争いは...
「負傷者は下がれええぇぇぇ!!!」
どこかから聞こえてきた怒声に前線で怪我をした者が退く。
「前線を維持しろぉ!」
そう叫ぶのは、神都フェルシュタヌの第一騎士団、副団長のイファこと通称《鉄壁》だった。
「方位、45度方面に多数の敵あり!先に滅ぼせぇ!」
混乱と焦りで満ち溢れている戦場に的確な指示が飛ぶ。
洗練された騎士達は、素早く敵陣へと走り出す。
騎士達が持つのは殺意と悲壮の心だけ。
それを武器に敵陣に突っ込む。
敵陣へと着いた頃を見計らってイファは言う。
「お前たちのことは一人たりとも忘れぬ。
神に捧げ、明日への糧となれ!!!」
後方で待機していた、神聖な服を身にまとい深くフードを被っている者たちが動き出した。
片膝立ちで両手を組み願いを捧げる。
「かの者達に大いなる祝福を、我らが制約に深い敬意を、力を貸して下され、我が主よ。」
黒く雲がかった空に一筋の光が差し込んだ。
光は徐々に太くなっていき、包み込むような温かい空気が戦場に広がっていく。
空にできた大穴から白の衣を身にまとい、ふかふかな羽毛のような羽が背中に生えた生物達が舞い降りてきた。
その数は敵陣へと突っ込んだ騎士達と同数。
その中でも一際大きな生物がイファの前へと姿を見せる。
「あら?今回はネファはいないのかしら?」
「兄様...、いや騎士団長は遠征に出ている。
俺で悪かったな、主天使ハシュマル。」
「いえいえ。今回はあちらの方々でよろしいかしら。」
「あぁ、楽にしてやってくれ。」
「ふふ、特別サービスね。」
ふわりと上昇し、空中でうつむいている天使達が表をあげる。
ハシュマルが手をあげるとおびただしい数の魔法陣が展開される。
「神都に背く愚かな者どもよ。我が名はハシュマル。炎に身を焼かれてしまえ!」
敵陣どころか、山々が大きな炎に包まれる。
阿鼻叫喚の地獄になっている場所に天使たちが突っ込む。
炎で苦しんでいる敵、味方構わず惨殺していく。
天使が舞い降り、5分も経たないうちに戦況はひっくり返った。
奇襲をしかけようとした敵国はそのやり方に戦慄し後退し始めた。
が、ハシュマルはそれを見逃さず天使達に使命を与える。
「命は滅ぼすこと。行け。」
残党兵など残らない。
残るのは動かなくなった物体と血が燃えて酷い匂いとなった地獄のような空間。
再びイファの前にハシュマルが舞い降りる。
「次呼ぶときは、もう少し頑丈なのを寄越してくださいね?
これでは訓練にもなりません。それとネファによろしくね、イファ。」
「ははは、すまんな。騎士団長に伝えとく。」
血で真っ赤に染まった衣は天使というか、悪魔そのもののを連想させる。
「ささ、天界へ帰りましょう。」
大穴に入ると同時に天使達についていた血が煌き蒸発していく。
全ての天使達が帰った瞬間、空は再び暗くなった。
全てが終わった後一人の騎士が近づいてくる。
「今回の戦争で失った騎士の数は100。天使様の御力行使により神呼者は5名、補充よろしくお願いします。」
「いつも通りだ、少し放っておいてくれないか。」
燃え尽き黒い焦土と化した土地を眺め、乾ききった視線を空へと向けた。




