二人の距離
邪教徒達の動向を探るための調査団は無事結成された。教団側は人員の派遣や事務方のみで、ほぼ関与せず実質の調査はポンタさんとタンドさんで回す為、任せておいても心配はないだろう。
「それでは皆様、何か詳しい事が有れば改めて。あっ、ポンタ様はミデア様へのご報告はなるべく早めにお願いします。」
「う、うむ。まぁ善処する」
イストさんの言葉にミデア様に会うのは嫌じゃないけど教会本部にまで一人で来てお茶会じゃあ躊躇もするのかポンタさんの返事は歯切れが悪い。そんなポンタさんを両手を頭の上で組んだローラさんがニヤニヤしながら見ている
「それじゃあ宿に移動しちゃおうか」
タンドさんの言葉で皆が移動し始めるが、ひとりフラフラしている。どうも伶の様子がおかしい
「伶、どうかしたか?」
「ふぇ、だ、大丈夫。ちょっと立ち眩みしただけ」
そう思えば野営地を出たあたりから伶が静かだった。てっきり苦手なタンドさんから距離を取っていたからだと思っていたが、顔も赤いし眼も少し虚ろだ。
額に手を当ててみると明らかに通常よりも体温が高い
「伶、熱が有るじゃないか」
「どれ、少年直ぐに宿に連れて行け。誰か薬屋は知らぬか」
「あ、私の荷物の中に熱冷ましの薬草が少し有りますよ」
熱を意識してしまい更に具合が悪くなった伶を抱きかかえ馬車に乗り込む。ローラさんが魔力を込めるとゴーレムが起動して宿へ向かう
伶は俺の膝を枕にして横になった状態だ。必然的に座席が少なくなってしまったがタンドさんがポンタさんと共に御者席に移ってくれたので問題ない。車内ではハルカさんが心配して手を握ってくれている
宿の前に馬車が到着すると、俺は伶を抱えて主人に事情を話し部屋の鍵を受け取る。気を利かせてくれた主人は昨日泊まった部屋ではなくシングルの部屋を一つ用意してくれたので直ぐに移動してベットに寝かせる
「少年、一度汗を拭いて着替えさせる。その間に食事をとってこい」
暫くすると扉をノックする音がして、薬を煎じて持ってきてくれたハルカさんとローラさんが着替えを持ってきてくれた。言われた通り一度ローラさんに任せて部屋を出る
食堂に向かうと男性メンバーが丁度食事をとっているところだった。
「智大、様子はどうだ?」
「ええ、今はローラさんとハルカさんが付いていてくれます」
「ふ~ん疲れが出ちゃったかな?」
二人はさも大した事ではない様に努めて明るく言ってくれる
「後で薬師が往診に来てくれます。腕の良い方ですから心配はいりませんよ」
軽めのスープとパンを手に宿の主人がそう言ってくれる。
この世界には医者という物はいないので薬師が症状に合わせて薬を調合してくれる。怪我の治療や解毒は魔法で解決するのだが、病気を治す魔法は存在していない。
特に発熱に関してはそれ自体が自己免疫の結果なので無理に魔法で解決しても原因を取り除かなければ同じことだろう。タンドさんの言う通り疲れからくる免疫力の低下で風邪でもひいたのだろう。
「判ってはいるんですけどね。無理をさせ過ぎたと思うとちょっと・・・」
半分強がりで無理やりそう答えてみたのだが、この世界の医療を考えるとかなり心配になる。道場で鍛えていた俺と違って伶は体力のある方ではない。図書室で本を読んでいるのが似合う様な根っからの文系なのだ。そんな子が行き成り戦闘や馬車での旅、その他にも研究で夜更かししたりしていたのだ。体調を崩してもおかしくはない
「取敢えずは落ち着いたかの」
「はい~薬も飲んでくれたので一先ずは大丈夫です」
心配で味も判らないままの食事を終えた頃に女性陣が戻ってくる。頭を下げる俺に片手をヒラヒラさせて答えてくれるローラさん。思えばすっかりお姉さん的存在になっている
「後で薬師も来てくれる様じゃが、たぶん疲れじゃろう。ゆっくり寝て体力が戻れば心配はないじゃろ」
「私も同じ意見です。呼吸も落ち着いてきましたから後で様子を見に行ってあげてください」
いつもは食事をとり終わると部屋に移動する事が多いのだが、今日はみんな傍にいてくれる。俺が塞ぎ込まない様に気を使ってくれているのだろう。ローラさんの挑発にもポンタさんはむきに成り過ぎず明るく答えている。ハルカさんは相変わらずの天然だけど・・・
少し会話が空いた時に伶の様子を見に行くと言って食堂を離れさせてもらう。先ほど薬師の方も往診に来てくれて皆と同じ見解だった。一応二~三日様子を見て熱が下がらなければもう一度来るそうだ。ただ、薬を手渡しながら大丈夫だと思いますよと笑顔で言いながら帰って行った
伶が眠るベットの横でその寝顔を見つめる。熱冷ましに額に置いて有る布を洗面器に浸し冷たい物に変えてやりながら色々な事を考えている。幼かった頃や大きく成ってから熱を出しても家族がいた為これほど心配する事は無かったが、今はこの世界に二人しかいないのだから少しでも傍にいてあげたかった。
ハルカさんの薬も効いてきたのであろう呼吸はだいぶ落ち着いてきた。まだ少し顔は赤いが苦しさはだいぶ引いたのでは無いだろうか。そんな事を考えながら見つめていると伶が薄っすら目を開く
「ん、ごめんね。心配かけて・・・」
「気にしなくていいよ。今はゆっくり休んで」
目が覚めた伶の体温を確認するように頬や首筋に手を当てる
「ふふ、気持ちいい。いつぶりだろうね、小学校の時かしら?」
「そうだな」
伶が家に来て間もない頃だったか、インフルエンザに罹った伶が心配で部屋に忍び込んだことが有った。うつるから部屋に入っては駄目と言われていたのだが心配で親の目を盗んでは様子を見に行っていた。案の定しっかりうつってしまったのだが母親から看病ではなく拳骨を貰ったのを覚えている
少し元気が出たのだろうか思い出話をしながら笑顔が出てくる伶に安心する。額の布を変えもう一度体温を確認すると、部屋から出ようとしていた気配を察知したのか伶が俺の服の袖を掴む。
「ちょっと一人は寂しい・・・」
恥ずかしいのか布団を顔まで上げて眼だけを出した状態で呟く。照れて顔が赤いのか熱のせいなのか、潤んだ瞳で俺を見つめる伶。
そっと顔を近づけると布団から顔を出し黙って眼を閉じる伶。
軽く口づけをして頬に手を当てる
顔を少し離して微笑み合うと額を付けお互いに抱きしめあう
「また、うつしちゃうかも」
照れ隠しに言った伶にもう一度軽く口づけをして布団を掛けてあげる
椅子をベットの近くまで引き寄せ手を握ってあげると安心したかのようにもう一度眠りに入る伶
初めての口づけを交わして愛おしさの増したその寝顔をずっと見つめていたいと思った
たまにはいちゃラブさせてみました。
ネタ元は某漫画です。かなり変えたつもりなのですが判った貴方は同年代です
パクリではなくオマージュになっていてくれたらいいなと思ってます
ご意見ご感想よろしくお願いします




