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反撃と固有魔法

「ラルクくん……?」

「ずいぶん待たせてくれたわね」


 不思議な感覚が纏わりついていた。痛くて体がうまく動かせなかったのに、今はむしろ軽く感じる。

 ベンジャミンの攻撃を何とか潰してやろうと思ったときだ。いや、こいつを殺してやろうと思ったときだ。何かが俺の中から弾けたような感覚が現れた。


「何なのよ一体……」


 ヴァレットが呟く。


「ほう……」


 リーゼと戦っているはずの好戦的なガブリエルも戦いを一度中断しているのが窺えた。ただ、そんなことよりも重要なのは今何が起きたかだ。


「はぁ……はぁ……」


 自分自身が一番何が起きたのか分かっていなかった。ベンジャミンの魔法は間違いなく血液を媒介にしたもの。血を操る魔法だ。凝固した血液の塊を投擲武器として使っていたことまでは理解できた。けどそれが今しがた、ベンジャミンが放出した攻撃を俺が叫んだ瞬間、消失したのだ。


「何だ今のは……俺の攻撃をいなしたというのか」


 ベンジャミンが目を見開いて激昂する。さっきまで圧倒的に優勢だった相手に防がれたのがよほどプライドを刺激したようだ。


「何だ……。貴様、一体何をした……?」


 怒りの感情を醸し出しながら疑問をぶつけられる。それだけで気圧されそうになるが、必死に取り繕った。


「さぁな……けど……お前の好き勝手はもう終いだってことだ」

「ガキが……」


 ベンジャミンの形相が険しいものへと変貌した。歯を食いしばり、殺意を剥き出しにしたオーラを纏い始めた。まさに血を象徴したような赤い魔力だった。

 危うく呑み込まれそうになる。けど、俺もようやく魔法が使えたんだ。臆する必要なんかないはずだ。


「いくぞ」


 もう一度さっきの感覚を思い出す。今度は腕を前にして、目標に向かって標準を定める。右手に熱を感じると、青い光が纏わりついた。いけるという確信のもと、俺は拳銃で撃ち出すイメージを持って一気に弾き出す。


「よし」

「こんなものきくかよ」


 ベンジャミンは腕で払って光をかき消そうとする。だが、ベンジャミンの腕が光に触れた瞬間、予想できないことが起こった。腕がビキビキと氷結したのだ。


「な、何だと……」

「……氷の魔法……」


 ルキナとリーゼが驚きのあまり声に出す。魔法といえば自然界にある属性がわりとメジャーだと思う。何に驚いているかはわからないが、今まで転生したのに魔法が使えない鬱憤をぶつけるように魔法を撃ち出した。


「まだまだ……!」


 光の乱気流だ。連続で撃ち出した氷のレーザービームは、一斉にベンジャミンを襲う。


「ち……」


 光の粒子は撃ち出した後に徐々にスピードを増す。予測された攻撃速度をはるかに上回っていたようで、回避に努めるベンジャミンの足に直撃する。撃ち抜かれた足は凍結するとともに、痛々しく流血も起こしていた。凍った足は自由に動かせない。負傷したためでもあるだろうが、ベンジャミンはガクッと腰を落としていた。


「くそ、この俺が……」

「分が悪そうだな」


 旗色が悪いと見たガブリエルが加勢に入る。そこをリーゼがさえぎった。


「おっと、私を無視して余所見なんて許さないわよ」

「ま、そりゃそうだ。俺は助けられそうにないな」


 ナイスだリーゼ。さすがに二人なんて相手してられない。そう思ったのもつかの間、そりゃそう来るよなっていうタイミングで、ルキナを泡の中に閉じ込めていたヴァレットが俺に向かって仕掛ける。

 跳躍して俺に向かって向けられる鉤手のような腕。蛇に呑み込まれるようなゾクリとした錯覚を感じながら、慌てて跳び退く。


「意外にすばしっこいわね。ベンジャミン、もうそろそろ動けるわね?」

「……あぁ。もちろんだ」

「なっ……」


 足の怪我をも厭わず、悠然と立ち上がる。さっきまでの優勢の気分は一気に吹き飛ばされた。。ヴァレットもルキナをバブルに閉じ込めるために動けないと思っていたが、そんなことはないようだ。むしろさっきより状況は最悪だ。


「……俺一人で十分だ」

「そう。と言いたいところだけど、時間も魔力も無駄に消費するわけにいかないの。だから確実に叩くわ」

「1対2かよッ」


 せっかく魔法が使えるようになったのに、下手したら殺される。いや、俺の魔法で二人とも凍らせれば……。

 答えなんかない。悩む暇すらない。覚悟を決めるよりも早く、ヴァレットが動く。ベンジャミンの意見も無視して魔法を発動した。指で輪っかを作ると、そこからシャボン玉のようにバブルは次々に溢れた。

 迎え撃つようにレーザービームを撃つ。氷の属性を有する光はヴァレットの泡を次々に凍らせる。どんな効果があるか分からないけど、凍らせれば何もできないはずだ。事実、凍った泡はひとつ残らず地面に落下した。


「ぐっ」


 ヴァレットだけならまだしも、ベンジャミンも自身の血を媒介にした魔法を使って攻めに転じる。単純なただの血の投擲をやめて、血を固めて作った剣で間合いを詰めてくる。まるで翼のように腕から生やした半円形のブレードだ。手に持つ必要がなく、腕を振りぬきさえずれば斬り伏せられてしまう。


「ぐ、ずりぃぞ。こんなの」


 まともに見切ることなんかできない。かろうじて距離を空けさせるように、応戦して氷の魔法を吐き出す。けど、血の剣に軌道を変えられてしまう。


「私もいることを忘れずに」

「忘れるわけねぇよ」


 ヴァレットの存在を忘れることなんかできない。ルキナほどの実力者が閉じ込められるほどだ。危険極まりない敵なのは百も承知だ。魔法を扱えるようになって、無双したかったけど、今はまだこれくらいが精一杯だろうよ。


「残念。外したわね」

「いいや、大当たりだよ」


 間合いを詰めたヴァレットに向かって魔法を放つ。あっさり避けられてしまうけど、その直線状には狙い通りのルキナがいた。


「まさか……」


 ベンジャミンが気付く。けど遅すぎだ。俺は今できる最大限の笑みを浮かべて言い放ってやった。


「そのまさかだよっ!」


 ルキナを覆う泡に氷のレーザービームが当たる。当然泡の表面が凍結する。所詮泡ならやっぱり凍る。そのまま全部凍るどころか、当たった一部分しか凍っていない。でも、ルキナにとってはそれだけで十分だ。


 溜まりに溜まった電気が一気に放出されたように、ルキナの魔力の源である雷が洞窟内で轟いた。


「さすが私の使い魔だね。さて、暴れますか」

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