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29話 これからも

 フィーの誕生日パーティーは、大成功で終わり……

 みんな、最後まで笑顔だった。


 フィーが喜んでくれて、アレックスとジークも喜んでくれて、父さまと母さまも喜んでくれた。

 一連の流れを企画した身としては、うれしい限りだ。


 今回のことで、アレックスとジークが、私に対する見方、印象を変えてくれたらラッキーなのだけど……うーん、どうだろうか?

 二人共、満足していたような気はするが、フィーに対する好感度が上昇しただけで、私に対する好感度は変わっていない気がする。


 というのも、誕生日パーティーの時、二人は私のドレス姿を見てなにも褒めてくれなかった。

 フィーに対しては、綺麗だのかわいいだの言っていたのに……

 私を見ると、途端に気まずそうな顔になり、目をそらしていた。

 見るのもイヤなのだろうか?


 うーん……それなりに順調に進んでいると思っていただけに、二人の反応は残念だ。


「まあ、それはそれで構いませんけどね」


 アレックスとジークのことは気になるものの……

 でも、今日はなによりも、フィーのことを一番に考えないといけない。


 そして、誕生日パーティーは成功した。

 フィーは本物の笑顔を浮かべていた。

 それで十分だ。


「……そろそろ寝ましょうか」


 ペンを置いて、日記帳を閉じる。


 フィーを真似て日記を書き始めたのだけど、なかなか楽しい。

 一日の出来事を思い出して、色々なことを考えることができる。

 それが楽しくもあるし……

 おそらく、後々で見返した時に、重要な発見をしたりもするのだろう。


 これからも、毎日、日記をつけていこうと思う。


 コンコン。


「はい?」


 扉がノックされる音が響いて、答える。

 こんな時間に誰だろう?


「あの……アリーシャ姉さま、まだ起きていますか? シルフィーナです」

「フィー? どうぞ」

「失礼します」


 恐る恐るという感じで、フィーが部屋に入ってきた。


 かわいいフリルのついた、ピンク色の寝間着姿だ。


「ごほっ!?」

「アリーシャ姉さま? ど、どうしたんですか?」

「……フィーは、私を萌え死させるつもり」

「もえ……?」

「いえ、なんでもありません。それよりも、どうしたのですか?」


 寝間着に気を取られて気づかなかったけれど、なぜか枕を手にしていた。


 ふと、その理由に思い至る。

 これはもしかして、もしかすると……?


「あの……子供っぽい、って笑われるかもしれないんですけど、でも、その……一緒に寝てもいいですか?」

「もちろん!!!」


 二つ返事で了承する。

 かわいい妹と一緒に寝られるなんて、最高か!


「えへへ……よかったです、断られなくて」

「フィーの頼みを断るなんて、ありえませんよ」

「アリーシャ姉さま、優しいです」

「それじゃあ、寝ましょうか」

「はいっ」


 ベッドに移動して、フィーは自分の枕を横に並べた。


 まずは私がベッドに横になり、続けてフィーが。

 おじゃまします……なんて、少し照れた様子で言う姿は、たまらない破壊力だ。

 くっ……この世界にスマホがないことが悔やまれる。


「……アリーシャ姉さま、まだ起きていますか?」

「横になったばかりですよ。さすがに、まだ起きています」


 苦笑しつつ、フィーの言葉を待つ。

 ただ単に、一緒に寝たいだけではなくて、なにかしら話したいことがあるのだろう。


「ありがとうございます」

「誕生日パーティーのことですか? 妹のために、姉として当たり前のことをしただけですよ」

「それもあるんですけど、でも、それだけじゃなくて……」


 フィーが恥ずかしそうにしつつ、言葉を続ける。


「……私の姉さんになってくれて、ありがとうございます」

「……フィー……」

「アリーシャ姉さまのおかげで、私、自分を好きになることができました。シルフィーナ・クラウゼンを嫌いにならないですみました。だから……ありがとうございます。全部、全部、アリーシャ姉さまのおかげです」


 そっと、フィーが私の手を握ってきた。

 おっかなびっくりではあるのだけど……

 でも、一度握った後は、離したくないというかのように強い。


「私は、大したことはしていませんよ」

「でも……」

「フィーが自分を好きになることができたのは、フィー自身の力によるものですよ」

「そんなことありません。アリーシャ姉さまがいなかったら、私は……今も、自分を好きになれなかったと思います。ただ流されるままに、なにも考えずに生きていたと思います。アリーシャ姉さまが、私のことを、ただの人形から血の通う人にしてくれたんです」


 フィーは、私の手を両手で握る。

 そして顔を近づけて、キラキラとした目をこちらに向けた。


「だから、ありがとうございます」

「私はなにもしていない、と言っても、あなたは納得しないのでしょうね」

「はい。私のこの気持ち、想いは、アリーシャ姉さまでも覆すことはできませんから」

「なら……一応、否定するのはやめておきます」

「……」

「……」


 互いの顔を見て、


「ふふっ」

「くすっ」


 共に小さく笑う。


 フィーの浮かべている笑顔は、心からのものだ。

 以前のように、曇っているようなことはない。

 そんな笑顔を生み出すことに、私が少しでも関わることができたのなら、それはとても誇りに思う。


「アリーシャ姉さま」

「はい、なんですか?」

「あの……これからも、ずっと一緒にいてくれますか?」

「もちろんです」


 にっこりと笑いながら答える。


「フィーがイヤと言っても、私は一緒にいますからね。ずっとずっと、傍にいますからね。だって……私達は、姉妹なのですから」

「アリーシャ姉さま……はいっ」


 フィーは、花が咲いたような、明るく輝いた笑みを浮かべて、


「アリーシャ姉さま、大好きです」


 とびきりの笑顔と共に、そう言うのだった。

これにて完結となります。

初めての悪役令嬢ものでしたが、どうだったでしょうか?

なかなかに難しいですが、楽しく書けたと思っています。

同じ楽しいを少しでも感じて頂けたらうれしいです。

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◆ お知らせ ◆
新作を書いてみました。
【家を追放された生贄ですが、最強の美少女悪魔が花嫁になりました】
こちらも読んでもらえたらうれしいです。


もう一つ、古い作品の続きを書いてみました。
【美少女転校生の恋人のフリをすることにしたら、彼女がやたら本気な件について】
現代ラブコメです。こちらも読んでもらえたらうれしいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] 起承転結がはっきりしててすっきりとしている読みやすかったです。 [気になる点] 欲を言うならジーク、アレックスvsシルフィーヌでアリーシャを取り合う!みたいな話も読みたいです。 [一言] …
[一言] とても可愛いお話でほっこりしました‼️ ジィークは、今後どうするのかしら?と思わなくはないですが‼️楽しめました。
[良い点] 祝!完結!! もうちょっと、いちゃいちゃ姉妹を見ていたいところではありますが。 ともあれ、お疲れ様でした! 暴言幼女も楽しみにしています。 え、タイトルが違う?
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