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異世界転移した恩恵でハーレムフラグが

 やはり、こうしていじめられっ子の立場に戻ってみると、古山の苦しみがよくわかる。


 スクールカーストに関わらず、俺たちは同じ人間のはずだ。なのに俺を「ひとりの人間」とも見なさず、玩具同然に扱い続けてくる。


 そうして日常的にいじめられている人間が、なにかの拍子に常識を超えた力を身につけたとしたらーー


 その先は考えたくもなかった。


 俺とても、さきほどは部員たちの自転車を蹴っ飛ばしてしまった。それくらいは可愛いものかもしれないが、俺だって古山と同じ道を辿ってしまっていたかもしれないのだ。


 ーー答えを見つけたい。

 最悪の魔法使いと呼ばれる古山章三。

 彼と対立するに足る、自分なりの動機を。


 ひそかな決意を胸に、俺は校舎に足を踏み入れ、教室目指して廊下を歩く。


「あっ」

 前を歩いていた女子生徒が声をあげた。プリントを落としてしまったらしい。しかも窓から吹き込む風のせいでかなりの距離を飛んでいっている。


 単なる親切心のつもりで、俺はそのプリントを拾いあげ、女子生徒に届けた。


「あいよ」

「あ、ありがーーって、吉岡じゃん」

「ん?」


 よく見てみると、その女子生徒は俺のクラスメイトだった。当然のごとく名前も覚えてないし、顔もおぼろげでしか記憶に残っていないが。


「なんだ、拾っちゃ悪かったか」

「いや、そういうわけじゃないけどね。なんかちょっとキャラ変わってるなーって」

「ーーあ」


 そういえば、花のリア充生活を送った影響か、以前と比べてはるかにコミュニケーション力が伸びている。女子の目を見て会話するなんて、前の俺では逆立ちしてもできなかったのに。


「わ、悪い。変な思いさせてたら謝るよ」

「いやいや」


 恐縮する俺に、女子生徒はくくっと笑ってみせた。


「そういう吉岡、私は嫌いじゃないよ。ま、リア充には調子に乗ってるって思われるかもしれないけどーー。とりあえず、ありがとね」

「お、おう」


 言われてみれば、女子生徒に対して親切をするなんて、以前の俺なら考えられなかったことだ。


 自己中だからと言われればそれまでだが、単に、その親切心が仇になってまた気持ち悪がられると思っていた。プリントを拾うにしても、女子生徒の物に俺なんかが触れたらきっと嫌がられるーーずっとそんなふうに考えていた。


 だからきっとあそこまで驚かれたんだろう。


 活きている。異世界でのリア充生活が。

 しばらく突っ立っていると、朝のホームルームの開始を告げるチャイムが鳴り響いた。


 やべ、早くしないと遅刻する。

 俺はいったん思考を中断し、自分の教室へ向けて駆けていった。


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