表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/13

湯けむり鉄道殺人事件(後編)



「獣人達は関係ありません。全て私がやったことです」



 ジェームズ元伯爵が現れた。

 彼の後ろに、氷と霜を纏うエルフの女性が移動する。

 アイラは、ある程度、彼が現れるのを予想はしていた。

 これだけ広大な森で、獣人が住んでいる場所だ。

 探せばエルフの村や、大昔から続く神殿もあるだろう。

 そんな場所に、ジェームズが関わっていないわけがないのだ。


「その男は、密猟者です。死んで当然なのです! 希少な動物や鉱物、果てはエルフや獣人まで捕まえて、裏社会で売り大金を稼いでいました。私達はそれが許せなかった」

「…………」

「捕まえても大金を出して保釈されて、何度も名前を変え姿を変えて、密猟を繰り返していました」


 アイラは何も言えなかった。

 そういうことをする人間が、後を絶たないことをアイラは知っている。

 警戒しつづけて、対応していくしかない。

 身内をさらわれて売られる獣人達にすれば、たまったものではない。

 耐えきれなくなったのだろう。



 今回の事件は、一人では無理だ。

 おそらく宿の人間全員が関わっている。

 しかし、ジェームズは全部自分一人でやったことにしたいらしい。

 同情の余地はある。

 それでも、ジェームズ達のしたことは犯罪なのだ。

 アイラはどうするべきか迷った。

 ジェームズは、話を続ける。


「……あなたのことを調べました。以前お会いした時にゴーレム魔法を自在に操っていましたね。あれは古代魔法の一つで、とても難解なものだ。アレンジまで加えて実戦に使えるものはそういない。磨塔で次期塔主とうたわれた若き天才魔法使い、アイラ・カーネーション」

「プライバシーの侵害ですよ」

「姉夫婦が亡くなって、惜しまれながら魔塔を去った。貴女の専門は古代魔法だった」

「……それが何か」

「アイラ・カーネーション! こっちへ来なさい。貴女はこっち側の人間だ」

「私のことを決めていいのは、私とリーンだけです。ジェームズさんではありません」




 アイラは、昔のことを思い出す。

 両親はなく、姉が冒険者をしながら育ててくれたのだ。

 自分に魔法の才能があると分かり、姉は魔法の勉強をする魔塔へ入ることをすすめてくれた。

 アイラは、魔法が面白くて熱心に学んでいた。


「アイラ。おまえは天才だ。学費は心配しないで、このまま勉強を続ければいい」

「ありがとう。姉さん。義兄さん」


 姉は、同じ冒険者の義兄と結婚して、幼いリーンが生まれた。

 姉夫婦は、リーンをとても可愛いがった。

 思えば、あの頃が一番幸せだった。


「でかい仕事があるんだ。これをこなせば、しばらくは皆で落ち着いて暮らせる」

「大丈夫なの? 姉さん。魔獣のスタンピードの討伐に加わるなんて」

「大丈夫よ。冒険者の仲間もいるもの」


 姉夫婦は帰ってこなかった。幼いアイラを残して。

 仲間に裏切られたのだ。

 泣き崩れるアイラを、リーンが一生懸命慰める。

 両親の死を理解できないほど幼いのに、泣くアイラを抱きしめる。

 アイラには、リーンのぬくもりだけが全てになった。

 幼いアイラと二人きりになったアイラは、金のかかる魔塔をやめた。

 すぐに稼げる冒険者になったのだ。



 ジェームズは、大袈裟にため息をついた。

 彼は、アイラをそんなに簡単に説得できるとは考えてはいない。


「残念です。ですが、あなたの実力を見せてもらいましょう。錆びついた刃物は、役にたちませんからね」

「……!」


 そう言い切るやいなや、氷の女王が吹雪を吹きつけてきた。

 アイラは、防御魔法を展開して吹雪に体温を奪われるのを防ぐ。


(足場の悪い雪山で、2人相手は手厳しいな)


