水精の祝祭と、語り継がれる女神の神話
【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】
★毎日「朝7時」更新中!★
舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!
剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!
※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!
夕暮れの『滝の集落』。
エリスの『大治癒』によって完全に浄化された巨大な滝は、本来の清らかな青さを取り戻し、轟音と共に美しい水しぶきを上げていた。
「皆の者! 水脈の復活と、大地の精霊たちへの感謝の祭りを始めようぞ!」
族長の宣言と共に、村中に無数の松明が灯された。
ポンタも広場に停めたアカマル号の巨大なオーニング(日よけテント)を展開し、現代のLEDランタンをいくつも吊るして周囲をライトアップする。
揺らめくオレンジ色の松明の炎と、近代的な白く澄んだ魔石の光。そして青く輝く滝が織りなす光景は、息を呑むほど幻想的だった。
「ポンタ殿、貴方方はこの大地の恩人だ。どうか受け取ってくだされ」
商人のマルコが深く頭を下げ、王都の貴族も唸るという最高級の果実酒やスパイスの木箱をポンタたちに振る舞った。
村人たちが持ち寄った巨大な猪肉の丸焼きに、ポンタが現代のスパイスを擦り込んで極上のキャンプ飯へと昇華させると、あちこちで美味に悶絶する歓声が上がる。
「よし、祭りをもっと盛り上げましょうか! マリー、シルフィ、お願いします!」
宴の中央で、黒髪の少女――ミリーナが楽しげに声を上げた。
ポンタ様たちの役に立ちたいと張り切る彼女の呼びかけに応え、空間が揺らぎ、水と風の精霊姉妹が顕現する。
自然と共に生きる村人たちは、具現化した本物の精霊を見て歓喜し、深く平伏して敬いの祈りを捧げた。
「はぁい! お水、いっぱい出しますねー!」
「任せなさい! 私の風で、とびっきり綺麗にしてあげるわ!」
マリーが両手を掲げると、地底湖から続く川の水が生き物のように浮かび上がり、何十本もの巨大な水柱となって夜空へ吹き上がった。
そこへシルフィが風の魔法を叩き込む。
吹き上がった水柱が鋭い竜巻のように渦を巻き、あるいは空中で弾けて巨大な水の華を咲かせる。LEDランタンと松明の光を反射した無数の水滴が、まるで空から降る宝石のようにキラキラと輝いた。
「うわぁぁっ! きれいなのー!」
「す、すげえ……! 水が踊ってるぞ!」
精霊姉妹の合わせ技による、壮大な噴水ショー。
見たこともない最高のエンターテインメントに、ニアや村の子供たち、そして大人たちまでもが総立ちになって大歓声を上げた。
「あははっ! 僕も、僕も遊ぶー!」
その楽しそうな気配に釣られ、エリスの杖からポンッと光の粒子が飛び出した。
世界樹の若枝の精霊、ユーグだ。
楽しげに宙を舞う小さな少年の姿。だが、彼が顕現した瞬間、その場にいた族長や村の長老たちは目を見開き、言葉を失った。
それは、魂の底からひれ伏したくなるような、あまりにも澄み切った強大な『神気』。大地の精霊を深く敬う彼らにとって、世界樹の精霊の顕現は、まさに神話が目の前に現れたような、圧倒的な感動と畏敬の瞬間だった。
「こ、古代上位精霊様……。まさか、生きてお目にかかれる日が来ようとは……!」
族長が止めどなく涙を流しながら、ポンタたちを見て震える声で語り始めた。
「……かつて女神様は、強大すぎる邪神を滅ぼせず、己の『心臓』を神器に変えて邪神を貫き、大地に封印なされた。その神器がやがて『世界樹』となったのです」
それは、この世界を形作る創世の神話だった。
「女神様が流した悲しみの涙は『月』となり、今も空から世界樹へ月のマナを供給し、封印を維持し続けておられます。……世界樹と水脈はマナで繋がっている。水が侵される時、それは封印の力が侵される時。だからこそ我らはこの滝を、水を護り、自然と共に生きてきたのです」
「……なるほどな」
ポンタは深く頷いた。
(ソフィア。あの紫の石は……)
『はい、マスター。あの紫の魔石は、水脈をピンポイントで汚染し、生態系を狂わせる帝国製のデバイスで間違いありません』
脳内のAIの報告と符合するように、宙に浮いたユーグが少し真面目な顔をして口を開いた。
「母様(世界樹)はね、大地を走る龍脈と水脈のマナ、そして月の光を必要としてるんだ。母様の力を弱らせるためにわざと水を汚染したんだとしたら、帝国は母様のこと、すっごく研究してるのかもね」
その言葉を聞き、ミリーナはそっと夜空に浮かぶ美しい月を見上げた。
