49話 妹は心配です
「……はぁ」
シルフィーナの自室。
そのベッドにシルフィーナは、枕を抱えるようにして寝ていた。
とはいえ、本当に寝ているわけではない。
ただ横になっているだけ。
そんな気分。
「……はぁあああ」
再びのため息。
これで、今日は何度目だろうか?
数えるのも馬鹿らしくなるくらいのため息がこぼれていた。
「……アリーシャ姉さま……」
悩みの原因は姉だ。
いや。
それだと姉が悪いみたいではないか。
アリーシャは悪くない。
ただ、うまく割り切ることができない自分が悪いだけ。
「でも、割り切ることなんてできません……」
考えるのは、先日のこと。
アリーシャがいきなり怪我をして……
でも、詳細を知ることはできず、そのまま。
アリーシャは心配しなくていい、と笑顔で言っていたのだけど……
そんなことは無理だ。
大好きな姉がいきなり怪我をした。
気にしないなんてことはできない。
どうして?
なぜ?
本当に大丈夫?
あれこれと心配してしまう。
それでも、アリーシャはいつもの笑顔で。
そして、いつもの優しさでシルフィーナを包んでくれて、心配はいらないよ、と言う。
「……少しくらい心配させてください」
どうにもこうにも、あの姉はちょっと自分を軽視しているところがある。
自身のことは二の次。
それよりも周りのこと。
そのために自分が傷つくことをわりと気にしていない。
それはそれで、アリーシャらしいと言えるのだが……
しかし、周りの身になってほしい。
心配するなと言われても、心配してしまう。
もう少し自分を大事にしてほしい、と声を大きくして言いたい。
「でも……アリーシャ姉さまには、私の声は届かない……」
単に頑固というわけではないだろう。
周囲に耳を傾けることができない狭量というわけでもないだろう。
それは、アリーシャの心の強さを表しているのだろう。
それがなんなのか、わからないが……
なにかしら信じるものがある。
確固たる心の芯がある。
だからこそ、アリーシャは立ち止まらない。
たとえ傷つくことになったとしても、どこまでも突き進んでいく。
そして、迷わない。
実際は違うかもしれないが……
シルフィーナからは、そんな完璧な姉に見えていた。
「とはいえ、心配してしまうわけで……でも、私の言葉では……うぅ、じれんま……」
ばたばたばたと足を揺らした。
枕をぎゅっとする。
それから、ため息。
「……でも、これじゃあダメ」
落ち込んでいても仕方ない。
嘆いていても、なにも改善されることはない。
力が足りない。
それは事実だ。
なら、どうするか?
泣き落とす?
懇願する?
いや、違う。
「……私も強くならないと!」
今はまだ弱い。
ぜんぜん力が足りていない。
心も鍛えられておらず、未熟だ。
しかし。
強くなることができたら?
そうすれば、アリーシャも自分の言葉を聞いてくれるかもしれない。
一目瞭然置かれるような、たくましい妹になれば、悩みや迷いを打ち明けてくれるかもしれない。
自身の弱さを嘆くだけでは意味がない。
弱さを認めた上で、乗り越えなくてはいけないのだ。
そして、いざという時に大事な人を助けられるくらい強くなる。
かつて、自分が助けてもらったように。
「よし!」
シルフィーナはベッドから下りて、ぐっと拳を握る。
強く天井を見上げた。
「悩みタイムは終了! もっと……もっともっともっと、がんばらないと!!!」
……こうして。
思わぬところでシルフィーナの……メインヒロインが成長して、レベルアップしていたのだけど。
そんなことはアリーシャは欠片も知らず、いつものようにシルフィーナを甘やかすのだった。




