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赤木の森の下影に  作者: 一人雅伸
吾が学び舎と共に
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 <全国道徳教育実験学校 その1>

 <全国道徳教育実験学校 その1>


 小学校と中学校が同一地区で他校との合流の無い学校、つまり、小学校の児童がそっくり中学校に進学し中学生となるのです。学校・校舎は変わっても、子供達の顔ぶれは変わりません。

 このような学校は珍しいということで、こういう学校で

『小中一貫した道徳教育をするにはどうあるべきか』

という課題で、実験学校に指定されました。

 ようするに、小学校の道徳教育のカリキュラムと中学校のカリキュラムが、一貫してやりやすいのではないか、という事でしょう。子供達にとっても、小中学校の道徳教育が一貫していれば、違和感無くスムーズに道徳教育を身につける事が出来るのではないだろうか、という発想かと思います。

 教える側からすれば、小学校と中学校でカリキュラムの一貫性を図り、学習・指導法についてどのような調整・連携をとって行けばいいだろうか、という事になるでしょう。単なるカリキュラムだけの問題ではなく、指導内容や指導法、道徳教育の生活化まで広げていくと、膨大で多角的な研究内容になるでしょうし、その範囲は計り知れない所に及ぶかもしれません。


 そこで、次のような事項を研究していくことになりました。


 1.研究授業を通して、小中学校の道徳教育を理解しあう。

 2.地域に即した指導内容の検討をする。

 3.教材や資料が地域や児童の実態に適しているか検討する。

 4.学習や指導のあり方などが地域や児童の実態に適しているか。

 5.小中学校における道徳教育の生活化が地域や児童の実態に適しているか。


 などの事を、小・中合同の研究会、研修会、研究授業などを通して、実験研究に入りました。期間は3年間です。


 たまたま、最近の新聞で、


『多様な見方、議論を重視-小1から国を愛する態度-「道徳教育の指導要綱案」-文部科学省は4日、2018年度以降、教科に格上げする道徳の小中学校の学習指導要綱改定案を公表-「特定の見方や考え方に偏らない」と明記し、多角的に考える事を重視した上で討論など言語活動の充実を打ち出した。

 文科省は

「教材を読むだけの読み物道徳から、考え、議論する道徳への転換を図りたいとしている。」

 教科化の議論のきっかけがいじめ自殺であったことを踏まえ、小学校3・4年生で

「誰に対しても分け隔てをせず、公正・公平な態度で接する」

を設けるなどして対応する。・・・』


という記事を見つけました。


 実験学校の研究内容、方針とほぼ同じであることに驚きを隠せませんでしたが、世情が悪化している方向に向かっていることにも残念な思いがあります。そのためか、当時の研究・実験をしていた事が、懐かしく、又、意義があったのだろうと思い出されます。


 多角的な考え方、討論・言論活動へ


 戦後の不良化対策などに苦慮していた頃、児童教育の根本である人格形成の一端として『道徳教育の必要性』が叫ばれ、道徳教育が新設されて60年近く経ちます。五口小で道徳教育実験学校をやったのは新設から20年位後の事ですが、その頃の概念は、戦前・戦中の修身教育が大人たちに根強く身についており、それが大きく影響していた時代でもありました。


 教育委員会や指導主事の先生の指導を受けても

『多角的な考え方や討論・言語活動の充実、読み物道徳から多角的な考え方を討論や議論によって深める道徳の時間』

という、理論は分かるのですが、その頃の教師も子供達も、議論などに慣れていませんし、善悪・正義といった概念が先走って、講義式に教え込まれる風習が根強く残っていた印象が否めません。


『教材を読むだけの読み物道徳』から離れられなかったのが実情だったと思います。


 そこで私は、先ず子供達に『話し合いの仕方』を身につけさせる必要があると感じました。色々と調べてみたところ、栃木市の北にある粟野小学校で『特別活動を研究している』という情報を得ました。

 早速研修に参加し、『話し合いの形式や司会進行のあり方、採決のとり方などの基本』を学んで来ました。これは、道徳の時間の『話合い活動』に多く取り入れる事が出来、思考力を高めるためにも大いに役立ったのです。

 特に、国語の時間に『○○がどうした、だからどうなのだ、それでどう感じたか、どう思ったのか、等という文章の基本』を習得させ、思考過程の体験と実践を積んでいったのです。


 子供達には

『研究大会の時には、多くの先生が教室の後ろに立っているのだよ。ほら、後ろを見てごらん。』

『脅かすなよ、先生。』

等と、私と児童が一体となって、研究大会を意識しながら学習に励みました。


 週1回の道徳の授業には、研究授業と同じように毎回指導計画案を練り、教材や道具を用意して授業に臨みます。これは大変な手間と時間がかかりましたが、五口小・五口中学校の他の先生方も同じ気持ちで、同じように工夫と努力を重ねていたと思います。


 だんだんに、子供達にも発表力が身に付き、他人の意見に対して賛成や反対する事が出来るようになってきました。その上で、自分の意見、考えを付け加え、言うことが出来るようになって来ました。

 子供の発言力・言語力が身に付いてくると、授業への参加態度も積極的になり、活発な授業は楽しく、スムーズに進むようになったのです。


 小中の指導計画も整い、連携も進みます。指導内容も授業も、大分磨かれてきたと思います。後は『全国道徳教育実験学校公開研究発表会』の日を迎えるだけとなりました。私個人は、公開研究授業、案内状の発送、研究発表の小中の内容調整、控え室等の準備、等、雑多なことに追われる日々が続きました。


 公開研究授業


 学年      4年生

 教材    100円玉

 資料概要 


「或る暑い夏、○君が塾に行く日です。バスで3つ先の停留所近くにある塾に行くのに、お母さんが100円玉を渡しました。

『このお金は何かの時に使ってね。無駄使いはしないでね。』

とお母さんが言います。

 塾が終わって帰り道、あまりに暑いので○君は、汗を沢山かいて喉がカラカラになってしまいました。頭がクラクラするし、眼が回りそうです。どうしようかと思っていると、眼の前に自動販売機があります。冷たくて美味しそうなジュースが並んでいます。

 ○君は、知らず知らずに自動販売機の前に立っていました。手には、あの100円玉が握り締められています。その時、お母さんの声が浮かんできました。

『何かの時に使ってね。無駄使いしないでね。』

○君は、どうしたらよいか迷ってしまいました。」


(続きます。)


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