戻りし時
ライムの指示によりホープに手錠が掛けられ連れていかれた。
飾ってあった宝飾の椅子に深く腰掛けると、満足そうに笑みを浮かべた。
「元ホルトゥスの王、今はヒーロンド魔国の王。
一つの国の運営をした経験があるから、安心しぃ。
ホープに代わってワシがしっかりとこの魔国を繫栄させてやろう!」
近くにいた騎士に水を要求し、騎士は慌てて部屋を離れる。
数十秒後、運ばれてきたグラスに入った水を片手に何か考える素振りを見せる。
「...ふむ、そう言えばワシずっとつけられてたんじゃわぃ。
忘れておったとて、ずっと見られるのは気味悪いのぅ。
なぁ?」
周りに待機していた騎士たちはライムが突然天井の方を見つめる謎の行動に困惑していた。
その言葉、その視線は間違いなく《俯瞰者》となった今の俺に向けられていた。
むこうはから見えるはずも、触れるはずもないこの力。
「おぬしどこから見ておったんじゃ?
何もないように見えるが、ワシには分かる。
しかも、懐かしい気配、過去に何度もあったかのようなそんな気がするんじゃ。
誰だか分からぬが、ワシの人生を覗き見するとはいい度胸じゃの?
あの小屋にいた時から気付いておったんじゃが、いい加減鬱陶しくなってきたわぃ。
省略《支配者》...。」
俺はその言葉を聞く前にすぐさま《俯瞰者》の視点を無理やり解除した。
真っ白な空間に何万の色が塗られていく。
何度も何度も乱雑に塗り重ねられるように情報が浮かび上がる。
その中から必要な物にだけ目印を付け、他を排除していく。
背後から黒い霧が現れ俺を包み込んでいく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「.........っぉ...。
......お...ぃ、...っおい!
生きてっかよ!?」
激しく身体を揺さぶれながら目を開ける。
情報の海に呑み込まれる前になんとか脱出できたようだ。
身体を起こし、感覚の鈍い頭を手で支える。
「あぁ...突然倒れて、俺の肩に寄りかかって来たもんだから何事かと思ったらよぉピクリとも動かなくなっちまったんだからな?」
さりげなく背中を支えてくれたのはまさかのハーヴァーだった。
「どのくらい時間が経った。」
「目覚めて最初の一言がそれかよ。
まぁ、時間にしておよそ一時間程度だ。」
「ふむ、まぁ悪くないな。
これからお前たちに情報の共有を行う。
ハーヴァー、いい加減マルガスと顔を合わせるんだ。
ライムが王となった今、ハーロットの真相を深く知っているのは奴のみだ。
過去と向き合え、今がその時だ。」
「...本当に、ハーロットは生きているんだな?
俺を置いていったのかどうか、それとも何か別の思惑があったのかきちんと師匠に説明してもらうか。」
会った時とは別の意志を持った目になったハーヴァーをハデスさんが目を細めて見つめていた。
「こうもお変わりになるとはハーヴァー殿、最初から我々が来ることを想定していたのでは?」
その言葉にハーヴァーは沈黙した。
「お前が最初っからその気だったのだろうが、そうでもなかったのであろうとも俺は別に気にしない。
掴むものは己自身で掴み取れ、俺達は俺達の道を行く。」
場所代として店主にコインを投げ渡しておいた。
「またのご利用、お待ちしています...。」
薄暗く、じめじめとした酒場を出て三人はマルガスの元に向かった。