「……来い」


 アイラが言うと同時に、空中に複数の人影が現れた。

 彼らには真っ黒な翼が背中に生えていた。

 黒服で黒髪黒目の古代の精霊達である。

 アイラが召喚したのだ。


「無詠唱ですか。やりますね」

「……殲滅しろ」


 黒い精霊達は、獲物を空中から取り出して、ジェームズ達に襲いかかった。

 アイラは、ジェームズ達に背を向ける。

 早くリーン達の所へ行き、安全を確保しなければいけない。

 リーンは異世界転生者だ。

 異世界嫌いのジェームズが相手では危険だ。


(あの子は人を信じすぎる。ジェームズを信用しかねない。一緒に戦い美味しいご飯を作る人というだけでだ)




「まだまだですよ! 召喚なら、私も得意です。来い! 我が祈りに答えよ! 大蛇ヨルムンガンド!」

「なっ……」


 ジェームズが、声を張り上げる。

 バキバキと樹々が悲鳴をあげる音がした。

 巨大な何かか、森の中をゆっくりとこちらへやって来ているのが分かった。


「あんなものを召喚するなんて……!」

「お願いしただけです。厳密には召喚とは違いますが。しばらく私達と遊びましょう。アイラ・カーネーション」


 視界全てが真っ白になるほどの雪の世界で、壮絶な戦いが始まった。





 

 その頃、ダメーダヤ達は家の人達を前に胸を張り、大声を張り上げていた。

 英雄が立ち上がる時がきたと、彼らは感じている。


「皆のもの! 安心するがいい! どんな魔物が来ようとこのダメーダヤ様が倒してくれる!」

「ダメーダヤ様! 私もお手伝いします!」

「どこまでもついて行きます!」

「おまえ達……! ありがとう!」


 ダメーダヤ達は、お互いにひしっと抱きあって涙を流した。


「危ないよ。こんな時は外に出てはいけないよ」

「止めてくれるな。男には行かねばならん時があるのだ」



 少し時間をさかのぼる。

 ダメーダヤは、台の上に両足を投げ出し、腕を組んで踏んぞり返っていた。

 出来る男に相応しい姿だと、彼は思った。

 メリーは擦り寄って座り、ヨイショトリオはダメーダヤをマッサージしていた。

 そのうちにダメーダヤはバランスを崩して、台から転げ落ちてしまったのだ。


「あいたた……」

「ご無事ですか!? ダメーダヤ様!」

「悪いことをすると、雪の女王様がお怒りになるよ」

「む。なんだ? その雪の女王とやらは?」


 おばあさんは、行儀の悪い子どもを脅かすように話し出した。


「この地を支配する神様だよ。とても美しくて冷酷なんだよ。氷の神殿に住んでいるといわれている。悪いことをすると彼女が怒って、暖かい命の炎を氷漬けにされちまうのさ。特にこんな冷え込む夜は、近くまで女王様がいらしてるんだよ」


 家の隙間から、氷のように冷たい風が吹き込んだ。

 あまりの寒さに、家の中の者達は震え上がった。

 おじいさんが、囲炉裏の火に薪を足す。


「ほほう! だが俺様の方が偉大だ」

「ふふふ。雪の中で死にかけていたあんた達が敵う相手じゃないよ」


 おばあさんは優しく諫めたが、ダメーダヤ達の心には熱い炎が燃え盛ってしまった。

 村人を殺してしまう悪い魔物は退治しなければいけない! 

