無双の始まり
俺たちの登場は、テロリストどもに大きな衝撃を与えたらしい。
そりゃそうだ。
いきなり自分たちとまったく同じ人間が現れたら、誰だって驚愕する。
テロリストのその隙を、リベリオンは確実に突いた。
なにしろ、属性の違う魔法ならば、ダメージが二倍になるのだ。わけがわからないまま散ったテロリストも多いだろう。
そのなかで、一番活躍しているのはやはり佐久間祐司だった。
「佐久間……おまえ、死んだんじゃないのか?」
「なぜ俺たちの邪魔をする!」
テロリストの叫び声に、佐久間はなにも答えない。代わりに両腕を天に掲げ、魔法を発動する。
その両手が蒼いきらめきに包まれる。あまりの眩さにテロリストが目を細めたーーその瞬間。
佐久間の片手に剣が握られていた。
あの技には俺も見覚えがあった。
魔力を凝縮させ、ひとつの剣を生成するスキルだ。
かつて俺が相対した佐久間祐司も使っていた。
しかしながら、俺の記憶に残っている《剣》とは色が違う。亡くなった佐久間が使っていた剣は金色に輝いていたのに対し、いま彼が持っているものはーーすべてを飲み込みそうな漆黒の色。
佐久間は刀身をゆっくり舐め上げながら、テロリストに鋭い視線を向けた。
「ふふ、さっきから佐久間さん佐久間さんって失礼しちゃうね。悪いけど、人違いさ」
瞬間。
佐久間がすさまじいスピードで走り出し。
周囲にいたテロリストを一刀のもとに斬り倒した。鮮血と悲鳴だけがあたりに飛び交う。
俺は思わず唸った。
さすがだ。かつての俺も、佐久間の片手剣スキルにはかなり苦戦させられたものだ。
リベリオンの人数はこちらのほうが少ないが、こちらにもチート級の味方がいる。
それだけで心強いものだ。
チートといえば。
育美もかなりの奮闘っぷりを見せていた。
レベルそのものは敵とさして変わらないが、やはり《空間転移》が使い放題なのだ。正直言ってずるい。
攻撃しては転移し、また攻撃しては転移し……それを繰り返すうちに、敵の数を確実に減らしていった。
「おいおまえ、なにボケっとしてるんだ! 俺たちをナメてるのか!」
ふいに脇から声をかけられた。
振り向いてやると、テロリストのひとりが俺に向けて片手を突きだしているところだった。俺に攻撃をするつもりか。
俺は肩をすくめて言った。
「いや、ナメてはないけどさ。攻撃するだけで無駄だと思うぜ?」
「き、貴様ぁ……!」
テロリストが憎らしそうに歯ぎしりをした、その瞬間。
奴の手から、光の可視放射が放たれた。
逃げるでも、防ぐでもなく、俺は棒立ちの姿勢を崩さなかった。
可視放射が俺の身体を包みこむが、正直痛くも痒くもない。MD9999の俺にこんな攻撃は効かない。
可視放射が消滅すると、俺は自分の腹をトントンと叩いてみせた。
「このへんがすこしチクってしただけさ。どうだ、俺のステータスを見てみろ」
「あ……あ……そんな……」
戦う前に俺の強さを見ていなかったのか、数値のカンストしたステータスを見て、テロリストは尻餅をついた。




