第伍八回戦!!尼将軍
第伍八回戦!!
世界代表!料理の皇帝、ジョルジュ・オーギュスト・エスコフィエ!日本代表!尼将軍、北条政子!
高いコック帽を被ったシェフが現れる。彼はフランス料理に革新をもたらしコース料理を作り上げた偉大なる料理人である。
対するは鎌倉幕府初代将軍の正妻。源頼朝亡き後、幕府を叱咤し、御家人たちと共に朝廷と戦った尼僧である。
第伍八回戦、開始!!
料理長の独唱が始まる。
「ここは厨房。ここは私の戦場。何人たりとも口出しすることは許さん。
料理とは果てなき荒野。私たちは荒野を進む永遠の冒険者だ!!」
料理人という名の冒険者である料理長は虚空に問いかけた。
「オーダーは?」
「止まらない!」
「仕込みは?」
「「バッチリ!!」」
「仕上げは?」
「「「丁寧に!!!」」」
「味は勿論?」
「「「「自信作!!!!」」」」
「さあ、調理を始めよう!!」
問いかけに反応して現れたのはかつてジョルジュ・オーギュスト・エスコフィエと共に厨房に立った料理人達。
胸を張り真っ白なコックコートに身を包む彼らは料理に人生を捧げた誇り高き冒険者である。
一流達の包丁捌きは他を魅了し不可侵の力場を形成する。料理人以外に重圧と斥力を発する力場は遠目には厨房に見えた。
料理人達の斥力に圧されながらも北条政子は毅然と立ち続ける。
何故ならば彼女もまた、人を引いた人間だからだ。
「関東武士の意地を見せなさい!!」
「おう!」
「我らは鎌倉幕府の元で共に戦った一騎当千たる武士団!!料理人如きに呑まれるな。
呑み込み返しなさい!!」
「「「オオオオオォォオォオオッ!!!!」」」
一人の女性の声の対して野太い大勢の男の雄叫びが響く!!
60キログラムは余裕である鎧を身に纏う鎌倉の武士達、御家人は北条政子の声に反応し、合言葉と共に現れた!!
「「「「いざ、鎌倉!!」」」」
野性味あふれる感性を持つ御家人は不可視の斥力や重圧を感知して手に持つ刀を振り下ろし切り裂く!
誰であろうと手出しさせまいと力場を展開し続けるジョルジュ・オーギュスト・エスコフィエ率いる料理人達。力場がなんだ。邪魔する物は全て斬り伏せると獰猛な笑みを浮かべる北条政子率いる御家人達。
埒が開かないと舌打ちをする北条政子は乗っていた輿から飛び降りると下に並ぶ御家人達に指示を出し、自身を大きく上空へ投げさせた!!
ポカンと空中の北条政子を眺めるジョルジュ・オーギュスト・エスコフィエ。
最高度に達した北条政子は落ちてくる。
落下予測地点は勿論、ジョルジュ・オーギュスト・エスコフィエの真上。
そして、力場とぶつかる時、手に持っていた刀で力場を力づくで叩っ斬った!!
バリィンと音を立てて割れる。重圧と斥力の力場。
歓喜の雄叫びを挙げる御家人達。
尼僧がしてはいけないゲス顔な笑みを浮かべる北条政子。
鳥肌が立つ料理人達。
未だ空中で落下中の北条政子を見たジョルジュ・オーギュスト・エスコフィエは料理長としての覇気を最大限に発揮し北条政子の攻勢を止めようとする。
本気の本気になったジョルジュ・オーギュスト・エスコフィエの覇気は周囲一帯に美食の空間を作り出した!!
視覚、味覚、聴覚、嗅覚、触覚、五感の全てに擬似的に作用する美食空間。
口中に美味が広がり、敵味方関係なく涎が溢れて、空腹と満腹いずれかの状態になる空間!!
北条政子もたちまち空腹になり、力が抜け倒れそうになる。
だが!ここでそのまま倒れていいのか?
このまま討ち取られてもいいのか?
いいや。いい訳がない!!
ガキィンと響く刀の音。
固い地面に力任せに刀を刺して体を支える北条政子。
相手が覇気で空間を作れたらならば自分にも出来るはず!!
血が出るほどに歯を食いしばり、思い起こすのは今は亡き鎌倉幕府!!
刀を刺した地面を起点に広がるのは1190年代の鎌倉!!
「ここは私の家だ!!!」
北条政子の叫び声によって勢いよく広がった鎌倉はジョルジュ・オーギュスト・エスコフィエの美食空間を地面ごと吹き飛ばし、ジョルジュ・オーギュスト・エスコフィエと料理人達も一緒くたにして押し退けた。
弾かれた料理人達は白かったコック服を土煙に汚して倒れ伏すのだった。
白拍子・静御前
「御台所様は嫉妬深く苛烈でした。夫である頼朝もその妾も郎党も御台所様には恐れたほどです。
正直な話頼朝にはいい気味です。」