 彼らはそう思った。

 家の外へ出て、近くに来ているという魔物を退治しなければいけない。

 それが、自分達の使命だと感じたのだ。

 


 おじいさんは、心配して彼らを止めた。

 こんなに冷え込む時は火を絶やさず囲炉裏の側でじっと過ごすべきなのである。

 村の伝承で、命を失いそうなほどの冷たさを『雪の女王の怒り』と呼んでいた。

 家を颯爽と出ていくダメーダヤ達を、子ども達は敬礼をして見送る。

 子ども達は、よく分からないけれど英雄の勇敢な行為なんだろう、と信じた。



 ダメーダヤ達が村の外まで出ると、全身白い毛で覆われた大きな獣人達が歩いている。

 ダメーダヤ達は、彼らが倒すべき敵と思い込み、立ち向かっていった。

 獣人達は、驚いた。

 こんな寒さの中に人間がいたのだ。放っておけば凍死してしまう。

 彼らは、ダメーダヤ達を持っていた布で包み込んだ。

 それでも、ダメーダヤ達は何かを叫びながら暴れる。

 彼らは、困ってしまった。

 そこで、包んだ布ごとダメーダヤ達を巨大な雪玉にして運ぶことにしたのだった。





 リーン達はフェンリルに乗り、ダメーダヤ達がいる場所まで駆けつける。

 ダメーダヤ達は逃げ回っていたが、白毛獣人に捕まってしまっていた。

 それぞれが巨大な雪玉の中に詰め込まれて、転がされていたのだ。

 リーンは、それを見て助けないといけないと思った。


「助けなきゃ! でも獣人さん達を傷つけたくない。どうしよう」

「僕できますよ! 賢い犬ですから!」

「だから犬じゃないニャ……」


 フェンリルは、遠くまで響く遠吠えを一声吠えると、白毛獣人の前へ飛び出す。

 低く唸り声を上げると、白毛獣人は怯えて逃げていってしまった。


「さすが! ありがとう!」

「僕は賢いですから」

「もういいニャ……」


 フェンリルは、頭を撫でられて嬉しそうにしている。

 転がされていた巨大な雪玉は、コントロールを失って、坂道をゆっくりと転がり始めた。

 そして、どんどんと信じられない勢いで転がっていった。


「嘘でしょ!? フェンリル、ごめん! 追いかけて!」

「はい!」


 リーン達は、巨大雪玉を追いかけた。

 雪玉は、どこまでもすごい勢いで転がり続け、崖へと向かっていく。


「待ってー!」


 リーンの叫びも虚しく、ダメーダヤ達は崖から落ちた。

 慌てて崖の上から崖下を覗きこむと、崖下は川になっており巨大雪玉はプカプカと浮かんで流されていく。

 すぐそこには、滝があった。

 ダメーダヤ達は滝から落ち、海へと流されていく。

 リーンは、呆然としてしまった。

 海に出たダメーダヤ達の入っている雪玉は、すぐに外国の船に拾われた。

 そして、遠くへ行ってしまったのだった。


「……アイラおばさんに相談しなきゃ……」


 リーン達は、急いでアイラの元へ戻るのだった。







「アイラ•カーネーション!」


 凍えるような吹雪の中、ジェームズが彼女の名を呼ぶ。

 不躾な奴だとアイラは感じた。

 悪いクセだとは思うのだが、リーン以外の人間に対しては警戒心が消えないのだ。

 

「貴女はこっち側の人でしょう! 誰よりも古代魔法を研究して身につけている。私達のことも理解できるはずです!」

「理解はできますが、今の私はリーンの保護者です。立ち位置が変われば、見える風景も変わりますよ。私達はあなた達とは違います」

「自分達は違うと言い切るな!! 」

「……」

「アイラ・カーネーション。考えることを放棄してはいけない。私達は同じ世界に生きているんだ」


 アイラは答えに詰まった。

 ジェームズは腹が立つほど弁舌がうまい、と思った。

 



