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あべこべ世界でのランナー ~マラソン日本記録保持者が女性過多で貞操観念も逆転した世界線に転移し無双する~  作者: アサノ霞
第9章 新座での保護生活 編

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第80話 晴れ渡る空と、終わりを告げた保護生活

7月30日(月)

あれから約二週間が経過した。


 この日の朝、連絡係としていつも迅速に動いてくれている新妻の椿姫が、少し誇らしげな、そして心底安心したような表情で僕たちの前にやってきた。


「天馬、皆様! 本省から正式な連絡が入りました。『白薔薇の喪失事件』に関与した残党および容疑者の逮捕が完了いたしました!」


「本当に!?」


僕が驚いて問い返すと、椿姫は「ええ!」と強く頷いた。


「政府および関係省庁は、これにより事件が完全に終息したと判断いたしました。したがって、本日をもって皆様の新座駐屯地での保護生活は解除となります!」


「「「「やったーっ!!」」」」


応接室に歓声が響き渡った。

「福生基地」にて同じく保護生活を送っていた、僕の種を宿した木村さんと他5名の女性たちも、本日同時に保護が解除されるという。


 今回の事件での最終的な逮捕者は、なんと合計412名にも上った。驚くべきことに、その全員が女性だった。

 

 後に奈月と美月の祖母である月子さんから聞いた話だが、腐敗しきっていた組織の解体と、新たな管理システムの再構築の裏には、千代乃を筆頭とする「JISS(ジス)」が暗躍していたらしい。

わずか1ヶ月そこらで国家レベルの組織改編をサラッと実行してしまうなんて、一体どんな裏技や人脈を使ったのだろうか……。恐ろしすぎるので、僕は敢えて深く聞かないことにした。


 朝食を終えて8時00分より僕たちはお世話になった宿舎の各部屋と公共場所の清掃をする。


「よし! ひと月半もお世話になった宿舎だ。午前中いっぱい使って、ピカピカに掃除して退去しよう!」


「「「はいっ!!」」」


僕の提案で、妻たちや婚約者の蘭、北川さん、そして護衛たち全員での大掃除が始まった。


「あっ、愛理! 奈月! 雑巾がけは僕がやるから座ってて! 妊婦さんは重いものを持ったり、かがんだりしちゃダメ!」


「ふふ、天馬ったら過保護ね。私はまだお腹もそんなに大きくないから大丈夫よ?」


美月がそうほくそ笑む。


「ダメダメ! 奈月も愛理も、美月も千代乃も、拭き掃除くらいにして無理しないで!」


バタバタと慌てる僕を見て、愛理たちは「もう、天馬さんは優しいんだから」と嬉しそうに顔を見合わせ、大人しくパフで棚を拭く作業などに回ってくれた。


 一方、ここ数日体調が優れないクリスは、ソファーでゆっくり休んでもらっていた。

風邪の症状はないものの、体がどこか怠く、胸や乳房に張りがあるのだという。


「天馬、ごめんなさい……せっかくの大掃除なのに手伝えなくて」


「気にしないで。熱はないみたいだけど、体がだるいなら横になってて。これからみんなで定期健診に行くから、そこで原因がわかるよ」


「ええ……ありがとう、天馬」


申し訳なさそうに微笑むクリス。もしかすると……妊娠の初期症状かもしれない。


そんなクリスにブランケットをかけながら、僕はふと、この二週間の「夜のローテーション」を思い出していた。


夜のしとねは、朱里 ➔ 蘭 ➔ 椿姫 ➔ 葵 の順番で共にしてきた。

(※クリスはあの日以来、順番を朱里と蘭に譲って辞退していた)


 テストが終わり、晴れて僕との夜を迎えることとなった婚約者の蘭は、舞い上がりすぎてまるでサカリのついたメス猿のようだった。変なアダルト知識ばかりが先行していて大暴走していたが、僕は落ち着いて彼女の全てを受け止め、しっかりとリードしてあげた。もちろん、蘭はまだ現役の大学生なので、避妊だけは徹底させてもらったけれど。


