144話 「そのゴング……少々お待ち遊ばせ」
第一試合が終わり、興行は小休憩に入りました。観客の皆さんは用を足したり、友人と歓談したりしてメインイベントを待っています。
第一試合を戦い終えた四名は、流した汗を拭くと、着替えすらせず……山田さん、ルカさん、カルラさんのセコンドに付く準備に忙しそうですね。
「タオルはいりますか?」
「あー……今日は多分、平気だと思うが……一応持っていっておいてくれ」
山田さん、ヴィクトリアさんの質問に……そう答えました。ああ、そういえば SUWF との対決の時には準備してましたもんね。その発言を受けた、ヴィクトリアさん……タオルを握ります。
「それでは…………行ってくる」
イクセントラさんが控室を出ました。会場に休憩の終了と……メインイベントの開始を告げるようですね。それを受けて、山田さんも立ち上がりました。そして控室を出ると……花道奥へと足を運びます。当然、メンバーもその背中に続くのでした。
***
「これより…………メインイベントを開始する。その前に………… 3 VS 3 …………シックスメンタッグマッチの説明をさせてもらう。タッグマッチと同じ…………以上」
〈今回は 3 Way よりも、ルールが楽だな!〉
〈試合権利のない奴等の動きが、重要だな!〉
〈合体技……派手になりそうだぜ!〉
お客さん達、初の 3 VS 3 のタッグマッチへの期待を隠せません。それもそのはず、この前の 3Way でもわかりましたが……リング内外での見どころが増えますからね。しかも、滅多に見られないような連携技が見れたりもする……そんな期待が湧いてきます。そう考えると、いくらスカイハイの危機とはいえ……私も楽しみになりますね。
「それでは…………青コーナーより…………スカイハイの入場」
今の……聞きました? イクセントラさん、選手名じゃなくて……スカイハイって、団体名を言いましたよ! いつもと違うコール……しかも、それが団体の運命を賭けた一戦で行われるなんて、なんだか感じ入るものがありませんか?
そして、流れてくる音楽は……ジングルの後に、勇壮な旋律です。これは王都で初披露した……山田のテーマ改ですね! 当然、セパラドスでは……初披露です!
〈うおおおおおおおおお!〉
その勇敢かつ無骨な音楽にお客さんは大興奮です。
〈やっまっだ! やっまっだ!〉
〈ルーーーカ! ルーーーカ!〉
〈カッルッラ! カッルッラ!〉
山田のテーマ改は、山田のテーマ無印と比べ……リズムが取りやすい事もあってか、手拍子以上に……お客さんの大歓声、そしてコールが凄まじい音圧となって会場を支配しています。そんな中、大勝負に挑む三名は堂々と入場してきました。続いて、セコンドの方々も後ろを歩いてきています。
さあ、スカイハイ一同……リング脇で勢揃い。そして試合に挑む山田さん、ルカさん、カルラさん……大声援に包まれながらリングインを果たしました。
「赤コーナーより…………ゴールデンパッドズの入場」
イクセントラさんのコールに続いて、流れるのは……例の宮廷音楽。上品で優雅でエレガントですね。ですが、ここで求められている音楽ではありません。
〈なんだよ、この音楽……〉
〈Boo Boo Boo Boo !〉
ああ、ブーイングが宮廷音楽を上書きしちゃいましたね。まあ……仕方ないか。
そして……花道奥からゴールデンパッドズの三名が姿を現してしまいました。
〈ヤバイ、何か見ちゃいけないものを見た気がする…………〉
〈おえっ!〉
〈どうしてスカイハイ興行は、新しい性癖ばかり開拓してくるんだよ!〉
姿を現したゴールデンパッドズ……まあ、バカ王女はいつも通りです。悪趣味なピンク色のフリフリが沢山施されたドレス型のワンピースで入場してきました。
問題は……残る二人。以前、私が見た……地獄のような光景ですよ。スピ・アー両名は、胸にパッドを沢山詰め込んで入場してきました。スピ・アー両者は、どちらも筋肉質の男性です……しかし、胸の部分に立派な膨らみを二つも抱えながら……花道を進んできたのです。
花道を進むスピさん、もはや慣れたのでしょうか……谷間を作ったりして遊びながら入場していますね。対しアーさんは……恥辱でしょうか、顔を真っ赤にしながら花道を進んでいますね。
ノリノリのスピさんと、恥ずかしそうにしているアーさん。私的にはアーさんの反応がそそりますね。女装とかって、あんな感じで恥ずかしがる人ほど……実は、ハマるんですよね。
まあ、そんなこんなで会場を驚かせたゴールデンパッドズもリングインしました。こうしてリング上に選手六名が揃いました。
「青コーナー…………体重はルカの三分の一…………カルーーーーーラーーーーー」
〈おいおい、今日も煽るのかよ!〉
「青コーナー…………体重は秘密…………ルーーーーーカーーーーーー」
〈仲違いだけはやめてくれよー!〉
「青コーナー……286パウンド…………やまーーーーーだーーーーー」
〈お前だけが頼りだ! 頼んだぞー!〉
どうやら声援を聞くに……応援より不安の気持ちの方が高まっている感じですね。まあ、あの二人ですよね。うん、気持ちはわかります。さあ、次は赤コーナーのコールですね。
「赤コーナー…………198パウンド…………アーーーーーサーーーーー」
アーサーさんのコールがなされましたが……当人は一歩前に出ることもなく、スピさんの後ろに隠れていますね。とことん胸を恥ずかしがっています。なんだか、ここまで恥ずかしがっていると……私ですら新しい性癖に目覚めてしまいそうですね。
「赤コーナー…………216パウンド…………スピリーーーチュアーーー」
こちらは谷間を作ったり、揉みほぐしたりと……胸の存在をこれでもかとアピールしていますね。まあ、偽乳なんですけど……本人が楽しそうなら、それはそれでいいか。
「赤コーナー…………体重は王族のみが用いる、職人により年に三本しか作られない羽ペンくらい…………スーサレム・ウドン・ウィンチェスター・フィオレンティーーーナーーー」
そしてバカ王女、両腕を高く掲げ……ありもしない歓声に応えています。もし、彼女が何か聞こえていたなら……それは幻聴でしょう。会場は冷え切っていました。
「レフェリー……………………イクセントラ」
そしてイクセントラさんが自己の紹介を済ますと、ゴングの要請を…………
「そのゴング……少々お待ち遊ばせ!」
ん? なんでしょうか? バカ王女、イクセントラさんに立ち塞がると……ゴング要請を中止させました。そして、拡声器を受け取ると……何か言うみたいですね。
「オーーーホッホッホッ……親愛なる絶壁同志たる、イクセントラ様。本日は他でもありませんわ。貴方にこれを授けて差し上げようと思いまして…………」
そう発した王女は右腕に高々と……黄金色の胸パッドを掲げました。そして腕を下ろすと、イクセントラさんの前に差し出します。
「さあ、ワタクシと運命を共にする覚悟があるのなら……受け取っていただけますわよね?」
〈おいおい、ヤベーぞ! バカ王女のヤツ、イクセントラを買収しようとしてやがるぜ!〉
〈イクセントラー、お前には自前のヌーブラがあるじゃないか!〉
〈胸パッド on the ヌーブラ……そういう手もあるぜ!〉
なんと! バカ王女……試合前に大胆にもイクセントラさんの買収に及んでいます。
さあ、イクセントラさんの答えは……どうなるんでしょうか!?




