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『元世界ランク1位、異世界で【浮遊砲台】になる。~手足のないダルマに転生しましたが、FPS視点の「魔弾」でヘッドショット余裕です~』  作者: 暁月カケル
世界樹防衛編 ――星の楔(くさび)と、世界を巡る特使たち――

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追体験・英雄の誓い

【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】

★毎日「朝7時」更新中!★

舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!

剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!

※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!


「……ダイブするぞ」


 ポンタが『記憶の水晶メモリー・クリスタル』に手を触れた瞬間、淡い翠色の光が謁見の間を包み込んだ。

 ポンタ、シャドウ、そしてエリスたちヒロインの意識は、肉体を離れ、千年前の過去――エルフの女王にして真の英雄、エルミナの記憶の中へと引きずり込まれていった。


 視界が晴れると、そこは星空の広がる荒涼とした野営地だった。

 空気には濃密な魔力と、血と鉄の匂いが混じっている。

 焚き火の前に、二人の人物が座っていた。


 一人は、燃えるような赤い髪に、どこか飄々とした雰囲気を持つ人間の青年――『赤き賢者』ジン。後のアイギス初代国王であり、エリスの遠い先祖にあたる男だ。

 そしてもう一人は、透き通るような白い肌と銀糸の髪を持つ、息を呑むほど美しいエルフの女性――エルミナだった。


『エルミナ……お前には、最後の戦闘は外れてほしい』


 薪が爆ぜる音だけが響く中、ジンが静かに切り出した。それは、魔王との最終決戦を明日に控えた夜の出来事だった。


『何を馬鹿なことを言うのです!』


 エルミナが柳眉を吊り上げ、激しく反発する。


『ここまで一緒に戦ってきたではありませんか! なぜ、最後の最後で私を……!』

『聞いてくれ、エルミナ』


 ジンの声音は、かつてないほど真剣で、そしてどこか悲哀を帯びていた。


『例え俺たちが魔王に勝利したとしても、奴の力の源である「邪神の瘴気」が暴走し、世界を呑み込むほどの余波が及ぶ可能性が高い。俺たちは、目の前の敵との戦闘だけで精一杯になるだろう』


 ジンは焚き火の炎を見つめながら、拳を強く握りしめた。


『……もしもの時。その余波を食い止め、この星の命脈である「世界樹」を護り切れる防波堤になれるのは、世界最高峰の魔力を持つお前しかいないんだ』


 エルミナは息を呑んだ。ジンが、自分自身の命を投げ打つ覚悟で明日の決戦に臨もうとしていることに気づいてしまったのだ。


『ジン……あなた、まさか……』

『頼む。お前にしか、任せられないんだ』


 エルミナは震える唇を噛み締め、やがて悲しげに、けれど力強く微笑んだ。


『……必ず戻ってきなさい。この美しい世界を、また一緒に見るために』


 シーンが急速に切り替わる。

 ポンタたちが次に見たのは、天を突くほど美しく、巨大な『世界樹』がそびえ立つ、千年前のエルフェリアの姿だった。当時は地下ではなく、地上の豊かな森の中心にそれはあった。


 空が禍々しい赤黒い色に割れ、大地が悲鳴を上げている。

 エルミナは世界樹の根元に立ち、遠く遥か彼方の荒野――現在のアイギスがある方角を、悲痛な面持ちで見つめていた。

 そこには、天地を貫くような、途方もなく巨大な『光の柱』が立ち昇っていた。ジンが、自らの魂と肉体を犠牲にして、邪神の瘴気を封じ込める『蓋』となった瞬間だった。


『ジン……バカな男。自分ひとりで全てを背負うなんて……っ』


 エルミナの美しい瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちる。

 だが、悲しみに暮れる暇はなかった。ジンの懸念通り、封印の反動によって溢れ出した『邪神の瘴気』が、黒い大津波となってエルフの森へと押し寄せてきたのだ。

 触れればすべての生命が腐り落ちる、死の波。それが世界樹に直撃すれば、星の命脈は完全に絶たれてしまう。


『防衛陣を展開しろ! 何としても、世界樹を護り抜くのです!』


 エルミナの号令に合わせ、彼女の息子である若き日のルシオンと、数十名の精鋭からなる親衛隊が魔法陣を構築する。

 エルミナは自らの身体と世界樹の根を、複雑な術式で連結させた。


『我が身を器とし、濁流を清め、命の樹へと繋ぐ――!』


 エルミナが術式を起動した瞬間、押し寄せた瘴気の大津波が、彼女と親衛隊の身体へと一気に流れ込んだ。


『ぐぅぅぅあああああああああっ!!』


 ルシオンたちが血を吐き、絶叫する。

 エルミナは、規格外の瘴気を一度自らの魔術回路に『迂回バイパス』させ、浄化してから世界樹へと流し込んでいるのだ。


(あれだ……!)


