【転章】 古山章三2
吉岡勇樹。
リベリオンのナンバー2だった佐久間祐司を殺し、その後は姿をくらました男。
彼は最大の不確定因子だった。
リベリオンのメンバーでもないのに魔法が使えたし、なによりその成長速度が尋常ではない。いつか僕すらも追い抜いてしまうんじゃないかと感じるほどに。
そんな男が、いまになって姿を現した。いくら探しても見つからなかったあの男が。
いったいなぜ。
まさか今更僕に戦いを挑もうというのか。
「あの映像が、急にいろんなところで現れて……古山さん、なにか知りませんか!」
知らない。知るわけがない。
僕も秘書も、ただ無言で不可解な映像を見つめ続けた。
吉岡も真顔のままなにも言わずに、片腕だけをこちらに突き出す。
魔法を発動させる気だ。
しかしこれはあくまで映像だ。
魔法を使ってなにをしようというのか。まさか映像越しで僕を攻撃するスキルでも持っているのか。
僕はさっと立ち上がり、油断なく身構える。
しかし、次の瞬間に起きた現象は、僕の予想をおおいに裏切るものだった。
「ば、馬鹿な……」
構成員が窓の外を見て声を漏らす。
つられて僕も視線を合わせると、そこに驚きの光景があった。
街が、復旧している。
リベリオンによって倒壊し尽くされた街並みが、優しげな光の波に呑まれたかと思うと、まるで元通りの姿に戻っていくのだ。
燃えていた炎も。
倒れていた木々も。
すべてが、光の波に飲み込まれ、姿を本来の姿に戻していく。
視線を戻すと、突き出された吉岡の腕から、その光の波が発せられているのがわかる。
治しているのだ。吉岡が。日本を。
だが、あまりにこの能力は強力すぎる。どの程度の範囲まで復旧できているのか知らないが、すくなくとも、窓の外に広がる風景はすべて元に戻っている。
『これが俺の最新スキル、《神》だ。おまえの思い通りにはさせない』
スキルーーだと?
次の瞬間。
ふいに目の前に、大勢の人間が現れた。
「な……なん……?」
吉岡勇樹たちだ。
吉岡勇樹ひきいる五十人近くの人間が、いま、僕の目の前に転移してきた。




