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リ・プレゼン  作者: たむーん
第二章 魔国と旧友

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アレフ・ライドーム

 空中を凄まじい速度で飛んでる気分は最悪だ。

少しでも周りを見ようとすると処理が追いつかないほどの様々な情報が脳に送り込まれてくる。

その瞬間、脳がそれを整理しようとして間に合わず爆散してしまうかと思うほどの頭痛が走る。

そのため俺はうっすらと目を開き、あの二人を探していた。

飛んでるうちに、景色が変わり、狼煙をあげている小さな小屋が見えた。

速度を落とし、目をしっかり開く。

マルガスとハーヴァーがばつが悪そうな顔をしていた。

二人は決心したのか扉を開け中に入っていく。

屋根から中の様子を伺おうと侵入を試みたが、薄っすらと結界らしきものが張られていた。

が、今の俺には関係ない。

通り抜けた際に違和感を感じたが、気にせず会話に集中した。

「ぬぅ?どうしたんじゃ、そんなボロボロになってしまって。

みすぼらしいぞぉ?」

「し、師匠様...。」

「マルガス、ここは俺が...。」

二人が膝をつき、箱の上で胡坐をかいている爺こそが三人の義理の育ての親にして師匠のライムだ。

奴の本名はアレフ・ライドーム、通称ライムだ。

年齢は不詳、いつ見ても白髪の長髪姿で、右腰に小さな杖を携帯している。

俺と付き合いの長い旧友の一人だが、良い意味でも悪い意味でも信用できない奴だ。

自身の髭を触りながら薄暗い天井を見つめている。

「そうじゃ、ハーロットはどこいったんじゃ?」

「師匠、ハーロットは怪我を負い、アテナという天使と共に現在も未曽有の怪物と戦っております。」

「ほぉ?マルガスよ。

ハーヴァーの言っていることに嘘偽りは無いな?」

「勿論でございます。

魔国の冒険者達と共に討伐戦をしている間、未知の瘴気に阻まれ、怪我を負った天使のアテナと共に異常な瘴気を扱う...”人間”?と遭遇、そして開戦という事です。」

「ふむ、それでハーロットは足手まといのおぬしらを切り捨てワシの下に寄越したと?」

「師匠!」

「よせ、ハーヴァー。」

怒りを露わにしたハーヴァーをマルガスが抑える。

「ワシに願いを申すというならば、対価を提示せよ。

それが出来なきゃワシは動かん。」

「.........、俺の、俺の魔法の一つを持って行ってください!」

「正気か、マルガス!?」

先ほどの怒りを忘れるほどの驚きをマルガスに向ける。

「龍族の魔法か...、良き対価じゃな。

して、何を申す?」

「良いんだ、ハーヴァー。

お前と違ってあの場で何もできなかった俺にできる最大限の謝罪だ。

師匠、白龍族アレフ・マルガス、我が一族秘伝の魔法を対価にハーロットを救ってください。」

「願いは、”ハーロット”だけでよいのじゃな?」

「っ!」

ライムという爺は非常に性格が悪い。

昔から何かを願えば対価を求め、願い以外の者を邪魔と見なす、ひねくれ野郎だ。

「俺の、アレフ・ハーヴァーの決意を捧げます。」

「おい、それはハーロットへの...。」

「いいんだ、結果的にハーロットが助かれば俺はそれだけでも嬉しい。」

「マルガスは魔法を、ハーヴァーは心をワシに提示するか。

よかろう、よかろう。

それでこそ、ワシの弟子じゃ。」

どこか嬉しそうに嫌味ったらしい笑みを浮かべ、箱から降りた。

「ほれ、善は急げじゃ。

飛ぶぞ?」

二人の肩に手を置き口元で何かを呟く。

ライムお気に入りの範囲指定の転移魔法だ。

俺もその範囲内に入り、魔法が発動するのを待つ。

「ほれ。」

一瞬、どころか最初からそこにいたかのような神業の魔法を体験した。

正面を見れば、辺り一面大きなクレーターも無ければ、ただただ極寒の猛吹雪が吹いている地帯が広がっていた。

その変わりようにマルガスとハーヴァーは唖然とし、ライムは首をかしげていた。

「そ、そんな...。」

「これは......、一体。」

小さな羽が落ちているのを見つけた。

マルガスはその羽に触れると、辺りが瞬く間に光り始めた。

現れたのは、アテナと見知らぬ天使と思われる者。

「マルガス、ハーヴァーとハーロットが言っていた師匠様とやらだな?」

「ワシがその師匠様じゃぞぃ。」

何故か誇らしげに胸を張るライムをよそに話は進む。

「現在、ハーロットは天界にてアポロン様によって治療していただいておる。

未知の攻撃によって負った怪我も無事に回復に進んでいるとのことである。

しばらく、ハーロットをこちらで回復に専念するため、滞在させる、良いか?」

杖をコツンと突き、注目を向かせるようライムは振り向いた。

「駄目と言ったら...?」

吹雪いてる中、さらに気温が下がるような寒気がした。

アテナではないもう一人が口を開く。

