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赤木の森の下影に  作者: 一人雅伸
舟人渡る川の畔
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 <福祉教育(身障者との触れ合い)>

 <福祉教育(身障者との触れ合い)>


 「福祉教育実験学校」の期間中、福祉センターからの連絡で、船水川小の児童6年生10名を、『身障者と健常者との触れ合いの会』に、健常者の立場で参加してもらいたい、と言う要望がありました。

記憶に残っている行事の内容は、次のようなものだと思います。


① 場所  → 南那須少年の家

② 参加者 → 船水川小学校6年生 10名 その他福祉団体

③ 日程  → 2泊3日

 (1) 1日目 開会・日程等の説明、ゲーム等、キャンプファイヤー、宿泊

 (2) 2日目 切り紙等のゲーム・歌等・宿泊

 (3) 3日目 広場での触れ合い・午後終了・解散


 南那須少年の家は、大自然の原野の中に建てられた、新築の香りも漂うような、近代建築でした。中の施設も近代化されていて、生活には、大変便利に出来ていました。


 1日目は、身障者と健常者が交互に輪になって並び、一緒にゲームや唄などを楽しくやりました。身障者も、明るく、健常者と同じように参加していました。健常者と一緒に活動できることや、その願望が、体中に溢れているようであり、一気に吹き出たようにも感じられました。

 船水川小の子ども達も、ごく自然に振舞っていたのでほっとしました。手の不自由な人には、自然と手を出して助け合い、眼の不自由な人には、自然と手を引いて、共に楽しんでいるのが、私には、嬉しく思えました。

 その夜は、手入れの行き届いた芝の広場で、キャンプファイヤーをやりました。赤々と燃え上がる炎に照らされながら、唄ったり、踊ったり、不自由な身体を少しも気にせず、前向きに活動しているのには、心を打たれました。


 2日目は、大広場で、唄やゲーム、踊りなどを、楽しくやりました。


 3日目の午前中は、広場での触れ合いをやりました。よく晴れた広場での朝でした。自由に遊ぶ時間になりました。これこそ本当の、身障者と健常者の触れ合いの場となりました。お互いが、自由に触れ合いました。ゲームをする者、手を取り合って散歩する者、様々です。

 私と2・3人の児童と佇んでいる所へ、少女を乗せて車椅子を押してくるお父さんが居ました。子ども達は、傍へ近寄りました。そして、珍しそうに車椅子を撫で始めました。かなり高価な物のように思えました。

私は、先日行われた「車椅子体験学習」を思い出したのです。すると、お父さんは手をぱっと離しました。子供たちは、恐る恐る車椅子を握りました。

すると、お父さんは、

『押してごらん。』

と言いました。

 子ども達がそろそろと押し始めると、少女は声を出して喜びました。子ども達は安心したのか、ぐんぐんと、スピードを出して行きました。その内、子ども達は、交替しながら押していました。一回り二回りと、回っていきます。

 お父さんが言いました。

『先生、ありがとうございます。娘がこんなに喜んだ姿をみるのは、久しぶりです。』

私は、身障者と共に、両親や家族の気持ちにも触れた気がしました。

 しばらくして、車椅子が帰って来ました。子供たちも、少女も、心が通じたのか、何となく打ち解けて、にこにこしていました。

 お父さんが、

『この様なイベントは、障害者にとっては、尤も楽しい一時なのですね。』

と、しみじみと話しました。


 この、身障者との触れ合いを体験しながら、強く感じたことは、勧められるままに『福祉教育実験学校』を請けて、子ども達が、老人との触れ合いを体験している内に、何時の間にか、触れ合う相手に応じて、自然と対応していく心や態度が、このように養われてきたのに驚きました。

 考えてみれば、当たり前のことですが、自然と、そのような心が育っていたのですね。福祉センターでも、それが狙いだったのでしょう。

 尤も難しいとされている、身障者との触れ合いを、あまりにも見事に、やってのける子ども達に、これが、「福祉教育実験学校」の本当のねらいだったのかも知れないと、気が付き、感激しました。


 いくつもの研修や研究、そして、2年3年と続く、実験学校の体験は身を削る思いでしたが、この時ほど、

『世の中と共に、共存共栄を図っていくのが、教育であるのだ。』

と、感じた事はありませんでした。


 このような、身障者と健常者との積極的な触れ合いによって、どちらにとっても安定した心になることは、誰でもわかっていることです。しかし、その為の援助の手筈がないと、体験する事ができないのも現実です。

 このような、体験をさせてくれたのが、実験学校であり、福祉センターの、意図であったのかも知れません。


 このような体験を通して、身障者の立場を理解し、触れ合い、助け合える心の必要さを、もっと大勢の人々に知って貰うことが必要であろうと思いました。そして、身障者の気持ちや身体の不自由さに気づき、互いに触れ合い、助け合うチャンスを多く作る事ができます。

 この事により、本当の「明朗で元気な集団社会」が、生まれてくると思いました。たまたま、この様な機会を得たからこそ、この様な人たちと知り合い、その人達の気持ちや生活態度に触れ合えたことに、心から感謝しています。 




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