 風のように走りぬけるフェンリルに乗って、リーンがアイラ達が見える位置まで戻ってきた。

 リーンはギョッとした。

 アイラ1人の周りに、ジェームズと霜と氷に包まれたエルフと巨大な蛇がいて、戦っていたのだ。

 リーンはアイラを助けようとして、弓を構えて矢先に渾身の魔力をこめた。

 そして、威嚇するために矢を放ったのだ。


「アイラおばさんをいじめるなー!」




 ジェームズ達は、驚愕した。

 太陽のように強大な魔力のかたまりが、すごい勢いで近づいてくるのが分かったのだ。


「なんだ!? この巨大な魔力のかたまりは!?」

「来ましたね……。異世界転生者リーン」


 リーンのはなった矢が、ジェームズ達の足元に突き刺さり、大爆発が起こる。

 ジェームズ達は爆発に巻き込まれた。

 雪面に裂け目ができて、ボールのような雪のかたまりが転がり落ちてきた。

 そして、大量の雪が流れ落ちてきたのだ。雪崩である。

 リーンは青ざめた。

 この雪崩は、リーンの起こした爆発が原因のような気がしたのだ。

 ……間違いなく、リーンの矢が原因である。

 リーンは慌てて、フェンリルに乗ったままアイラの元へ駆け寄った。


「どうしよう。アイラおばさん……」

「逃げるのよ!!」

 

 アイラは、フェンリルに飛び乗った。


「走って!!」

「ごめんなさーい!!」

「急ぐニャー!!」

「僕はできる犬ですから、大丈夫ー!!」


 フェンリルは、アイラ達を乗せたまま高く空中に飛び上がる。

 そして雪崩の流れから離れた所に着地した。


 遠くに、ジェームズ達を頭にのせた大蛇が離れて行くのが見えた。


「やっぱりしぶとい……」

「ジェームズおじさん、元気そうだね」

「リーンは、少し力のコントロールを覚えなきゃね」

「はーい……」


 リーンはがっかりした。

 アイラをカッコよく助けようとしたのに失敗してしまったのだ。

 

「まあ、失敗を繰り返して上手くなっていくものだよ」

「うん」


 アイラに頭を撫でられて、リーンは照れ臭そうに笑う。


「それで、ダメーダヤ元王子達はどうだった?」

「ええとね。白い毛の獣人達に雪玉にされてて、獣人達を追い払ったら雪玉が川に落ちて、海まで流れて外国船に拾われちゃったの……。伝わるかな?」

「大体伝わったけれど、信じられないくらい奇想天外な人達だわ。彼らを拾った船の特徴は覚えてる?」

「うん」

「それなら、どこの国の船か分かると思うよ。今から、彼らがいたという村に話を聞きに行こう。それで報告書を書いて提出すれば、今回の依頼は完了だ」



 

