051 『ハンドル』
最終回といったな、あれは嘘だ(
と、冗談はさておきお久しぶりです。
ちょっと新作書いてたり、いろいろしてたわけですが、それが終わって何書こうか悩んでいたところ、知り合いから「2Pの続きが読みたい」とかなんか言われたので、久々に書いてみました。
数年ぶりなわけだけど、ノリは同じになってるでしょうかね?
とりあえず、ちょっと思いついたことがあったため、不定期ながら結構続ける予定です。
よろしければ、またお付き合いいただけると幸いです。
『ハンドル』
「壊れた車の部品を交換したとして、それは同じ車といえるのかしら?」
「いきなりなんの話です、先輩? そりゃ、同じに決まってるじゃないですか」
他に誰もいない教室での問いかけなのだから、僕に対する質問なのだろうけど、その意図が分からない。部品を替えたからといってどうしたというのだろうか。
「だったら、車の一部――そうね、ハンドル以外が全て壊れた車があったとして、唯一残ったそれを同じ車種の他の車に取り付けたなら、それは元と同じ車といえると思う?」
「いや、それは流石に違うと思いますよ。ハンドルだけ取り換えたって、別の車なことにかわりはないですよ。同じ車種ってことなら、あまり違いはないのかもしれないですけど」
それでも、それまで使ってきた車とは別物であろう、質問の趣旨を考えるならば。
「えぇ、それはそうね。だったら、この場合はどうかしら? まず、事故にあってボンネットやシャーシを交換した。その後、エンジンが悪くなってそれも交換した。更に年数が経って劣化してきたので、事故にあっていなかった他のドアやシートなどのパーツを新品に変えた。ついでとばかりに、ナビや空調といった内部に関しても新しくした」
と、そこまで言って、区切りをつけるように先輩は僕に問いかける。
「結果的に、元のパーツはハンドルだけとなったとして、それは同じ車といえるのかしら?」
「それは、確かに……」
確かにパーツを徐々に交換していったという風に話されると、先に言われたハンドルだけを取り替えた話とは違って、別の車とすぐに断じるのはちょっと違う気がする。どちらも元の車とはハンドル以外のすべてが返られているというのに。
「テセウスの船という思考実験なのだけれど、元のパーツと全ての部品が置き換えられたとき、それは同一のものといえるのか、という議論なのよ。さっきの話ではハンドルを残しているから、厳密には違うのだけれど」
「なるほど、なんというかよくわからないですね。でも、結局車として使う分に変わらないのなら、それでもういいんじゃないのか、って思いますけど」
「得てして思考実験というのはそういうものよ。単純なことを難しく考えるものだから」
「なるほど。というか、よく考えるとそこまで無理やり直すより、新しい車を買えばいいのにって思いますね。正直、修理するほうが高くつくし、車検とかもあるじゃないですか」
どうしても愛着があるのなら、それこそハンドルだけでも移行するなどすればいいのだ。
「ふふっ、現実的なことを言ったらそれでおしまいよ。ちなみにもっと単純なパターンもあるのよ。お爺さんの古い斧という話で、『刃の部分は3回交換され、柄は4回交換されているが、同じ古い斧である』なんて言って、新品同様の古い斧を見せつける、というね」
「趣旨は同じなのに、一気に俗っぽくなった!?」




