大森林での初戦闘
思ってもみなかった来客を迎えて、いよいよ大森林の魔境へと進む。大森林と言われるほどの鬱蒼とした森ではあるが調査の為の道が出来ているので、魔境の入口までは想像よりは楽に進めるようだ。とはいえ馬車で進める程の道ではないので荷物等は背負って先に進まなければならない
しかし、その点はゴーレム達もいるし、カイとクイも居るので俺達は然程、苦にもしなくて済む。通常の調査の時などは護衛の冒険者の他にポーターも雇って移動するので、なかなかに大変なようだ
「ほな、行きまっせ。みなさん気ぃ付けて進みましょ」
宣言は立派だが、決して先頭には立たないシトールさん。そんな事だろうと予想はしていたので元々打ち合わせてあった隊列で先に進む事にした。先頭はブルーベルが進み、ポンタさんと俺が続く格好だ。中央に伶やハルカさん、ローラさんと後衛陣が続き、殿をタンドさんとルビーゴーレム達が務める事になっている 二人並んで歩けるくらいの幅の道を警戒しつつ進んでいく
本来はタンドさんも後衛なのだが精霊の警戒網を使える事と、単純に男だからという理由だ。この世界は魔力の大小で男が肩身の狭い思いをする事が多いのだが、自称フェミニストのタンドさんは女性陣に危険が及ぶ可能性は排除する方針だと言って笑っていた
ちゃっかり、女性陣の後に続いているシトールさんは主義主張よりも身の安全が最優先の様で涼しい顔をして一番安全なポジションをキープしている。・・・後でナティさんにチクっておこう
先頭を歩くブルーベルは今回、大幅な改造を施されており、その探知機能をフルに使いながら進む姿は中々頼もしい。ポンタさんと俺とで左右を警戒しているが、おそらくその探知の網から逃れる魔物はいないのではないかと思う。
伶によると、ナティさんから貰った賢者の石を使った大改造でブルーベルは進化ともいえる成長を果たしたそうだ。創られた当時の基本設計は、ゴーレムに戦闘用と普段用の二つの思考用の魔石と学習用の魔石、合計三つの魔石を使い自立思考をする事を目指した物であった。それぞれが最良の判断をする事と知識の共有を目指した伶ご自慢のシステムだ。
ただ、あくまでも魔石を埋め込み魔力を供給する事で動くというゴーレムに過ぎない。その為、完全自立思考に至るのは学習型AIの様に時間が必要だと思われていた。
しかし、錬金術の最高の触媒である賢者の石を用いる事によって、新生ブルーベルは単なる核として魔石を使っているのでは無く、頭脳として融合した魔石での自立思考が可能になった。しかも用途別に割り当てられていた魔石が一つになり、更に今まで得た知識が統合された事により新たに簡単な魔術まで使う様になったのだ。今まで有った三つの魔石での思考を統合するようなタイムラグも無くなり速やかな動きを可能にしたブルーベル。これで「キャ○パーが裏切った!」なんて事態も起こらないのだ
身体を構成していたコランダムの単結晶で形成された鉱物も変化を起こしており、硬度を維持しつつ靱性を高めた鉱物と金属の融合体の様な物質へと変わり更に防御力の上がったブルーベルは、まさしく動く城と言った感じに仕上がったのだ
「もう、ゴーレムと言うよりも魔法生物か使い魔って感じだな」
「そうね、彼の得た情報は私自身でも知る事が出来る様になったわ。動きも滑らかだし意思疎通もスムーズになって、予想よりも賢者の石を使ってしまったけど完成度は満足のいくものだわ」
新生ブルーベルのお披露目で嬉しそうに話す伶の表情が印象的だった。
そんな彼が先を歩く訳だから、油断をする訳ではないのだが安心感をもって進んでいく事が出来る訳だ。だが、前衛でブルーベルとポンタさんが壁役で敵を押えてる間に、ハルカさんの天雷弓にタンドさんの精霊魔法。更にローラさんも秘策があると笑っていたので、壁役を熟せない俺としては出番が無くなるのではと一抹の不安も過ってしまう
スラちゃんの進化で無理を言っている俺が、みんなに守って貰いつつ魔境の奥まで進むというのは出来れば避けたい。ナティさんの稽古と貰った防具で俺も強くなっているという所を見せたいものだ。
「智大。無茶は禁止だからね」
「そうだぞ、少年。人には向き不向きが有るのじゃからな」
「スラちゃんを守ってあげて下さいね」
女性陣が俺の考えを呼んだかのように釘を刺してくる。・・・俺ってそんなに判り易いのか?
