表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤木の森の下影に  作者: 一人雅伸
天に届け木犀の香
30/74

 <御加茂山のお別れ遠足>

 <御加茂山のお別れ遠足>


 大月小学校では、三学期になると卒業生の『お別れ遠足』を行うことになっています。その年は、御加茂山みかもやまの登山でした。


 御加茂山の南西に『西浦地区』という集落がありますが、そこを通り抜けて山の南西に廻ると、古びた神社が祭ってあります。神社の脇を通り抜けると急な坂道になり、砂利や小石の多い、雨に流された細い崖道がうねうねと山頂へと延びていきます。

 道といっても、雨が降ったときなどは川となり、水が流れていくような谷川になってしまう道で、周囲の小枝や蔓を掴みながら、草や小石を踏み締めながら、まさに、這い上がるように登っていくのです。


 子ども達は、こういう冒険のような事や所が大好きです。

『ウワァ、ヒャァ』

とか叫びながらも、結構面白がって登っていきます。

 頂上に着いた頃には、子供達も

『ハァー、ハァー』

と白い息を吐いていましたが、直ぐに眼をランランと輝かせて、景色や周囲の様子に興味を惹かれていたようです。


 たかが300メートル程度の山と思っていましたが、山頂への近道となると厳しいものでした。一層高い丘の上に、登り口よりややシッカリした神社が建てられています。御加茂神社の本社です。この辺りは、所々に大きな穴が空いています。戦時中の空襲警報のとき、神社の灯明が点いていたとかで、夜中に爆弾が落とされました。その翌朝からお昼頃まで『ボカーン、ドカーン』という炸裂音が鳴り響き、授業にならなかったと年配の先生が教えてくれました。


 神社から少し北に、尾根伝いに登って行くと、東に岩舟町の平原が広がって見えます。現在では初日の出を遥拝するために訪れる人も多く、有名な広場になっている所でもあります。

 稲榎市側から見ると、南北にうねうねと続く美しい峰も、登ってみれば、下ったり登ったりと起伏が激しく、石や岩も多く、熊笹に挟まれた細い山道で、とても歩き難いところです。


 尾根の北端に着きました。そこから山裾を見下ろすと、山坂の森林の合間やちょっとした平地に、住宅がポツンポツンと建ち始め、そのまま山を下りた所は家も密集した『黒袴地区』という集落です。

 集落を抜けると一面に麦畑が広がり、穂に沢山の実が成っているようでした。麦畑のはるか西の方に小さな家々が、稲榎の街並みです。先頭に立ったクラスが麦畑の中を進み、残りの三クラスも順番に後に続きます。田んぼ道はくねくねと曲がり、方向が分からなくなってしまいます。田んぼそのものがまだ耕地整理されていないので、西に向かって進んでいるつもりが、いつの間にか南に向かっていたりします。

 慌てて先生方が帰路修正をして、くねくねした田んぼ道を辿りながら稲榎の街へと入ることが出来ました。


 振り返ってみると、今まで登ってきた御加茂山がその緑の原の上に聳えているのです。


『しもつけぬ みかものやまの こならのす

 まぐわしきこらは たがけかもたん』


万葉集に詠われた美しい山が、広く深い緑の上に一層美しく見えます。



現在は、県立公園となっており、遊園地などの施設もあり、多くの人で賑わっております。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