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破壊的日常  作者: 冴河冴
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自己嫌悪

 今日は部活がある。

 俺は寝不足でふらつきながら席に着いた。意地でも授業と部活は出ないと、関係無い人に八つ当たってしまったりする元なので、死にそうでもない限り頑張るのだ。

 いらいらするなあ、この野郎。

 次は6時間目、白ける数学だ。

 数学は復習ばっかなので睡眠時間にあてることにした。自分がちゃんと受けている授業時間を数えようとして、怖くなってやめた。

 そういやよく寝てる先輩いたな。確か去年の高3?


 先輩はもう卒業したということに、いまだに実感が湧かない。高校に行ったら先輩たちがいるような気がして、でもいるのは去年の高2の先輩たちで。その度にもういないってことを思い知って。その度に助けてもらったことを思い出して。

 俺の中で先輩たちの存在が大きすぎたんだと思う。


 先輩たち、今何してるんだろう。


 人を思いやっていたから、こんな人になりたいって思った。自然に尊敬できたから、言われなくても敬語が出てきた。先輩を尊敬しろなんて一度も言わなかったし、そんな言葉は必要なかった。

 俺もあんな風になれるだろうか。だけど……なれるわけはないよな。なれるはずがないよな。


 高3というと、まだ俺の中で保留している問題が一つあるのだけれど。

 保留と言うよりは接触を図ることも拒まれるほど嫌われたかもしれないのを、確かめるのが怖くて逃げてるだけなのだけど。

 それは人によってはくだらないと一笑に付されて気にも留めないような、そんなことだったけど、でも自分で掘った溝――やったこと――で、それは消えてくれはしなくて。あの人の性格じゃ、絶対に本気で受け取ってしまっていたのは確かで、そこまで頭が回らなくて。もう馬鹿とか死んだほうがいいんじゃないのかとしか言いようが無い話で。


 こんな感傷に浸るなんて、らしくもないって言われそうだけど。こんな後悔をするなんて、会った時には思いもしなかったのに。

 こんな世界が待ってるなんて、生まれる前に知ってたら生まれようとなんかしなかったのに。


 俺らしいとからしくないとか、よく言うけれどはっきり言ってそれがなんなのか全然わからない。

 ていうか俺自身自分の人格なんてものはあんまり知りたくない。調べなくても破綻してるか存在しないかの結果が出るのが目に見えてるから。俺は自称普通だったけど、やっぱりちゃんとした普通になりきれてない部分があるし、それどころか異質なものと認識されている節があるのは否めない。実際そうだし。


 数学の授業が始まったので、机にひじをついて眠った。

 だけどひどく虚しくて、寝れるような心境ではなかった。


 *


 俺は6時間目が大嫌いだ。終わったら家に帰らなきゃならないから。


 小学生の時は学校が嫌いだったし、家も嫌だったから毎日死んでるような気分だった。まあ今は学校好きなんだけど。ていうか俺にそんな感情を抱く権利はないのだけど。命とかくだらないって思ってた。ていうかどうでもよかった。毎日死ぬことだけを考えていた。荒んでたんだなあと思う。

 果たして今とどれほどの差があるのかは知らない。敢えて確かめたくはない。


 そもそも俺みたいな人間が、今の状況を感謝できないなんて相当の我が儘なんだけど。

 殺されることもなく生きてて、それがもう奇跡みたいなものなのに。


 幼稚園児だった自分と小学生だった自分、中学生になった自分。成長できたかはよくわからない。どれがましだったのかもよくわからない。どの自分のことも、きちんと把握できていないから。

 どの自分に戻りたいかと問われたら、俺はきっと戻りたくないと答えるだろうけど。もしかしたら自分はよくなるどころか悪化しているかもしれなくて、それをはっきり知るのが怖いから逃げてるんだと思う。

 ていうか逃げてばっかでかっこ悪いな――俺はいつだってそうなんだけど。


 家になんか帰りたくない。

 俺がどんなにそう思っても養ってもらってる事実も、夜になれば帰らなきゃいけない現状も変わりはしない。感謝できない自分が悪いんだよ。わかってる。わかってるはずなんだけど。

 部活に行くために防具袋と竹刀を担いで階段を駆け下り、最後の9段を飛び降りた。いらいらする。何でどうしようもないことが世界にはあるんだろう。そしてどうにかできるものも、何故俺は放棄してしまうんだろう。

 俺はちゃんと生きる気あるのだろうか。微妙なところだ。

 俺はちゃんとした人間になる気があるのだろうか。多分ないんだろうな。死にたいのか生きたいのかよくわからない。

 死ぬのは痛そうだし、生きるのは辛い。それが俺に与えられた罰なのだろうか。

 俺の犯した罪は一体、どれほどのものなのか。考えることや知るのを怖がってたら償いようが無いのはわかってるけど。さっきからだけどばっかりだな。言い訳しかできないのか、俺。


 部活があったけれど、もうそんな気力は残っていなかった。

 俺は階段の一番下の段に寄りかかってため息をついた。


「もういいや……だりぃ……」

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