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暴力の連鎖

 古山の死は、テロリストたちに大きな精神的ダメージを与えたようだ。


 つい数分前まではいきり立って俺たちを殺そうとしてきた彼らは、古山の遺体を見るや、急にその勢いが弱まった。


 立ち止まる者。

 逃げだそうとする者。

 戦意喪失した者。


 そんなテロリストがそこかしこに現れている。


 そりゃそうだ。

 頼みの綱たる古山章三が破れただけではない。

 カンストという言葉では足りないほどに、俺は成り上がってしまった。


 いくらHPが残りわずかといえども、そのわずかな数値すら削り取ることはできないだろう。古山の魔法ですら、俺のHPはびくともしなかった。


 戦いは終わった。

 古山が敗れたいま、もうテロリストに勝ち目はない。佐久間祐司たちの登場により、戦力的にも俺たちのほうが明らかに有利だ。


 俺は膝をつき、ぐったりとうなだれた。


 激しい戦いだった。これまでも何度か苦しみは味わった。だが古山はやはり想像以上の強敵だった。


「さ、佐久間さんが二人いる……」


 テロリストのひとりが呟いた。


 二人の佐久間は複雑な表情で互いを見つめあっていたが、数秒後、テロリストに向けて言い放った。


『これですべてが終わりだ。おまえたちはどうする』


 その言葉への返答はなかった。

 俺がすべて復旧させたとはいえ、奴らもまた、無関係の人々を殺し尽くした犯罪者。そのまま放ってはおくのはまずいだろう。


 だが。


 俺はふらふらと立ち上がった。

 視界に表示されているWARNINGという文字をなかば冷めた気分で眺めながら、俺は静かに告げた。


「もう……わかっただろ? 傷つけられて、また傷つけることの無意味さが」 


「…………」


 またもテロリストたちは答えない。いや、答えられないのだろうか。


 いじめの仕返しとして、またいじめっ子に暴力を振るう。

 そんな憎しみの連鎖など、俺はもう見たくない。


「ひとつ、聞かせてくれ」


 とテロリストのひとりが言った。


「さっきの《神》のスキルで……いじめっ子どもも蘇ったのか?」


「ああ……」


 俺は思わず唸った。

 スキルの治癒対象は、古山によって被害を受けた万象一切を蘇生させること。


 であれば、かつて彼らを苦しめ、そしてテロ行為にすら駆り立てた、そのいじめっ子たちも生き返っている可能性が高い。


 それを告げると、テロリストは

「そうか……」

 と重々しく呟いた。


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