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赤木の森の下影に  作者: 一人雅伸
水田の街と金盞花
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 <小さな胃袋>

 <小さな胃袋>



 給食係の先生から、私のクラスの給食の残飯量が多いと注意をされた事があります。給食指導が徹底されていない、とされてしまったのです。給食センターからしてみれば、栄養士が学年に合わせて、栄養や給食量の計算をしているのですから、毎日残飯が多いとすれば、給食に対する指導や取組みが疎かになっていると評価されても仕方ありません。担任とすれば、恥辱と言っても過言ではない状況です。


 子供達との話合いが何度か行われました。

「皆で協力して、残飯を出さないように食べて下さいよ。」

「そんな事を言われても、給食が急に増えるから食べきれないよ。先生、僕達は胃袋が小さいのだよ。」

こうなっては対処のしようがありません。


 ある昼休みに1年生の教室の前を通った時、教室で2人の子供が泣きべそをかきながら、のろのろと給食を食べているのです。若い女の先生が切なそうな顔をしながら、じっと見守っています。


 その光景を見て、私は担任の児童たちに言いました。

「給食を残す子は毎日4~5人いるが、皆の胃袋と給食の量が合わないのかもしれない。しかし、食事は人間の身体や命を守り、育てていく大切なことだ。好き嫌いやわがままで残すなら許されないが、お前たちの胃袋の中に入り切れないと言うのなら、お前たちの身体が大きくなるまで、先生も恥を凌いで待つことにするよ。」

子ども達は、

「やぁ、助かった。」

と言い合って喜んでいましたが、それからは私も子供達も、給食の残量の話は一切しませんでした。


 毎朝、職員打合せの時間に発表される『給食残飯』についての話がある度に、あの1年生の泣きべそをかいていた子供の顔と、困ったように『胃袋が小さいのだよ。』と訴える子供達の顔を思い出し、耐えたのです。


 夏休みが終わり秋めいてきた頃、給食の配膳の時間の事です。

「もっと入れろよ。僕のが少ないだろ。」

という男の子達の声が聞こえるようなりました。

 配膳係は平等に盛り付けているつもりですが、食欲の増してきた子供からは『少ない。』と言われてしまうのです。そして、食缶の中をかき回す金属の音が教室内に響きます。


 春先に比べて、身体つきも一回り大きくなった子供達は、胃袋も大きくなってきたのでしょう。それからは、朝の『給食残飯』の発表で、うちのクラスが読み上げられることもなくなりました。



 戦後、栄養失調でさまよう子供達を救った『学校給食制度』を思い起こした時、学校給食の恩恵には感謝しますが、それだけに、正しく、楽しい『食事の時間』にしたいものだと、しみじみと感じるのです。




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