表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/97

なんて薄い見返りだ

「なんだなんだ!」


 爆発音を聞きつけたリベリオンの構成員が、がやがやと騒ぎながらやってくる。


 なかにはいまタワーに来た者もいるようで、俺たちはあっという間に五十人ほどの構成員に囲まれた。


 彼らの視線の先には、古山章三がいるはずのタワー頭頂部。


 地面に落ちた衝撃により、跡形もなく崩れており、煙までが立ちこめている。


「これは……おまえたちがやったのか?」


 その声に振り向く。


 直後、俺は思わず息を詰まらせた。


「さ、佐久間……!」


「光栄だな。君みたいなリア充が俺の顔を覚えてるとはね。……で、これはおまえの仕業か」


 そうか、と俺は思った。

 同じ佐久間祐司でも、この世界の彼とは話したことがない。つまり、彼にとって俺はまったく赤の他人だ。


 俺はなんとか平常心を保ちながら答えた。


「そうだ。俺の魔法だ」


「ありえない……と言いたいところだが、なるほど。そのレベルならありえるか」


 佐久間はひとりでに頷くと、ここにいる皆が気になるであろうことを聞いてきた。


「古山さんはどうした?」


「わからない……だが、この様子じゃ……」


「……そうか」


 あくまで冷静に答える佐久間だが、まわりの者はそうではなかった。


 リーダーを失った怒りに駆られてか、全員が俺に罵声を浴びせてくる。死ね、リア充なんかが俺たちに関わるな。


 その悪罵に、彩坂が反論の素振りを見せた、その瞬間。


『落ち着け』


 聞き覚えのある声が、はるか天高くから降り注いだ。俺を含め、この場にいる全員が空を見上げる。


 あれは……

 俺は無意識のうちにあんぐりと口を開けていた。


 ーー古山章三。

 彼が、闇のオーラを身にまといながら、ゆるやかに落下してくる。


 覚えている。

 俺が初めて古山と戦い、果てなく飛ばされたとき、落下による衝撃から自身を守るために使用した魔法。


 なるほど。


 たしかにあれを使えば、たとえ高所から落ちても死にはしない。かつての俺がそうだったように。


 ふわり、と。

 憎たらしいほど華麗に、古山は地面に足をつける。おお……というどよめきが、周囲から発せられる。と同時に、彼を包んでいた漆黒のオーラも消滅する。


 俺は改めて戦闘の構えを取りながら言った。


「無事だったか」


「無事なもんか。ちょっとかすったよ」


 見れば、たしかに微量ながら古山のHPが減少している。

 だが、それもごく少量。多大なMPを消費した割には、あまりに安すぎる見返りだ。


 古山は壊れた頂上部分を見上げながら、

「あーあ」

 と呟いた。

「あれくらいすぐに修復できるけどさ。吉岡。もうおまえだけは許さないよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