思案はするけど腹の減りには負ける
バイトの面接帰りに投稿つ゛
……バイト受かってるといいなぁ
目が覚めたら、木々に隠れた青空が広がっていた。
「どこだここ?」
とりあえず体を起こし、辺りを見渡す。
「森……か…?」
周りを見渡すが、田舎に住んでいた俺でもわからないほど深い森に違和感すら感じてしまった。
とりあえず立ち上がり、遭難したときの知識を総動員する。
……確か、こういうときは川を見つけた方がいいんだよな。
そう思考を纏めた俺は目を閉じ、聴力に全神経を集中させる。
すると、右側から水の流れる音が微かに聴こえてきた。
「……向こうか」
音のした方向へと第一歩を踏み出した俺は、何故か違和感を感じ、立ち止まって両手を見た。
そこで気がついたが、手のひらにあった豆や蛸が無くなっていたのだ。
何故だ?
確か俺は二十五歳の時に親父の農園を引き継ぎ、十八年間農業で生計を立てていた身だ。
その十八年間ずっと鍬を振るい、苗を植え、収穫していったのだ。そう、あの日までは。
そこで思い出した。いや、思い出してしまった。
そうだ、俺は……
「……死んだんだっけか」
そうだ、食人植物に食われて、異能に目覚めちまったから、逝ってこいやって言われたんだっけか……?
……やべ、なんかムカついてきた。
しかもよくよく見たら身長も若干だが縮んでいる。
前世では慎重が百八十八センチあったが今は百八十あるかどうかと言ったところか。正直言うとこれは嬉しい。
高校の時は、この身長と体格のせいでもやしって言われてたからな。
しかも、ちゃんと服を着ているではないか。全身黒ずくめだけど……。
まぁ、これで人前に出ても変態扱いはされないよな。
しかし、確か神(自称)は俺に身を守る術を与えてくれた筈だ。
いったいどんなことなのだろうか。とても気になる。
しかし、何時までも立ち尽くしているわけにはいかないだろうと思い、俺は川のあると思われる方向へと歩いて行く。
歩く…………歩く………歩く……ある、く…。
「いやいや、遠すぎるだろう」
どれだけ歩いても川らしきものなんて見えてこない。
しかし、音はどんどんと大きくなっているので方向はあっているはずなのだ。
ってか、もはや水の流れる音じゃない、なにかが進軍しているような音が聞こえている。
(川じゃなくて、行軍だったら笑えねぇな)
そんなことを思いながらも、俺は足を止めなかった。
そして、木々が別れ、視界に写り込んだ景色に息を飲むこととなった。
「……すっげぇ」
それは、滝だった。
高き岩肌から零れ落ちて行く膨大な水が、下に溜まって出来た泉に落ちていき、激しき音を立てていたのだった。
泉の水も澄んでおり、底が見通せるほどに綺麗だった。
そう、それは絶景と言っても過言ではないほどの滝であった。
(こんなとこ、日本にはなかったからなぁ)
そう思いながら、俺は泉の水を手で掬い、飲む。
喉を通る水は、長い間歩いて火照った身体を適度に冷やしていった。
「……美味しい」
そう呟き、もう一口飲んでから近くにあった樹の根っこに座り、幹に寄りかかるようにして楽になった。
雄大な滝を何時までも見ていたい気持ちになるが、まずは自分の身を守る方法がわからなくてはならないので、誘惑を振り切り、思考を巡らせた。
「……確かあの時、神(自称)は何らかの方法で伝える的な事を言っていたような気がするな」
やっぱり神様なのだったら、テレパシー的なやつで教えてくれるに違いない。
そこまで考えて歩いた疲れからか、眠くなってきてしまったので、俺は着ていたローブを掛け布団にして寝ようとした。
すると、ズボンのポケットから、カサカサっという音が聴こえてきた。なにかが入っているようだ。
とりあえずそれを取り出してみると、何枚かを束にしたまま折り畳まれた紙だった。
嫌な予感がしたが、特に気にせずに紙を広げると、思っていた通りに神(自称)からだった。
『これを読んでおると言うことは無事にそちらへと渡れたようじゃの。よかったよかった。
さて、とりあえずお主の力について教えねばならんのう。
お主が持っておる力は
・四行を操る能力
・成長限界破棄
の二つじゃな。
一つづつ説明はするので焦るではないぞ?