自分が神話に連なる『月の巫女(ルナ一族)』の末裔だと言われても、正直まだピンときていない。けれど、かつては他人の悪意や殺気が音として聞こえてしまうこの耳が嫌いでたまらなかった彼女も、今は強大な力を持つ精霊たちと契約し、こうしてポンタたちの役に立てている。
(もしかしたら、私にも……この旅で、何かできることがあるのかもしれない)
ミリーナは胸の中で静かにそう思い、優しく輝く月明かりに目を細めた。
邪神の封印を内部から腐らせるための、緻密で恐ろしい帝国の計画。ポンタもまた、Sランク特使としての使命の重さを改めて噛み締めていた。
――それから、しばらく平和で騒がしい宴の喧騒が続いた後のこと。
「師匠ぉ……ルル、もう眠いよぉ……」
「おっと」
思考に沈んでいたポンタの膝の上に、顔を真っ赤にしたルルがごろんと丸まって寝転がった。どうやらマルコが持ち込んだ度数の高い果実酒を、ジュースと間違えて飲んでしまったらしい。
「えへへ……ポンタ様ぁ……私、もっとお役に立ちますからねぇ……」
「お前もか、ミリーナ」
すっかり酔いの回ったミリーナが、普段の清楚さを完全に崩し、とろんとした目でポンタの右腕に無防備に抱きついてくる。
「主殿に気安く触るな、ミリーナ! 護衛の任は我が代わりにお相手しよう!」
竜種の頑丈さで全く酔っていないヒルデが、生真面目にポンタをガードしつつ、左手では巨大な猪肉の串焼きを豪快に平らげていた。
ニアがマリーたちと一緒に走り回り、エリスがそれを母親のような優しい微笑みで見守る。それは、アカマルらしいいつもの賑やかな風景だった。
「……ヒルデさん、エリスさん。こいつらちょっと頼むわ。風に当たってくる」
ポンタは苦笑しながら、すっかり出来上がったヒロインたちを二人に任せ、一人、広場の隅にある静かな焚き火のそばへと移動した。
丸太に腰を下ろし、グラスの酒を煽る。そこへ、二つのグラスと酒瓶を持ったガロがやってきて、隣に腰を下ろした。
「……騒がしい連中だが、最高の仲間だな。ポンタ」
「まあな。手はかかるが、背中は任せられる」
パチパチとはぜる焚き火を見つめながら、ガロがポツリと身の上を語り始めた。
彼は獣王国の有力な部族の戦士だった。だが、帝国の汚染によって狂暴化した同胞たち――「他国を侵略してでも生き残るべきだ」と主張する過激派と対立し、戦闘になったという。
「その戦いで深手を負って倒れていたところを、通りかかったマルコの旦那に救われたんだ。その恩返しとして、護衛をしながら国を出たのさ」
ガロは静かにそう語り、ポンタへ視線を向けた。
「今の獣王国は酷く排他的で、帝国への憎しみから人間を極端に嫌っている。……人間であるあんたたちが入れば、問答無用で殺し合いになるかもしれないぞ」
ガロはそう言って、懐から丸めた古い羊皮紙を取り出し、ポンタへ手渡した。
「獣王国への安全な隠しルートが記された古地図だ。俺はマルコの旦那を王都へ送り届ける使命があるから、同行できるのはここまでだ。……死ぬなよ、恩人」
「悪いな、ガロ。ありがたく使わせてもらうぜ」
ポンタは地図を受け取り、静かに笑った。
「人間お断りの最悪なマップってわけか。……上等だ。言葉が通じねえなら、対話のテーブルに着かせるための『戦術』を練るまでさ。それに、俺には最高のパーティーがいるからな」
ポンタの言葉に、ガロは一瞬目を丸くし、やがて頼もしそうに口角を上げた。
二人の男が、無言で静かにグラスを打ち合わせる。澄んだガラスの音が鳴った、その直後だった。
「……ちょっと待ってください。ポンタさん、今、何を飲んでいるんですか?」
背後から、氷のように冷たく、かつ威圧感のある声が響いた。
ポンタがビクッと肩を揺らして振り返ると、酔い潰れたヒロインたちを寝かしつけてきたはずのエリスが、腕を組んで仁王立ちしていた。
「あ、いや、これは……ガロが注いでくれたお茶で……」
「匂いで分かります! 今のポンタさんの体は、育ち盛りの12歳の少年なんですよ!? お酒なんて絶対にダメです!」
「お、おいおい、待てエリス! 俺の中身は立派な大人だぞ!?」
「中身は関係ありません! ほら、没収です!」
有無を言わさぬ母親のような勢いでエリスに酒のグラスを取り上げられ、そのまま説教モードに突入されるポンタ。
その様子を見て、ガロが耐えきれずに肩を揺らして吹き出した。
「ははっ……! Sランクパーティーのリーダーも、お目付け役には敵わないらしいな」
「笑ってねえで助けろ、ガロ……!」
パチパチとはぜる焚き火の音と、エリスの小言、そして男の笑い声が、大自然の夜空へと賑やかに吸い込まれていった。
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