 椿姫との夜は、互いに情熱的だった。こちらに転移してきてから短い期間ではあったが、純粋な「恋愛」を経て婚姻を結んだこともあり、互いの身体と心が激しく燃え上がった。


 朱里は相変わらずの「性欲マシマシ」の暴走系だったのだが、少しは落ち着く様子も見られた。

葵も朱里と同じようにグイグイと積極的に攻めてくるタイプだった。二人ともエネルギーに溢れていたが、僕は夫としての誇りを持って受け止め、夜の愛を深め合ったのだった。


~~~~~~~


午前中の清掃を終えた11時——。


 駐屯地内の医療施設にて、東相大学病院から派遣された産婦人科医による妻たちと蘭の定期健診、そして僕自身の健診が同時に執り行われた。


僕の健診を担当してくれたのは、駐屯地の女性軍医さんだ。


「ええと……甲斐田さん……血圧、脈拍、筋肉量、心肺機能……すべてにおいて常人を遙かに凌駕する完璧な数値です。……か、解診とさせていただきますね!」


「ありがとうございます、軍医さん。お手数をおかけしました」


相変わらず僕の存在に異常なまでに恐縮し、緊張でガチガチになりながらも手際よく健診を終えてくれた軍医さんに深くお礼を言う。


そして――。


僕が健診を終え、隣の産婦人科の待合室へと向かうと、そこには信じられないほど温かく、そして奇跡に満ちた光景が広がっていた。


「天馬……っ!! 天馬ぁ……っ!!」


扉を開けた瞬間、ソファーから立ち上がった第三夫人のクリスが、大粒の涙をボロボロと溢れさせながら、僕の胸の中へと一直線に飛び込んできたのだ。


「クリス!? どうしたの……っ!?」


驚いて抱きとめると、後ろにいた東相大学病院の産婦人科医の先生(女医)と、担当官の北川さんが、目元を熱く湿らせながら優しく微笑んでいた。


「甲斐田さん、おめでとうございます。採血および尿中HCGの精密検査の結果……クリス様の妊娠が確認されました」


産婦人科医の先生は僕にそう言った。


「えっ……! 妊娠……!?」


「はい! まだ週数が早いためエコー画像で胎嚢たいのう(胎児)を直接確認するには至りませんが、数値上、確実に甲斐田さんのお子様を宿していらっしゃいます!」


「クリス……っ!」


抱きしめているクリスの肩が、しゃくりあげるように大きく震えていた。彼女は僕の胸に顔を埋めたまま、涙声で必死に思いを溢れさせる。


「天馬……! 私、私ね……っ! あなたの子どもを授かれたの……っ! 本当に……本当に嬉しい……っ!!」


クリスは感情を抑えきれずに何度も何度も言葉を重ねた。


「あの……ここ数日、体がだるくて、おっぱいも張って痛かったから……もしかしたらって、ずっと祈ってたの。朱里さんや蘭に順番を譲っていた間も……ずっと、天馬との命が私の中に宿ってくれていますようにって……っ!」


「クリス……ごめんね、気づいてあげられなくて。ありがとう、本当にありがとう……!」


「謝らないで、天馬……っ! 私ね、世界で一番幸せよ! あなたの妻になれて……こうしてあなたとの新しい命をこのお腹に宿すことができて……心が、胸がいっぱいで破裂しそうなの……っ!」


蒼い瞳からボロボロと溢れ落ちる大粒の嬉し涙。彼女は僕の首に細い腕を固く巻きつけ、愛おしそうに何度も何度も僕の頬や唇に熱いキスを贈ってくれた。


「クリス、本当におめでとう……っ!」


「ふふ、これで我が家もさらに賑やかになるわね。クリス、身体を大切にね」


千代乃と愛理、奈月たち先輩ママの妻たちも、まるで我がことのように涙を浮かべてクリスを取り囲み、優しくその肩や手を撫でて祝福した。


「天馬さん……おめでとうございます」


北川さんも目元をハンカチで拭いながら、担当官として、そして一人の女性として、深く感動した様子で深々と頭を下げてくれた。


「ありがとう、みんな……! クリス、今日からは絶対に無理をしちゃダメだよ。僕が全力で君と赤ちゃんを守るからね」


「ええ……! ええっ、天馬……! 私とこの子を、ずっと愛してくださいね……っ!」


 愛する妻が僕の子を宿してくれたという無上の喜びと感謝で心はいっぱいだ。

昼の柔らかな光が差し込む駐屯地の病院で、僕たちは新たな家族の命の誕生を心から祝福し、固く抱き合い続けるのだった。


~~~~~~~


 昼食を終え、荷物をまとめた僕たちは駐屯地司令室へと向かった。応接室で出迎えてくれたのは、この駐屯地を統べる陸軍少将の女性だった。

僕たちが深々と頭を下げ、これまでの感謝を伝えると、司令は温かい眼差しでそっと首を振った。


「甲斐田さん、そしてご家族の皆様。礼を言うのはこちらの方です。皆様が滞在されたこの一ヶ月半、我が駐屯地の隊員たちは、男女問わず『家族の在り方』について非常に大きな感銘を受けておりました」


「僕たちが……ですか?」


「ええ。特に男性隊員たちの変化は目覚ましいものがあります。『甲斐田さんのように、もっと妻や家族を大切にしよう』という意識が芽生え、家庭内がとても円満になったという報告が後を絶たないのですよ。甲斐田さんの、旦那様(妻)たちに対する真摯しんしな姿勢が、彼らの心を動かしたのでしょう。……また、いつでも遊びに来てください。駐屯地の扉は、常に皆様のために開けておきます」


