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9 生命の色

ヤツカドさんのお部屋で魔王様との打ち合わせが続いていますが

 バケットが面倒を見ている例の『人間』。それが『勇者』と聞いて興味が沸いた。

 魔王様は『勇者』だと分かったようだけど、他の人間とどう違うんだろう。僕もよく見たら分かるかな?


「魔王様、勇者と他の人間って、どうやって区別をつけるんですか?」

「生命の色かな」


 …分からん。なにそれ…。


「生命に色なんてあるんですか…?」

「あるな。どんな生命にも色がある。人間にも魔物にも。自然の生き物にも。その色を見れば多くのことが分かる」


「僕にも勇者が見分けられますかね」

「うーん…どうだろう。ひょっとすると私のように『生命』を食べるタイプの魔物に独特の特技なのかも知れない」


『魔法』によっては魔物の個人的な才能に依存するものも多いからなぁ。才能ないものはいくら努力しても習得出来ない。

 でもまあ、一応今度『勇者』を見るときには注意して見てみよう。意識して見れば、今まで尋問してきた人間とは違うものが見つかるかも。


「ちなみに僕の色ってどんな色ですか?」

美味うまそうな色だな」


 …どういうことかな?


「ヤツカドの生命の色は、おまえが混沌にいるときから外にあふれて見えた。とても強くて大きく複雑で美味うまそうだったな」


 結局、美味うまそうなのか。


 気が付くと魔王様が僕を見ている。その美しい金色の眼には食欲が宿っている。


「いけないな。その美味そうな生命、見ないようにしているんだがつい」

「なんかすみません」


 やっぱりガマンしている魔王様には僕は目の毒なのか。少しくらいは召し上がって欲しいな…。それは僕次第なんだっけ。それなら…


「魔王様! 僕、危なくなったら抵抗するって約束しますよ。だからどうぞ僕を召し上がって下さい」


「・・・・・」

 なんかむちゃくちゃ信用してなさそうな視線を感じる。


「僕は魔王様には嘘をつきませんて」

 一度だけ嘘をついたけど、あれはちょっと例外なので。


「もしも抵抗しなかったら…」

「ペナルティあるんですよね? 甘やかして下さらないとか。それは嫌ですから。さっきのマッサージは気持ち良かったですし」


「…では、少しだけ食わせてもらおう」


 よし! やった!

 それに僕もね、最初の頃に比べたらだいぶキャパシティ増えてるんだ。そろそろ魔王様にご満足いただける容量になっているんじゃないかな? 魔王様、きっと僕の成長を見て驚くぞ。


 とりあえずいつも通り3秒を目安にして抵抗するプランで行こう。


 ふふ。久しぶりなのでドキドキするな。僕はベッドに腰かける。さあどうぞ。

 魔王様、本当にお美しいです。そのお顔も、瞳も、唇も…。

 その小さな唇が今、僕に触れる…。


 天にも昇る気持ちって、まさにこれだろうな。

 魔王様の唇が僕に触れて、そして…その凶悪な舌が僕の内部に…


 いち、に…


 ……!!!!

 なに!? おかしい。


 いつもと勢いが違う。まだ2秒、あり得ない!?

 ヤバい、僕、死ぬ。これは死ぬ。

 消える。僕が消えてしまう! 魔王様を残して消える!!


 ダメだ!!


 僕は抵抗した。

 腕を上げて魔王様の胸のあたりを力いっぱい押したけど…魔王様のホールドがきつくて、全く動けない…魔王様、ダメです。


 魔王様の金色の瞳が爛々と輝き、その目は強い欲望の笑みをたたえている。

 僕のささやかな抵抗なんて、気が付きもしない。


 これ以上は…!


 抵抗する力は、もうない。

 腕は力なく落ちた。


 魔王様、魔王様、


 魔王様…魔王さ…ま…


 どうしたことだろう、目の前が暗くなって…

 あなたの、美しい金の瞳がもう見えないんです。


 抵抗、し切れなくて申し訳ありませんでした…。


___________________



 僕…? 僕が目の前にいる…?


 八角人志やつかどひとしの姿をした僕が…。

 虚ろな目でこっちの僕を見ている。


 目の前の僕は満足そうに微笑みながら、八足の姿に戻った。

 その足の先から尻尾の先から、少しずつちりとなってサラサラと消えようとしている。


 僕は今、どこにいる?


 あ。そうか。ここは魔王様の中。

 僕は魔王様に食べられてしまったんだ。


 ここは気持ちいい場所だね。

 これからはずっと僕は魔王様と一緒にいられる。僕はようやく魔王様に全てを捧げることができたわけだ。それはとても幸せなこと。

 

 まあね、僕はいろいろ頑張ったし。

 そろそろ終わりにしてもいいや。

 このまま永遠に眠ってしまおう…。


 この最高の幸福感に包まれたまま、魔物としてのこの生涯を終えるのも悪くない。そう思ったんだ。


 なのに


「ヤツカド…!」


 魔王様の声が僕から聞こえてくる。悲痛な声。


 そんな悲しそうな声を出さないで下さい。

 あなたを悲しませるものは、僕が全部なんとか、しますから…


 魔王様のことを悲しませるのはダメだ。

 魔王様のために、僕はもう一仕事しなくちゃいけない。


 そのためなら、この幸せなんて要らない。

 僕の幸せは全部魔王様に差し上げるから…。





 長い時間にも思えるし、一瞬にも思えるその後

 僕の目の前に魔王様がいた。


 良かった。魔王様のお姿が見える。


 だけど、その表情は痛々しくて

 見てる僕の方まで苦しくなってくるよ。


 あ、そうだ。

 多分、これ僕を心配して下さっているんだ。


 大丈夫です。僕は大丈夫。

 泣かないで…


 魔王様が僕を見ている。

 微かな笑顔、良かった。


 魔王様にも、涙ってあるんですね。

 虹色に輝くその涙、とってもキレイだ。


 これが魔王様の生命の色なのかな…?



 もっと魔王様のお姿を見ていたいけど、なんだろう。すごく眠い。


 ねむい…ねむいな…。


 すみません、また…ちょっとだけ寝ちゃいますね。

 永遠に眠るとか、もう言いませんから。


 起きたらたくさん働きますから…


 今は、身体が動かないんで…


 少し休めばすぐに回復しま…


 ・・・・・・・・



 

読んで下さってありがとうございます。

ブクマも感想も評価も、とても嬉しい…。

完結まで書き終わってます。書き終えられたのはあなたのおかげです。

あ!もちろん今からでも大歓迎大感激ですよ!

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