「手荒な真似はしたくないが、従わぬというのなら...。」

「アレはアレでまだ使い道があるのじゃ。

訳も分からぬ者達に治療していただくのも癪じゃ、アレが望もうが、ワシは望まぬ。

マルガス、ハーヴァー、わりぃが魔国の王に山の景観を損ねてしまうかもと伝えてきてくれぬかのぉ?」

重く低い声で何を思っているのか分からない恐怖を溢れ出すライム。

唖然としていた二人も事の重大さに慌て、血相を変えその場を離れた。

「アテナ、ゼウス様にライムと言う者が我に喧嘩を申した、と伝えておいてくれ。」

「承知いたしました。」

そしてライムと天使だけがその場に残った。

「我が名はザドキエル、これでも大天使だ。」

「ふむ、大天使がなんなのかは知らぬが、ワシはなんて名乗ればいんじゃ?」

「ライムと呼ばれているのではないのか?」

少し困ったように、髭に手を添え悩む素振りをするライム。

「そうじゃのぅ、《大賢者》とか《来訪者》とかいっぱい合ってなぁ。」

その言葉を聞いたザドキエルは眉を顰めた。

「《支配者》、《操る者》、《断罪者》とかその役職名というかあってな。

ここだとどれを使うか悩むのじゃ。」

「...、本当に人間か?」

「失礼な、どこをどう見てもワシは人間じゃぞ?」

「だが、その名を冠する者は神話レベルの時代の異名だぞ。

その名を名乗るには、()()に愛されなければならないのだが...。

最高神含め、私より上の神は全員所持しているが、人間が複数の異名を所持しているのは聞いたことが無い。」

思いついたかのようにライムは、顔をあげた。

「では、《大賢者》を使うとするかの、便利だしこれ。

《大賢者》アレフ・ライドーム。

ザドキエルとやら、ホルトゥスの民であり元王族のワシに滅ぼされること光栄に思われよ?」

「なに!?」

ライムが口にしたその名を聞いて驚きを隠せないザドキエルをよそに、ライムは携帯していた杖を手に取り、一振りして杖の中に隠してあった名刀を取り出した。

「《大賢者》は魔法以外も武器を扱えるのじゃぞ、知っておったかぁ?」

不気味な笑みを浮かべ爺とは思えない力を足に集中させ、岩が抉られるほどの力で地面を蹴り上げた。

「ほれっ、名刀ダグラスじゃぞ?味わえぇ。」

「っ!」

咄嗟にザドキエルは距離を取ったが、肩から血を垂れ流していた。

「避けたは...。」

「避けたはずなのに?

とでも言いたそうな顔をしておるなぁ、キヒヒッ。」

大天使の血がべっとりと付いた刀を拭き取り、何回か素振りをする。

「刀は大切に使わなきゃいけないんだぜぇ?

知っておるかのぅ。」

「大天使レベルになるとこの程度の怪我自然に治癒できるのだ、そちらこそ知っておるか?」

光の粒が怪我の周りに集まり、切られた服ごと、完全に治癒した。

「少々、驚かされたが次はこちらからだ!」

白く、大きな複数の羽を展開し魔力の凝縮される気配を感じ取る。

数歩後ろに下がったライムは刀を横に構える。

「ザドキエルの名において、慈悲の雨をかの者に与えん!

【哀れな子羊】」

大粒の雨が降り注ぐ。

猛吹雪は勢いを無くし、この一帯だけ雨が降り注ぐ異様な光景となった。

地面に触れた雨はじゅわっと音をたて、焦がしていた。

「名刀ダグラス、一の構え、【露知らず】

ぬわぁっ!」

上に向かって大きく刀を振るうと、空から降る雨粒に直撃した。

解き放たれた斬撃は弧を描く軌道で飛んで行った。

その軌道だけ、雨が降らず、空から降り注ぐ雨はその部分を通過して降るという現実離れした技を放った。

「なに!?我が力の一部が相殺されるなど!」

「名刀ダグラス、二の陣、【暗雲の霜】」

雨で溶けきる前の少ない雪が空中に小さな粒となって浮かび上がる。

やがてその粒は雨とぶつかり音をたてて焦げていくが、逆に飲み込むように雨を吸収していった。

自身の攻撃と相性が悪いと感じ取ったのかザドキエルは漆黒に近い炎を複数生み出し、ライムの下に飛ばした。

「おっと危ないなぁ、ぉい。」

構えを解き、軽い動きで炎を避けていく。

ライムはノータイムで魔法を展開し、複数の属性の魔法をザドキエルに飛ばす。

それに負けずとザドキエルも炎を増やし応戦する。

「そぉれ。」

空中に浮かぶ小さな粒の中、一際大きい粒を器用に下から直撃させた。

「なに!?」

大きな砂煙が立ち、ザドキエルは煙に包み込まれた。

その隙を逃さんとばかりにライムは、

「名刀ダグラス、三の月、【雲の巣】と《大賢者》の力業じゃ。

ちと熱いかのぅ、【複合・フランマ】」

人間離れした速度で器用に成し遂げていく。

いつの間にか地面には白い糸のようなものが張り巡らされており、ライムの左手には小さな炎が生み出されていた。

煙が晴れると、

「我に護りを【強靭な盾】」

何重にも重ねられた分厚い膜で覆われたザドキエルが現れた。

それを気にせずライムは手のひらを差し出し、不気味な笑みを浮かべ、

「そんなちんけな護りじゃ溶けちまうぜ?

