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41話 ネコの気まぐれ

「ふう」


 アリーシャと別れたネコは、そのまま家に帰った。


 家族と軽い挨拶を交わしてから、自室へ。

 そのままベッドに仰向けに寝る。


「……」


 なにをするわけでもなく天井を見る。


 天井に向けて手を伸ばす。

 なにかを掴むように指を閉じて……

 それから、手の力を抜いた。


 そして、苦笑。


「困ったなあ」


 ベッドから降りて、机に向かう。

 引き出しを開けると、とある書類が。


 その書類に書かれている内容は……


『アリーシャ・クラウゼンを事故に見せかけて殺害しろ』


 そんな恐ろしい内容だった。


「ターゲットと仲良くなって、どうするんだろ、私」


 はあ、とため息がこぼれる。


 ネコ・ニルヴァレンは、普通の学生ではない。

 その正体は、暗殺者だ。


 ネコは孤児だ。

 物心ついた時には親はおらず、裏路地でゴミをあさり生きてきた。

 泥水をすすって生きてきた。


 その後、妙な貴族に拾われた。

 ネコの境遇を哀れに思ったわけではない。

 自分に都合の良い殺人人形を作るために拾われたのだ。


 以来、ネコは裏の技術を叩き込まれて……

 そして、初めて仕事を任されることになった。


 その仕事が、アリーシャの暗殺だ。


 初仕事だ。

 ここで失敗したら次はない。

 事実、任務をこなすことができなかった同じ境遇の子供は、以後、二度と姿を見ることはなかった。

 役立たずとして処分されたのだろう。


 ネコは、アリーシャを暗殺しなければならない。

 でなければ、殺されるのは自分だ。


 それなのに……


「……イヤ、だな」


 アリーシャの笑顔を思い返す。


 太陽のように明るく輝いていて。

 月明かりのように優しくて。

 そして、春の木漏れ日のように温かい。


 自然と惹かれていた。

 もっと知りたいと、見たいと思うようになっていた。


 でも、自分がしようとしているのは、その笑顔を消すこと。

 どうしても迷いが生じてしまう。


「……迷い? 私が?」


 自身の変化に、ネコは驚いた。


 人を殺す技術だけではなくて、心も鍛えられてきた。

 きちんと人を殺せるように。

 迷うことがないように。

 氷のように冷たい心に作り変えられてきた。


 それなのに、なぜ今更迷うのか?


「アリーシャの影響……なのかな」


 アリーシャの笑顔は太陽のようだ。

 温かくて、優しい。

 一緒にいるだけで、自分も優しい気持ちになれる。


 そんな彼女の近くにいると、ネコも笑顔になってしまう。


 アリーシャの温かい笑顔で心が溶かされて……

 殺人人形であることを忘れ、人間であることを思い出してしまう。


「ダメだ」


 ネコは迷いを振り切るように、頭を振る。


 迷うことは許されない。

 確実に仕事をこなさなければいけない。


 アリーシャを殺すことができなければ、逆に自分が殺されてしまう。

 役立たずの人形は捨てられてしまう。


 そんなことにはなりたくない。

 死にたくない。

 だから、アリーシャを殺すしかない。


「でも……」


 殺したくない。

 まだ友達でいたい。


 そんな矛盾する気持ちで心がぐるぐるになってしまう。


「……私は、どうすればいいんだろう?」


 どうしても迷いを振り切ることができず……

 ネコは頭を悩ませ続けた。


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◆ お知らせ ◆
新作を書いてみました。
【家を追放された生贄ですが、最強の美少女悪魔が花嫁になりました】
こちらも読んでもらえたらうれしいです。


もう一つ、古い作品の続きを書いてみました。
【美少女転校生の恋人のフリをすることにしたら、彼女がやたら本気な件について】
現代ラブコメです。こちらも読んでもらえたらうれしいです。
― 新着の感想 ―
前話に記載されていたネコの「ううん。そういう、ハッキリ言ってくれるところ、私は隙だな」という発言。誤字かと思いつつ、実はアサシンか何かなのでは?と思いつつ読み進めていると、本当に暗殺者だったとは! た…
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