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ちょっとセンチメンタル・・・

 大森林での初戦は随分あっけなく終わってしまった。A級の魔境から溢れた魔物達に警戒していた俺としては肩透かしを食らった感じがする。荷物には限度が有るので素材等は持って行けないが、せめて魔石だけでも回収しておこう。オーク肉はうまいという設定のゲームが有ったのだが実際はどうなのか興味は有ったが次の機会まで我慢しといた方が良さそうだ


「ローラ!さっきのは幾らなんでも危ないだろうが!!」

「にゃはは。なに、ポンタならちゃんと避けると思っての」


 抗議の声を上げるポンタさんに、いつもの様に頭を手の上で組んで答えるローラさんはどこ吹く風って感じで受け流している。確かに練習もしてないし、あんな魔法の使い方も聞いてはいなかったので、流石にポンタさんの抗議は正当だと思う


「伶と話していた時に閃いたのじゃ。螺旋の動きと言うのをイメージしたのじゃが上々の結果じゃったの」

「だから、そういう事は最初から言っておけ!」


 満足そうなローラさんと苛ついているポンタさん。とはいえ、掛け声だけで見事な連携を取った二人はなんだかんだとお互いの事を判っているのだろう。長い付き合いの中で生まれた信頼感が備わっている気がする。ポンタさんは否定するだろうけど・・・


「さて、もたもたしとると暗くなってしまうで」


 ちゃっかりオーク達が残した武器をカイとクイに乗せていたシトールさんが言う。別にあんな物を換金しなければならない程、金欠って訳でも無いだろうに・・・


「今回の戦いを基準にしちゃダメだよ~」

「はい。流石に今回は敵が間抜け過ぎでしたね」

「まっ、だからこそ、魔境から追い出されたんだと思うけどね」


 魔境へと続く道を進み始めるとタンドさんが後ろから声を掛けてくる。確かに強さだけなら、()しくは戦いの場がもっと広ければ脅威だったかも知れない。A級魔境という所は、単純な強さだけでは無くそういった戦略も練れなければ生き残れない場所なんだろう。今回は偶々だと思っておいた方が良さそうだ


「あ、そや。兄さん。ドゥルジ様からの伝言や」


 そう言ってシトールさんが安全圏から離れてこちらに近付いてくる。


「スラちゃん用の小瓶な、魔境に入る前に飲んどいた方が良いらしいで」

「?」

「なんでも、魔力や魔素の変換が上手くいく効果もあるよってさかい。早めに飲んどいたら効果も高いらしいで」


 疑問顔の俺を残してサッサと安全圏に戻ってしまうシトールさんに、この人何しに来たんだ?という疑問が湧いてくる。伝言を受けるならもう少し詳しく聞いておいて欲しい物だ・・・




 そのまま歩いて行くと、森が途切れて少し広い場所に出る。壊されてはいるが柵の様な物の痕跡も有るのでおそらく調査団が野営する為の場所なんだろう


「はぁ~やっと着いたね。ここが魔境と大森林の境目だよ」


 タンドさんが大きく伸びをしながら声を出す。木々を斬り倒して作られているその場所はお日様も照っていて、ずっと森の中を通って来ているのと比べれば解放感が有る。しかし在った筈の野営地の有り様を見ると決して油断できる場所では無い


