ティルディーが思い出したように慌てて話し始めた。緊張しているのかいつもの元気がない。言葉も片言だし・・。
「・・・そうだな・・。遊びはもうする歳でも無くなったからな・・。君たちの話でも聞かせてくれないか?」
氷竜はそう言うとそっと俺たちの目線に合わせるように人型になった。銀髪で長い髪、紫色の瞳・・。・・・余計かもしれないがめっちゃイケメンだ。・・まぁそれはさておき、俺たちは今までの話や冒険譚などを氷竜に話すことにした。
「それで謎の症状があって・・」
「あの時の魔物は大きくて!」
「姫様が王子でびっくりしまして・・・」
俺たちがどんどん話すのを氷竜は静かに聞いていた。あまりにも反応がないのでつまらないかと思ったがただ反応が遅いだけだった。
竜は長い時を生きる。その長い時をほぼ一人で生きるのだと絵本で読んだことがある。きっと人と話すのも久しぶりなのだろう。
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そしてかなりの時間がたったころ氷竜はもう時間だとでも言うように瞼を開けた。
「君たちの話を聞くと星の丘へ行くのだろう?それではもうじきここをでなくては間に合わなくなる。・・・・・最後に質問はあるか?」
氷竜は幼子を見るような瞳で俺たちに聞いた。
「じゃあさ一つだけ・・・氷竜様はここで独りぼっちで寂しくないの?幸せなの?」
ティルディーが聞いた。・・俺も少しは気になっていた。他人の幸せはその人本人が決めるものだが少しだけ気になってしまう。
「・・・寂しくはないな・・。人里へ行けば人から崇められ居心地は悪い・・・たまに来る冒険者を相手にする方が気楽で楽しい・・。ここが私の居場所だと思えるんだ。それが幸福さ・・」
・・・氷竜は貴重だ。近くの村や街へ行けば神扱いだ・・・・。同じ気持ちにはなれないがなんとなく気持ちはわかる。俺も神扱いまではされたことはないが上級戦士になって頼られることが多くなった・・。みんなに頼られた。でもそれが楽しい幸せという気持ちにはなれなかった。
依頼で魔物を倒したり人助けしてそのあとの「ありがとう」っていう小さな感謝が嬉しい・・この笑顔のために頑張ったんだって思える。人に囲まれるのも悪くはないけど自分ではなく架空の作り上げられた人格を見られてるようで・・自分を見てくれないものはあまり好きではない。
氷竜もそんな感じなんだと思う。大きなものより小さな積み重ねの方が嬉しい・・・幸せになれる。。
「・・居場所・・・そっか!」
ティルディーは何か考えた後ニコッと笑った。居場所・・・・。俺も昔は大勢の輪に囲まれていた。それも楽しかったし毎日が充実していた。でも少しだけ息苦しかった。
あのことをみんなに言ったらみんなだんだんといなくなったけど俺もそっちの方が息がしやすかった。
今もそうだ。大勢に囲まれているわけじゃないでも・・・今の方が息がしやすい・・。居場所って思える。
「じゃあな強き冒険者たちよ・・」
そう氷竜は言った後俺たちを背中に乗せ地上まで送って行ってくれた。
さよならも言わずに消えてしまった・・。俺達人間にとって別れの挨拶はするものだが竜は違うのかもしれない。それにまた会えるかもしれないしな・・
さよならではなく『また会おう』という言葉を残しその場を去った。