うけとってみぃや、【原初の炎・複合魔法・フランマ】」

小さな炎の玉を飛ばす。

飛ばした瞬間自身を護るかのように刀を立て、構えた。

「名刀ダグラス、四の術、【蜃気楼】」

と同時に膜に炎がぶつかる。

何も干渉されないはずの俺にも痛みを感じるほどの眩い光り、甲高い音、そして辺りを消し炭にするほどの灼熱が燃え広がった。

「ぐぅっ!この炎は、最高神以上の熱量!?

なんなんだ、この人間は!」

白くて何も見えないが、ザドキエルは耐えていた。

白い中、青白い光線が通り抜けていくのが見えた。

「ぐぼぁ!?」

「名刀ダグラス、終の舞、【投げ】じゃ。

いい加減眩しいのぅ、消えろ。」

指パッチンをする音が響き光と音が消えていく。

膜がボロボロと崩れ落ち真ん中に貫通跡、ザドキエルの腹に名刀が突き刺さっていた。

チリチリになった髪の毛の先端を抜き取り、予備の短刀で髭を整えながら出てきたライムは名刀の行く末を見て大笑いしていた。

「終の舞なんて名付けたが、そんなものは存在しない。

思い切って投げてみたが結果オーライじゃな、ハハハハ!」

「ま、まだ終わってないぞ、人間。」

腹から名刀を抜き取りおびただしい量の血を流しながら地に足を着いた。

「あ、足ついちゃったね?」

突然、全身の力が抜ける様にザドキエルは倒れた。

「な、なんだ!この感じは!?」

「ちゃぁんと見てなきゃ、駄目だぞ?

ここにはワシの名刀の力がびっしりと。

おぬし、なかなか美味しい魔力をもっておるなぁ。」

しっかりとよく見て見れば吸われた魔力が糸を通ってライムに供給されている。

「これで数百年ぐらいは生きれそうじゃな、ハッハッハ。」

「ぐぬぬ。」

「この戦いというか戯れの落としどころじゃがな、どうしたい?」

「...?」

何を言っているんだという表情でザドキエルはライムを見つめる。

そりゃそうだ、この戦いの始まりはライムがアテナの申し出を断ったことから始まったのだから。

「ワシは別にハーロットに関してなんとも思っておらぬ。

マルガスやハーヴァーはまだまだ未熟者じゃが、ハーロットは違う。

ワシと同じではないが、似たような才を持っておる。

ワシの悲願をハーロットなら達成してくれるかと思ってな、育てたんじゃ。」

「悲願?」

「ワシ強いじゃろ?

強き友人はいるにはいるのじゃが、連絡は取れないし、引きこもるし、人間やめちゃうし、勝手な奴が多いんじゃ。」

「ホルトゥスの民の生き残りがまだそんなにいたとは...。」

「おっと、このことは他の者には内密にじゃ。

他の者にばらしたら、おぬしをバラさなくてはならないぞ?」

今までよりも強大で深淵のような殺気を解き放つ。

「冗談じゃ、まぁおぬし次第じゃな。

おっと、いかんいかん関係のないおぬしに喋りすぎたわい。

まぁ、ワシが大天使?より強い最高神とやらに挑んでもいいのじゃが、それで勝ってしまったらそれこそこの世界を滅ぼすかもしれんなぁ。」

鞘に刀をしまい、右手で杖を突きだしたライムは袖をごぞごそと漁り始めた。

「あぁ、持っててよかったわい。

ほれ、これでも飲んどき、若い天使よ。」

と言って渡したのは、透明な楕円の粒状の何か。

ゴクリと飲むとザドキエルの身体が戦う前の状態に戻った。

驚きを隠せていないザドキエルを置いてライムは手のひらを振る。

「ワシはこれから魔国に戻らなきゃいけんからの、あの二人には適当に誤魔化しておくわい。

ハーロットに後は好きにやって、ワシを倒してみぃや、とでも伝えておいてくれ。

久しぶりに名刀も使えて満足したわぃ、ザドキエルとやら、またこの爺の相手をしてくれないか?」

「あ、あぁ承った。

それとその約束、叶えられるよう我も切磋琢磨しておこう。

では、いずれまた会おう。

新友、ホルトゥスの民のライムよ。」

「新友いい響きじゃ、酒が進むわぃ。」

ライムはどこからか取り出した酒をぐびぐびと飲みながら何故か範囲指定の転移魔法を起動する。

違和感を確信に変えた俺は敢えてその転移魔法に乗っかった。

「では、バカ二人を扱くとするかのぅ。

酒が冷えててうまいわぃ。」

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