「調査団は野営地の設置と言うか修復をして拠点にしてから、魔境の中に入っていくんだよ」

「タンドさんは参加した事が有るんですか?」

「ギルド長見習いの時に無理やりね」


 苦笑いを浮かべながら答えるタンドさんだが、要所要所で詳しい説明をしてくれる処をみると、かなりの経験をつんだんだろう。名目上の案内役の誰かさんとはエライ違いだ


「兄さん。ワイかて全部の魔境を探索した訳じゃないんやで。無茶言われても困りますわ」


 気配を察知したのか先に言い訳するシトールさんにジト目を向けてから、野営の準備を手伝う事にした。


 余計な荷物を拾いこんだせいで重たそうなカイとクイからテントなどを下していく。流石にいつもの様な料理は出来ないので、今日は保存食で夕食となるだろう。


「駄目ですよ。保存食では必要な野菜が取れません。お肉の倍の野菜をとるようにと師匠が言っています」

「し、師匠?」


 ハルカさん(天然娘)・・・いつの間に師弟関係になったのさ?その内、ムキムキマッチョなハイエルフに成るんじゃなかろうかと心配してしまう


 しかし、伶も保存食で済ますつもりが無かったのか、下拵え済みの食材を魔法の鞄から取り出して調理の準備を進めている。初級の土魔法で地面に窪みを作ると、同じく土魔法で生み出したであろう石ころを火で炙って温めていく。大きな葉っぱで包んだ食材を湿らせて窪みに並べるとその上から土を被せて終了という訳だ。後は蒸し上がるまで放っておけばいいので、野営の準備を進めながらで良いという訳だ


 こういう事も見越して準備を進めているあたり、やはり伶の女子力は高いのだろう。師匠の言う事を守ろうとはしたが準備をしていなかったハルカさん(天然娘)との違いを見せつけている


「グゥヌヌ。また差を付けられました」


 だからね、乙女がグゥヌヌとか言っちゃ駄目だって・・・


 ハルカさんが悔しがっている間にタンドさんが精霊の警戒網を造り、ブルーベルに指揮されたルビーゴーレム達が周囲を囲むように配置され壊れかけの野営地が簡易の拠点へと出来上がった。カイとクイも居るし少なくても不意打ちだけは防げるのでは無いだろうか


 窪みに被せって有った土から、ほのかに蒸気と共に良い香りが漂い始めてくる。香草の匂いと少しの肉の脂臭さが食欲をそそる。戦闘も有ったし身体がタンパク質を欲しがっているのだろうかグゥ~と腹の音が響いてしまう


 被せた土に触っても熱くない程度になってから取り出した、それを膝に乗せた皿の上で開いていく。溢れてくる汁気と香草の香りが鼻腔をくすぐる。口の中に涎が広がってしまうが食べる前に疑問を口にする


「いつの間にこんな準備してたんだ?」

「ハルカさんが獲ってきた獲物を、野営の空いた時間とかに少しずつね。」


 伶の言葉に悔しがっていたハルカさんもエッヘンって感じで胸を反らす。反らしても無い物は無いのだが、ついそこに目が行ってしまう。しかし、どちらかと言うと憐みの表情になってしまった俺に伶からの突っ込みは無かった。


 気を取り直して料理に目を向ける。中から出てきたのはおそらくウサギの肉だろう・・・場所が場所だけに魔物の肉である可能性は高い。あまり深く考えると食欲に影響しそうなので、あくまでもウサギの肉としておく。


 ともかく、いい感じに蒸し上がっている。各種香草と包んでいた葉っぱから溢れる香りがいい具合に肉の臭みを消してくれており、蒸し焼き状態で閉じ込められた肉汁が野性味を感じさせながらも、しっとりした食感を造り出していた。


 ウサギ肉は臭みが強くパサつきやすいとジビエ料理の本で読んだことが有るが、そんな感じは全くしない野性味溢れる料理として完成していた


「ウサギと言えばシチューと決まってる印象だったけど、こういう調理法も有るんだね」

「そやな。料理って言うたら焼くか煮るしか思いつかんわ」


 タンドさんとシトールさんも満足したのか良好な反応だ。地面に埋めての蒸し焼きとか、日本のアウトドアブームの時に流行ったのだが、此方の世界ではあまり知られていないようだ。まぁ普通に旅の大変さを知っている人間が、態々(わざわざ)趣味で野営の真似事をする事も無いだろうし、当たり前なのかもしれない


 少し、懐かしさも感じさせるというか元の世界を思い出すというか不思議な感覚が料理の味と共に胸に広がっていく。あまり考えない様にしているが少し寂寥感が募っているのかもしれない。スラちゃんの進化が終わったら、時間をとって伶とゆっくり話をしようかなと思いながら食事を終えたのだった





読んで頂いてる方の中にもいらしゃっるとは思いますが、私も決算期の為多忙になる事が予想されます

投稿が遅くなることが有るかもしれませんのでご容赦下さい


読んで頂いて有難う御座います

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