一方でその言葉に、うんうんと頷いているシトールさん。・・・魔族なんだし少しは戦おうとはしないのだろうか?女性陣の冷たい視線も気にならないようだ
若干、凹みながら進んでいると警戒の声を出したメンバーがいる。先を進むブルーベルではなく、真っ先に気付いたのはカイとクイだ。役に立たない飼い主と違って野生の勘できっちりと仕事を熟してくれる。
カイとクイのお蔭で隊列を組むのに都合のいい場所まで下がって予想される襲撃に備える。現れたのは複数のオーク達だ。邪人の一種で厳つい顔をした種族達。豚の顔を持つ姿で描かれる事もあるが、目の前にいるのは猪の様な牙を生やしたゴリラといえば良いのだろうか?もっと凶悪な感じがする。ゴブリン達とは違い知性もあり魔法等も使うし武装もする。
自分達で造っているのかは判らないが、かなり良い装備を着けている。大振りの曲刀を手に持つ者が多いが奥の方にはローブに杖と言った如何にも魔法を使いますって奴までいる。
「奥に気を付けろ、オーガも混じっているぞ。打ち合わせ通り俺達が抑えるから智大は零れた奴らを頼む」
司令塔となるポンタさんが叫ぶ。前衛をポンタさんとブルーベルが務め、俺は遊撃を担当するって訳だ。
後衛の護衛にルビーゴーレム達が半円状に広がる。背の低い彼らなら遠距離攻撃の射線を邪魔することは無い。新装備の大盾と長槍を構えた彼らはサイズは兎も角、マケドニアのファランクスを髣髴させる。
ブルーベルとポンタさんは両手で持ったハルバードで道を塞ぐ様にオークたちの突進を止める。膂力に任せた一撃を振るうオーク達の力をうまく受け流しながら、後衛陣に敵が向かわない様にその動きを止める。幸い左右は木々に囲まれており、道幅は広くないので大柄な二人が立ち止まって長柄の武器を振るえば敵の侵攻を止める事は容易だ。
タンドさんが森を迂回しようとするオーク達を草や木の枝を操って足止めする。その隙にチクチクと俺とシトールさんが攻撃する事でそれ以上先には進ませない。そして、射線が通った瞬間を見つけてはハルカさんが放つ天雷弓の矢がオーク達を貫く。あの洞窟の時の様に恐慌状態に陥らなければ制御された魔法の矢は確実にオーク達に致命傷を与えていく。
狭い場所ではローラさんの魔法は不向きだ。安全確実な天雷弓で敵の数を減らすのが、打ち合わせていた基本の作戦だった。しかし・・・
「ポンタ。右に避けろ!」
叫んだローラさんはポンタさんの動きも確認せずに魔法を放つ。普段は高い威力を誇る範囲魔法を得意とするローラさんが放った風魔法。完璧に制御された風の渦は槍となってオーク達へと進んでいく。直線で進む風の槍は頑丈そうな鎧を物ともせずに、手前の一匹で止まらず後ろのオーク達もまとめて貫く。ポンタさんとブルーベルに阻まれ渋滞していたオーク達は仲間の身体を刺し貫いても止まらぬ見えない槍に叫び声を上げる。
お返しとばかりに飛来した魔法は、しかし尻尾を増やしたローラさんが同時に張っている障壁に阻まれ突破する事が出来ない。魔力の矢と風の槍に貫かれ施す術無く倒れていくオーク達の死体を踏みしめながら、いよいよ前に出てくるオーガ達。
エルフの里で出会ったアクバルさん達もオーガだと言っていたが、彼らは知性も有り姿形も魔物と言うより『鬼』って感じだったが、今まさにブルーベルに一撃を加え様としているオーガは襤褸切を纏っただけの上半身で筋骨隆々の腕を振りかぶって石の棍棒を叩きつけようとしている
下顎から伸びた牙で若干受け口になっており、目は血走りその表情からは知性の欠片も見受けられない。オークとオーガは共生関係にあり食料を与えるオークにオーガが戦力を貸すと言われているが、目の前のオーガはオークの事など気にせずに、その攻撃に巻き込みながらただ自身の破壊衝動を満たしているだけにしか見えない
当然、巻き込まれたオーク達は這う這うの体で逃げ出しており、戦線は完全に崩壊してしまっている。巧みに攻撃を受け流す二人に苛ついているのかさらに大ぶりの一撃を加えようとした処を、ハルカさんとローラさんが放った攻撃が眉間を貫きあっけなく倒れてしまった。
後に残ったのは、踏みつぶされグチャグチャになったオーク達と二体のオーガの死体だけ
なんとも言えない初戦だったが、みな怪我も無く無事に終わったことに安堵していた・・・
女性陣と打ち込んだつもりが邪星人になってしまって何回も直してました・・・
もう少しタイピングが上手になりたいです
読んでいただいて有難うございます




