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嵐の前の静けさ?

熱も下がってすっかり体調の良くなった伶。一応余裕を見てゆっくりしてからもう一度薬師さんに往診してもらったのだが、心配性だねと苦笑いしながら太鼓判を押して貰えたので安心して旅立つ事が出来る


俺と伶が部屋に籠っている間に女性陣は王都で買い物、男性陣は細かい打ち合わせや関係各所に連絡をしたりと忙しく動いていたらしい


ちょっと荷物の増えた馬車に乗り込み王都を出る。出る時にも身分証の提示を求められたのは驚いた。出入に気を使わないと直ぐにスラムや犯罪組織に人が流れるみたいだ


王都にいる間は街中ではどんな反応が有るか判らなかったので隠れていたスラちゃんも俺の肩の上で寛いでいる。おやつ代わりに魔石を上げるとコロコロと飴でも舐める様に食べていた・・・可愛い♪


「さて、ポンタやタンド殿は方針が決まっているとして、儂らはどうするかの?」

「う~ん他の神さまの所にも行かなきゃいけないけど、ちょっと不安も有るんだよな」

「そうですね~この前みたいな戦闘はちょっと・・・」


邪人の召喚に加えブロックの様な相手では戦闘になった時に不安が残る。最初の時よりも邪人の召喚がスムーズになっており、次回も同じ様にはならない可能性が有るのだ


「みんなスキルも貰ったし、私も新たに創ってみたい物があるから少し時間が欲しいわね」

「ふむ、一度獣人の町に戻って色々準備した方が良さそうじゃの」


ローラさんが最終的に言った言葉に皆が頷く。タンドさんとポンタさんはエルフや獣人の集落やギルドを回るというので別行動だ


「それじゃ、一か月くらいを目途に一度報告を入れるよ」


いつもの様に軽~く言うタンドさんと黙って頷くポンタさんと別れ獣人達の町に戻ってきた


「ポンタからの報告もあったが何やら大変そうじゃの」


家に着いて旅装を解いていると(おさ)がホッホッホと笑いながら訪れた。後ろにお付きの獣人さんを従えた姿は、どこかのちりめん問屋の御隠居様のような雰囲気だ。信用のおける人だしある程度は情報が入っているみたい


「しかし、邪神なぞ奉じて何か益が有るのかの」

「こればかりは何とも言えません。元の世界でも悪魔崇拝とか有りましたから」


(おさ)(もっと)もな疑問に伶が答える。例え邪悪な者であってもその力に魅せられる人たちは一定数いる。その望みが善きものでは無ければ頼るものもまた邪悪なものになるのだろう


「在りがちな話では現状虐げられている者やこの世界を恨んでいる者あたりでしょうか」

「その辺りが判らん。昔は兎も角(ともかく)戦争も無く、王国や帝国も(いたずら)に民を虐げる事などない」

「はい、エルフも考え方に違いが有っても共存は出来ています」


実り豊かなこの世界ではそれほど過酷な生存競争はない。国という概念も弱く大陸に覇を唱えようなんて考えは王国も帝国も持ってはいない。種族の違いも基本的にはお隣さんって感じの付き合いだ


「臭いのは人族至上主義位かの」

「それでも然程(さほど)過激ではない筈です。彼らも世界が壊れてしまえば意味が無いでしょう」


狂信者・・・。そう狂っているのだ、そんな奴らの考え何ていくら考えても判る筈がない。邪神の教え、そんなものが有るのかは判らないが果たしてその教えに救いは有るのだろうか・・・


これ以上は情報不足だし考えても仕方ないだろう。取敢えずは一か月ほど滞在して準備をする旨を伝えると、来た時と同じようにホッホッホと笑いながらご隠居様は帰って行った。


_______________________


「うん、やっぱり伶の飯は美味いな」

「ありがと。でも褒めてももう一品って訳にはいかないわよ」


今日の夕食は鶏の煮つけだった。基本の醤油、みりん、酒で煮込んだ鶏と大根と煮卵によく味が染みている。隠し味に生姜かな?野営中や宿ではどちらかというと洋食寄りになるので、普通の家庭料理だが家で和食が出るのはやはり落ち着く。


久しぶりの和食を箸でつつきながら定番の会話をする俺と伶。あの日以来また距離が縮まった気がする


「はわわ、何だか新婚さんみたいです」


ハルカさんの言葉に照れながらも何かしらの自信の様な笑みを浮かべる伶。そんな様子をニヤニヤ見つめながらお猪口を傾けるローラさん


「そろそろ、儂とハルカは別の家に越した方が良いかの」

「な、何を言ってるんですか!」


他愛無い会話も久しぶりだ。異世界に転移させられて訳も判らないままだった数か月だが、不思議なもので我が家と言える場所と信頼できる仲間、そして美味しい料理が有ると気持ちが落ち着くものだ


食後の日本茶。元の世界にいた時は気になら無かったが、こちらに来てからはお気に入りというか無いと寂しい感じがする物になってしまった。ハルカさんには違和感が有るかもしれないがやっぱり食後は日本茶だろう


「さてと、具体的な問題点とこれからを事を考えておいた方が良いじゃろうな」

「はい、邪教徒たちが使う召喚術。ともかく数が厄介ですね」

「ふむ、この間もそうだったが攻撃の手数が問題か・・・」

「はい、ゴーレム達で抑えるのが難しいですね。この先魔法を使う魔物や耐久力の高い魔物が出てきたときの対処を如何(どう)にかしないといけませんね」


インテリ組が問題点を挙げていく。この間の様に雑魚モンスターの数で押されると下がりながらの迎撃で対処できるが、地形的に下がれない場合や遠中距離からの攻撃、魔法に強い魔物が出てきた時は押し切られる可能性がある。


「魔力にはまだ余裕があるし今回のギフトで威力も上がるじゃろうが余り近すぎると自分たちが巻き込まれてしまうからの」

「レシェフから貰った天雷弓、これをハルカさんに使って貰います」


伶の言葉にハルカさんが頷く。元々エルフは弓が得意だしギフトで『弓術』も貰った。スラちゃんの活躍で熟練度も上がったのでスキルに慣れれば有効な手段になるだろう。


「精霊さんは呼び出した後はある程度、自分で行動してくれますから私自身も攻撃に参加できます」

「ゴーレムも改良したいと思ってます。防御だけでなく攻撃力も持たせたいですね」


ハルカさんが弓で遠中距離をサポート、壁役のゴーレム達が数に対処できればローラさんの魔法も生きてくるだろう


「後は、ブロックの様な奴への対処じゃの」

「そこは智大に頑張ってもらうしかないですね。その辺は少し考えが有ります」

「よし、それではこの一か月でどこまでできるか判らんが、各自準備を進めるとするかの」


最後にローラさんが締めて食後の会議は終了となった。

先ずは出来ることをするしか手はない。邪教徒たちがどのような対応を取ってくるか、ポンタさん達の調査も含めて対処していくしかない、その時に少しでも動けるように準備しておくしかないのだから・・・


いつも読んでいただいてありがとうございます

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