 司令から贈られた予想外の賛辞に、僕と妻たちと北川さんと護衛たちは顔を見合わせ、自然と笑みをこぼし合った。

僕たちの当たり前の日常が、この駐屯地の男性隊員たちの意識を変えていた。その事実が、たまらなく嬉しかった。


13時30分 ――。

 駐屯地指令に挨拶を終えてグラウンドへ出ると、そこにはラグビー日本代表選手たち、国防軍体育隊長距離の選手たち、そしてレスリング部の面々が集結していた。


「天馬兄さ〜〜〜んっ!!」


ドサッと激しい音を立てて、義妹のリリカが僕の胸に飛び込んできた。


「うわっ、リリカ!?」


「嫌だ嫌だ! 天馬兄さんが行っちゃうなんて寂しいよ〜〜っ!」


鼻水と涙で顔をグシャグシャにしながら泣きじゃくるリリカ。僕は苦笑いしながら、その頭を優しく撫で回した。


「泣かないのリリカ。東相大に戻れば、またすぐ合えるじゃないか」


「うう……だってぇ〜〜っ!」


 その横では、義弟の嫡妻である志田悦子さんが、僕とクリスに向かって深々と頭を下げていた。


「天馬兄さん、クリスねえさん。短い間でしたが、本当に素晴らしい指導フィジカルをありがとうございました。日本代表の誇りにかけて、必ず結果を出してみせます!」


「志田さんなら絶対にやれる! 応援してます!」


僕はそう言ってから、志田さんとガッチリと握手をする。


そこへ、ラグビー日本代表のイノウエ監督とナカムラヘッドコーチ、体育隊長距離の監督、そしてレスリング部の監督たちが歩み寄ってきた。


「甲斐田トレーナー、本当にありがとうございました。あなたが遺してくれたトレーニング理論は、我がチームの至宝です」


「いえ、僕はきっかけを作っただけです。渡してある『スケジュール表』と『メニュー表』を反復実践していただければ、僕がいなくても選手たちは確実に世界レベルへ到達できます」


僕が胸を張って答えると、監督たちは「任せてください!」と力強く握手を交わしてきた。


 蘭もまた、この期間ですっかり仲良くなった体育隊の女子選手たちと抱き合い、「絶対にまた合おうね!」「練習頑張ってね!」と涙を流しながら絆を確かめ合っていた。


 体育隊レスリング部の選手たちも、朱里の周りに集まっていた。


「朱里先輩! 本当にありがとうございました!」


「私が教えた体幹補強、サボったら承知しないからね!」


涙目になりながら強がる朱里の姿が、なんとも愛おしい。


さらにグラウンドの端では、駐屯地の女性軍医たちが数名、奈月の周りを取り囲んでいた。


「奈月先生、本当に勉強になりました!ありがとうございました!」

「握手してください! ハグもさせてくださいっ!」


軍医たちから次々と抱きつかれ、照れくさそうに微笑む奈月。彼女もまた、この駐屯地で確かな足跡を残していたのだ。


「天馬さん、バスの準備が整いました」


北川さんに促され、僕たちは駐屯地の隊員や選手たちに見送られながら、用意された大型の護衛バスへと乗り込んだ。


座席に腰を下ろし、窓の外を見る。

横には、妻となった椿姫と葵、そして北川さんや護衛たちが笑顔で並んでいる。


(……思い返せば、本当に怒濤の1ヶ月半だったな)


 五足の草鞋、幾重にも重なる指導タスク、そして事件の渦中で新しい妻たちとの出会い。北川さんや椿姫、そして家族みんなの支えがなければ、絶対に乗り越えられなかった。

忙しくも、かけがえのない充実した時間。この新座駐屯地での保護生活は、僕という人間を大きく成長させてくれた最高の経験となった。


『プシューッ』と扉が閉じ、バスがゆっくりと発進する。


グラウンドで手を振るリリカや志田さん、体育隊の選手たち、そして司令や隊員たちの姿が、遠ざかっていく。


「みんな、本当にありがとう……!」


 僕が心の中で感謝を呟くと、となりに座っていた椿姫が、そっと僕の手に自身の手を重ねてきた。


「天馬。お家へ帰りましょう」


「――ああ、帰ろう!」


日中の空の下、大型バスは思い出の詰まった新座駐屯地をあとにし、僕たちの「愛する我が家」へ向かって爽やかに走り抜けていくのだった。


【あとがき】

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

これで第9章は終了となります。

次回の更新は来週月曜日となってしまいますが、今後ともお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

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お疲れ様です。 まだ残暑の厳しい折、、無理せずに執筆活動して下さいね。
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