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クーデターから逃げ延びた王女ですが、身分を捨てて幼馴染と生きることにしました~オルゴールのゆくえ〜  作者: 冬木ゆあ


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第1話 クーデター

前日譚の短編のご紹介

さよならのオルゴール

https://ncode.syosetu.com/n8519jp/


「クーデターです! お逃げください」


 突然扉が開き、ニコラスの護衛騎士のポールがそう言いながら飛び込んできた。

 室内でお茶をしていたリリアンとニコラスは弾かれたように立ち上がり、机に置かれていた紅茶のカップが床に落ち、割れた。最初に動いたのはリリアンの護衛兼侍女のケイティだった。リリアンにローブを着せ、リリアンは慌ててかばんを持った。

 ニコラスはリリアンの手を引き、室内から出た。遠くから喧騒が聞こえてくる。

 ポールはニコラスたちに背を向け、わずかに振り返った。


「わたしはここで足止めをします。行ってください」


 ニコラスは青い瞳をポールに向けた。


「死ぬなよ、ポール。また必ず生きて会おう」

「……ニコラス殿下、どうかご無事で」


 ニコラスはリリアンの手を引きながら、また走り出した。リリアンは慌てて先を走るニコラスに声をかける。


「ニコラス殿下、この先は行き止まりです」


 けれど、ニコラスは構わずに先に進んだ。行き止まりの壁まで行くと、壁の石を数か所叩いた。すると、隠れ扉が開き、その先は階段になっていた。リリアンが驚いていると、ニコラスは辺りを見回し、人目がないことを確認してから中に入った。扉を閉めると、中は薄暗い。所々、明り取りのためにくりぬかれているようで、外の明かりが差し込んでいる。

 ニコラスは階段を下りはじめた。その後を、リリアンとケイティがついてく。リリアンはニコラスの背中に尋ねた。


「隠し通路ですか?」

「入り口と出口は王族しか知らない。だいたいの場所は察しがつくだろうから、出口を張られてなければいいが……」


 そこからは会話はなく、ただひたすらに進んだ。途中、真っ暗な道を進み、リリアンは恐怖に押しつぶされそうになりながら、前を歩くニコラスの服を掴んだ。

 出口は城の外壁の枯れ井戸で、縄はしごを上って先に出たニコラスが、リリアンとケイティを引き上げた。


「いたぞ! こっちだ!」


 ニコラスは、はっと振り返った。ケイティはリリアンとニコラスの前に出て、腰に差した剣のグリップを掴んだ。


「ここはわたしにお任せください。ニコラス殿下、リリアン様を頼みます」


 ニコラスはうなずき、リリアンの手を掴んで走り出した。リリアンは茶色の瞳に涙を浮かべ、ケイティを振り返る。


「ケイティ! いやよ、ケイティ!」


 ケイティはそんなリリアンに微笑み、正面からやってきた男たちを食い止めるべく、剣を抜いた。

 すすり泣くリリアンを連れ、ニコラスは走った。

 森に入ると、雨が降りはじめ、やがて本降りになった。二人は洞窟を見つけ、そこでいったん休憩をとることにした。

 春先でまだ肌寒く、濡れたリリアンは震えている。栗色の長い髪を軽く絞って、洞窟の壁を背に座った。長く走っていたせいで息が乱れ、苦しげに喘いでいる。ニコラスもリリアンの正面に座り、息を整えていた。

 リリアンは洞窟の天井を見上げ、涙を流した。


 ――すべてはあのときから変わってしまった。


 一年前のちょうど同じ季節のことを思い出していた。

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