まずは四行を操る能力じゃな。
これはお主が望んだ身を守る術じゃ。
四行とは火、水、土、風の四属性のことであっての、お主を送り込んだ世界での魔法の原理となっておる考えじゃ。
お主のもとの世界では陰陽術に五行思想があったと思うが、それの親戚と考えてよいな。
ちゃんとそれぞれに優劣があり、火は風に強く、風は土に強く、土は水に強く、水は火に強いと言う関係がある。
しっかりと覚えておいた方が身のためじゃぞ?
理解しきれなかった場合を考えて、図も載せておくかの。
火←水
↓ ↑
風→土
他にも、二つの属性を複合して別の属性を作ることもできるようじゃぞ。
試してみるがよい。
さて、次は成長限界破棄か。
実を言うと、この力こそがお主をその世界に送った理由なのじゃ。
能力の内容はその名の通り、成長の限界を無くすと言うものじゃ。
簡単に言うと老いもせぬし、鍛練を積めば積んだだけ強くなりおるし、勉強すればしただけ賢くもなりおる。そんな能力じゃ。
……正直言うと、わしらは怖かったのじゃ。
その能力があれば、お主の努力次第では神をも越えることすら可能じゃ。
それ故に、お主の魂の消滅を訴えて来た神は少なくはない。
……しかし、魂の消滅は神にとっても大罪じゃ。
それ故に、わしはお主をわしらの手の届かぬ世界へと送ったのじゃ。
こんな不出来な神を、どうか許してくれ。
……さて、暗い話はここまでじゃ。
お主の第二の人生が幸せになれるように頑張りなさい。
わしは常にお主の事を見守っておるからの。
全知全能の神 ウラノスより』
「……どうしてこうなった」
四行を操る能力?成長限界破棄?なんじゃそりゃぁ!?
たった二つだけれど、効果で言ったらただのチートじゃねーか!!
「……はぁ。こんな力は望んでないんだけどなぁ」
この紙に書かれている通りの効果なのだとしたら、大変なことだ。
四行を操る能力。
これはこの世界において、とてつもないアドバンテージになる。
考えてみてくれ。
この世界には魔法がある。恐らくは魔法が中心に発展していった世界なのだろう。
そんな世界に全部の属性を使いこなすやつがいてみろ。パワーバランスが当然のように崩壊する。
これで俺は、一つの国に肩入れする事は出来なくなった。
次に成長限界破棄だ。
この能力のせいで、俺は不老者らしい。
不老、つまりは歳を取らない。
この魔法が蔓延る世界にいて、これほどマズイモのはない。
何故なら、吸血鬼と呼ばれる存在がいるかもしれないからだ。
吸血鬼を見分ける方法は多々あるが、その内の一つが老いないことだ。
歳を取らない俺が疑られても仕方ないだろう。
これにより、一ヶ所に定住すると言うことも不可能になってしまった。
「つまりあれか。旅をしろってか」
旅をするにしても問題は多々ある。
まずは身を守る術だ。
確かに能力は手に入れた。しかし、俺はその能力を使いこなせはしないのだ。
故に、暫くはここで力の練習をしなくてはならないだろう。
次に食糧だ。
これはここで練習している間も必要だ。……どうしたものか。
考えていると、泉の方で何かが跳ねる音がした。
よくよく目を凝らしてみると、澄んだ泉の真ん中辺りに魚が泳いでいる。
恐らく先ほどの音はあの魚が跳ねたんだろう。
これは神が気を効かしてくれたのだろうか?なんかうまく行き過ぎな気がしてならない。
しかし、気にしていても始まらない。
俺は魚を獲るために立ち上がった。
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