第六拾回戦!!一級建築士
第六拾回戦!!
世界代表!サフラジェット、エメリン・パンクハースト!日本代表!一級建築士、丹下健三!
イギリスに婦人社会政治連合という組織があった。スカートの陰に爆弾を持ちながら歩く彼女はその結成者。過激な訴え方をし、女性の参政権を世に訴えた爆炎と飢餓の訴求者である。
対するは鉛筆を持った老人。スーツを着て歩く男性は日本を飛び出し世界にその痕跡を残した。斬新なデザインで建てられた作品を今へ残す建築家である。
第六拾回戦、開始!!
旧倉敷市庁舎、現東京都庁舎、国際連合大学、フラッシング・メトウ・スポーツ・パーク。
山梨文化会館、今治市民会館、シンガポール・インドア・スタジアム、兵庫県立歴史博物館。
在メキシコ日本大使館、フジテレビ本社ビル、クウェート空港、広島国際会議場。
丹下健三が設計したあらゆる世界中の建造物が現れ、町ほどの巨大な空間を形作る。
苛烈なる爆破テロも実行したエメリン・パンクハーストは全体的な外観すら計算された町に飛び込み、丹下健三を目指して縦横無尽駆け回る。
壁を蹴り、手すりを足場にし、シャンデリアを掴んで進み行く。
急に現れる巨大な壁、いや、横浜美術館が行き手を阻むが、エメリン・パンクハーストは右手に爆弾を創造し投げつける。
轟音と共に吹き飛ぶ美術館。
爆炎を涼しい顔で潜り抜けるエメリン・パンクハースト。
丹下健三は爆音を聞きとらえ、エメリン・パンクハーストの攻撃方法を予測する。
そして、エメリン・パンクハーストを囲むように高層ビル群で囲んだ。
再び現れた障害物に爆破を考えるエメリン・パンクハースト。
しかし、相手は高層ビル。倒れ方次第では周囲のビルを巻き込んで自分も倒壊の下敷きになる可能性がある。
ならば、使うのは飢餓。
過激なハンガー・ストライキは大地も巻き込む飢餓となった。
地面の水分が失われ、植物が枯れる。
地盤が緩くなり自重によって高層ビル群が沈んでいく。
障害はなくなったが諸刃の剣であるハンガー・ストライキを行ったエメリン・パンクハーストは強い飢餓状態に陥る。
だが、それでも彼女の足取りは変わらない。
女性の政界進出のために戦い続けた彼女は立ちはだかる壁を晩年まで超え続けた誇り高きイギリス人だ。
丹下健三は沈んだ高層ビル群を見て、作り出したのは大屋根。
それは設計図上でしか存在しない幻の大屋根。
1970年にあるはずだった大阪万博のお祭り広場を覆う大屋根だった。
穴の開いていない大屋根に上を閉じられたエメリン・パンクハースト。
すぐに意図に気付き、大屋根から出ようとするが、巨大な大屋根の端までは距離がある。
それは丹下健三が建造物で壁を作るのに十分な時間だった。
周囲を囲まれたエメリン・パンクハースト。爆破しようにも大屋根に向かって建造物が崩れた場合、自分も下敷きになる。大地に沈める場合も、大屋根の支柱に近い位置に立っている建造物だけを沈めることは難しい。
現象を作り出せても、その後の自然沈降までは制御できないからだ。
詰んだことを双方理解した。
国立京都国際会館・大谷幸夫
「世界のタンゲと呼ばれた先生は日本で誰よりも早く世界に進出した日本建築界の先駆者だった」




