38.冒険者風
お待たせ致しました!
久々の更新です。
あっ、タイトル変更しました。
「おいおい、何だよこれ?」
食堂がざわつく中、ギルマスが上から下りて来た。さっき、あの家令が食堂に入って来た段階で、近くのスタッフが走って行ったから、報告を受けたんだろうなぁと思う。
「あー、危害を加えられそうだったので……正当防衛です!」
私がそう言うと、おばぁ達も含めて見ていた人達がうんうんと頷く。
「いや正当防衛って言ったって……イツキがやったら過剰防衛じゃねーのか? しかもこっちは冒険者でもなさそうだが?」
ギルマスの視線の先には、失神している家令。まぁ、冒険者が一般人に攻撃したら過剰になるかも知れないけれど、何より第一に……
「私じゃないけど?」
「は? じゃあ誰が……ん? え? あっ、んんーー」
私じゃないことを言い、視線でアポロ婆ちゃんを見る。ギルマスは、私の視線に釣られてアポロ婆ちゃんをじっと見て気づいたようで、名前だか元の役職をだかを叫ぼうとしてアポロ婆ちゃんに口を開かなくされ、大振りなジェスチャーで周りに伝えようとしていたが、アポロ婆ちゃんが指を鳴らすと気を失ってその場に座り込んだ。
「あらあら、ギルマスさんったら、どうしたのかしら?」
「あらやだ、寝ちゃったの? きっとお疲れなのね。……ちょっと、そこのあなた達ギルマスを椅子に座らせてあげてちょうだいな」
知っているのに心配するように頬に手を当てながら首を傾げるヘラ婆ちゃんと自分でギルマスの意識を刈っておきながら「寝ちゃったの?」なんて言い、野次馬の冒険者達に指示を出している。
うん。この二人を敵に回しちゃいけない。
その後、今日の分を販売し終わり冒険者達がギルドを出発し、人がまばらになった食堂。ちなみに、家令達はいつの間にか来ていた、辺境伯家の私兵団に運ばれて行った。
未だに意識を失っているギルマスを起こした。ギルマスは、辺りを見回し私達を見ると、夢でないことを悟ったらしく口を開こうとしたけど、まだ口は開かない。
「ったく、相変わらずね。とりあえず執務室で説明するから余計なことは言わないようにね」
アポロ婆ちゃんがギルマスに言うと、頷くギルマス。それを確認し再び指を鳴らすと、漸く口が開くようになり私達を執務室まで案内してくれた。
「で、一体何があったんです?」
執務室のソファーに座り、私はポーチからお茶セットを出してみんなにお茶を出している間もソワソワしていたギルマス。おばぁ達はそんなギルマスを、冷ややかな目で見ていたが、私の出したお茶を一口飲むと美味しいと私に微笑んでくれた。
ギルマスの質問には、私が簡潔に説明すると「あちゃー」と片手を目に当てて上を向いた。なんでも男爵家が勝手にやったこととは言え、やった場所がギルドということで後々辺境伯家に報告書を出さなければならないことが面倒だそうだ。それに関しては、ドンマイとしか言えない。
男爵家は辺境伯家から叱責を受けたらしい。今後、私の携帯食を購入する場合はルール通りに並んで買い占めないということを約束させたそうで、もし買いに来た場合は宜しく頼むと辺境伯様直々にお願いされた。もちろんルールに則って購入してもらえるなら、私としては拒むことはしない。
その後は、何の問題もなく冒険者活動をしつつ
週に三日携帯食屋をやっているいつもの生活に戻った。ステラちゃんも王宮の仕事に戻り、たまに、おばぁ達がお手伝いに来てくれるけど基本一人だ。
あれから男爵家からの嫌がらせ等もない。時々、見慣れない顔で冒険者風の格好をした人が何人か買いにくるけど、知らぬふりして販売している。
「お疲れ様〜。今日も、冒険者風の人間来てたねー」
「お疲れ、ブランカ。あー、来てた来てた」
「でもさ、何で冒険者風を装っているんだろうね?」
「さぁ? ここが冒険者ギルドだから?」
携帯食屋は、冒険者ギルドの食堂に間借りして販売しているけど別に冒険者だけに販売しているわけじゃない。ギルドのスタッフもそうだし、最近ではミャンさんがたまに買いにくることもある。だから普段着で来ても普通に買えるのに、なぜか冒険者風の格好をして買いに来る人がいる。しかも一人じゃない。なぜ『冒険者風』かと言うと、そんな格好をしているのに身体が出来上がっていない。細マッチョならともかく、ただ単に細い人だったり逆に筋肉ではなく脂肪だけで太っている人だったりする。冒険者や冒険者ギルド関係で働いている人間から見れば、すぐに偽冒険者だとわかる。
それからしばらく経った頃、王都で新たに携帯食屋がオープンしたという噂が聞こえて来た。
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