 アイラ達は村人が怯えないように、村から少し離れた所でフェンリルから降りた。

 村人達にダメーダヤ達の事を伝えると、皆心配していた。

 この村で、彼らは慕われていたのだ。

 アイラ達はダメーダヤ達がこの村でどう過ごしていたかを聞き取り、フェンリルの元へ戻った。


「今回は『問題なし』で報告できるよ。彼らの発言に問題はあったけれど、村にはもう居ないからね。あの村の人達は素朴で人助けをしただけだと思う」

「よかったね」

「もう大人なのに、自分達の発言で、村人ごと反乱分子として討伐されるかもって思えなかったのニャ」

「怖いね……」


 アイラ達がフェンリルに乗ると、鉄道の駅近くまでアイラ達を連れてきてくれた。

 フェンリルは、名残り惜しそうにリーンに甘えて、鼻先を彼女の胸に埋めていた。

 リーンは、フェンリルの頭を撫でる。


「また近くまで来たら、一緒に遊ぼうね」

「今回はたくさん助けられたよ。ありがとう」

「くうーん」

「そこはゼンザイの居場所だからニャ。早く離れて」



 列車が発車した。

 フェンリルは、リーン達が乗った列車をしばらく追いかけてきた。

 リーン達は、窓から手を振り続ける。

 他の乗客達は、青ざめ震えていた。

 恐怖で生きた心地がしなかった。

 フェンリルの存在が国の中枢に報告されて、この地域の警備の数が増やされた。

 その結果、この地方の密猟が減ったのである。





 アイラ達は、ダメーダヤ元王子の事だけを王宮へ報告した。

 殺人事件の犯人は、正体不明の男で吹雪の中を逃走したことになった。

 アイラ達の仕事は、ダメーダヤ元王子達の再調査だ。

 依頼は果たされた。

 ダメーダヤ達の反乱疑惑は、なくなったのだった。

 感激した王妃から、特別報酬として高級家具が贈られたのだった。

 アイラ達は、丁重にそれを受け取った。






★★★★★







 リーン達は、駄目人間になっている。

 王妃様からいただいた『人を駄目にするほど快適なベッド』に3人で寝ていた。

 買い込んだ食料を食べながら、ゴロゴロしていた。


「あー……。しばらく動きたくない……」

「リーンも……。村で、近衛兵に連行された人って噂になってて、外出したくなくなった……」

「話を聞きたくて、皆が家の周りをウロウロしてるニャ。王家に関わるから、話せないニャ……」


 アイラは、北国で買った寒干し大根と干し柿をつまんでいる。

 甘みが凝縮されていて、そのまま食べてもとても美味しい。

 リーンは、温泉名物のおせんべいを食べている。

 素朴で飽きのこない懐かしい味わいだ。いつまでも食べられる。

 何十回も噛んで味わい、口の中から消えると、もう一枚……と手が伸びて止まらない。

 ゼンザイは2人のあいだにはさまって、気持ちよさそうにヘソ天をして寝ていた。

 幸せそうだ。


「ダメーダヤ元王子達を救助した外国船がどこの国か判明したら、また様子を見に行ってほしいそうだよ……」

「王妃様も心配の種が尽きないよね」

「彼らがお世話になっていた村では、子ども達に自分は英雄だって話してたニャ。魔王を倒したそうだけど、大怪獣と戦ったのはリーンちゃん達なのに。だけど家の仕事を手伝ったり、村人の怪我を癒してたそうなの。村の人達は、彼らを忘れないように、常緑樹を輪にして赤いリボンを巻いていたものを玄関に飾っていたニャ」

「そうなんだよね。ちゃんと調理も教わって味見できるようになったんだって」

「よかったね」

「本当ニャン! 死人が減るニャ!」


 ゼンザイは、ダメーダヤに大量の生焼けニンニク料理を食べさせられて、死にかけたことがあるのだ。

 心から、良かったと思ったのだった。





 アイラはリーンを見た。

 リーンは、塩無添加小魚をゼンザイとモグモグと食べている。

 幸せそうな姿に、アイラは微笑んだ。

 自分がもっと早く魔塔での勉強を諦めていれば、姉夫婦は無理をして死ななかったのかもしれない。

 そう思うとやりきれない。

 リーンは、今も両親と幸せに暮らせていたのかもと思ってしまう。

 アイラは、リーンがいつか自分の力で考えて調べ行動できるようになる日まで、見守ってやりたいと思う。

 リーンの夢は、自分と一緒にいろいろな所へ行って美味しいものを食べることだ。

 それなら、ずっと一緒にいよう。

 自分の夢は、リーンと共にあることなのだから。

 


 

 リーンは、腕の中で眠ったゼンザイを撫でながら、今回の事件をふりかえる。

 今回は、いろいろ考えさせられました。

 ダメーダヤさんは大嫌いでしたが、村ではいい人だったそうです。

 あんな人でも、彼のお母さんはずっと彼の身を案じていました。

 そんなこともあるのです。

 ジェームズお兄さんを見ると、前世のお父さんを思い出します。

 ぐっと何かを我慢して笑っている感じが、少し似ています。

 私は、お父さんにちゃんと「たくさんたくさんありがとう」と伝えられなかった。

 切なくて苦しい。

 ……これからは、ちゃんと伝えていこう。言い残したことがないように。


「アイラおばさん! 大好きだよ。いつもありがとうね。私は、アイラおばさんが元気に笑ってたら、すごく嬉しいんだ」

「それは、こっちのセリフ!」


 急に言われた言葉に、アイラは驚いた。

 リーンは、時々アイラがびっくりすることを言い出す。

 そして元気をもらうのだ。

 アイラは、リーンを優しく抱きしめて微笑んだのだった。









 



 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