 記憶を追体験していたポンタの脳裏に、電撃のような閃きが走った。

 強大で異質なエネルギーの反発を抑え、別の回路へと強制的に連結させる術式。これこそが、ドワーフのアストリッドが遺した『龍脈のバイパス手術』を完成させるための、決定的な最後のピースだったのだ。


『……星の命脈よ、我が浄化の力を動力として、時の彼方、次元の狭間へと隠れたまえ! 【究極次元転移グランド・シフト】!!』


 エルミナが最後の力を振り絞り、血を吐きながら詠唱を完了させる。

 バイパスされた莫大なエネルギーを動力として、天を突く巨大な世界樹が眩い光に包まれ――次の瞬間、森の中心から跡形もなく消失した。

 現在の地下聖域へと、世界樹を丸ごと隠匿したのだ。瘴気の直撃から、星の命は完全に護り抜かれた。


 再び、シーンが切り替わる。

 そこは、エルフェリアの女王の寝室だった。

 豪奢なベッドに横たわっているのは、白い絹のようなかつての美しさを失い、肌がドス黒く変色したエルミナの姿だった。


 瘴気を限界までバイパスした代償は、彼女の生命力を確実に削り取っていた。


『エルミナ様。どうかご無理をなさらず、静養に専念してください』


 枕元に立つ数名のエルフたちが、うやうやしく頭を下げる。現在の元老院でふんぞり返っているジジイたち――その若き日の姿である。

 彼らは「世界樹が消え、女王の姿が黒く染まったと知れば国民がパニックになる」というもっともらしい理由をつけ、エルミナを寝室に軟禁していたのだ。


『……頼みます』


 死期を悟ったエルミナは、掠れた声で彼らに遺言を託す。


『このエルフェリアを、開かれた国にしなさい。ジンたちとの旅を経て、私は学びました……他種族と手を取り合い、尊重と友愛の絆を結ぶことこそが、真の繁栄へと繋がるのだと』

『はっ、御意に……』

『そして……私と共に瘴気を浴び、肌が変色してしまったルシオンと親衛隊たちを……どうか、護ってあげてください。彼らは、国を護った勇者なのです……』

『……必ずや、我らがお護りいたします。どうか安らかに……』


 若き日の長老たちは神妙な顔で頷いた。

 だが、エルミナが静かに息を引き取った直後、彼らの顔に浮かんでいたのは、未知の呪いに対する『どす黒い恐怖』と、他種族を見下す『傲慢な選民思想』だった。

 彼らは、女王の最後の願いをすべて破り捨てた。他種族との友愛を拒み、国を固く閉ざし、そして――。


 記憶の最後の光景。


『開けてくれ! お願いだ、門を開けてくれ!』


 ドス黒く変色した肌を持つ若き日のルシオンが、血だらけの身体でエルフェリアの城門を叩いていた。その後ろには、同じく満身創痍の親衛隊の生き残り数十名が、力なく倒れ込んでいる。


 エルミナの死を隠蔽した長老たちは、彼らに対して「呪いを解く強力な霊薬の情報を掴んだが、高い魔力を持つ呪われた当人しかその場所には入れない」と謀り、魔物の巣窟へと送り込んだのだ。

 ルシオンたちは多くの仲間を失いながらも、死に物狂いで血路を開き、なんとか故郷へと帰還した。


 だが、彼らを待っていたのは、固く閉ざされた城門と、城壁の上から無数の弓矢を番える同胞たちの姿だった。


『エルミナ様の命である!』


 城壁の上から、長老の一人が冷酷に言い放つ。


『瘴気を帯びた穢れし化け物どもよ! この清浄なる森から、永久追放処分とする! 二度とその汚らわしい姿を我々の前に見せるな!』

『そんな……母上が、そんな命を下すはずがない! 嘘だと言ってくれ!!』


 ルシオンの悲痛な絶叫が、虚しく森に響き渡る。

 だが、矢が容赦なく彼らの足元へと射掛けられる。母の死を知らないルシオンは、絶望の中で愕然と膝をついた。


『母上は……私を、見捨てたのか……?』


 いや、違う。

 ルシオンは歯を食いしばり、必死に涙を堪えた。


『……きっと、母上にも、この国を護るための苦渋の考えがあるに違いない。我々の呪いが、同胞に伝染することを恐れたのだ……』


 あまりにも優しく、そして愚直なエルフの青年は、長老たちの悪辣な嘘を、己の中でそう解釈するしかなかった。

 ボロボロの身体を引きずり、数十名の流浪の民となった彼らは、同胞を護るために、自ら荒涼たる外界へと足を踏み出していく。


 それが、千年にわたるダークエルフの絶望と迫害の歴史の、始まりだった。


 ◇ ◇ ◇


 水晶の淡い光が収まり、ポンタたちの意識は現実の謁見の間へと帰還した。

 堂内は、しんと静まり返っていた。


「……信じられないの」


 ニアがポロポロと涙をこぼし、ハティの白い毛並みに顔を埋める。

 エリスも、ルルも、ヒルデも、そしてミリーナも、先祖たちが辿ったあまりにも気高く、そして悲劇的な真実に、ただ言葉を失い、静かに涙を流していた。

 長老たちは青ざめ、床に這いつくばったままガタガタと震え続けている。女王の遺言を何一つ守らず、千年前から己の保身のために国を欺き続けてきた当人たちの、あまりにも醜い姿だった。


 そして。


「……母、様……。ルシオン、様……」


 記憶のすべてを追体験したシャドウが、床にぽつりと血の混じった涙を落とした。

 彼女はもう、呪われた己の血を恨むことはなかった。

 彼女の頬には涙が伝っていたが、その瞳の奥には、千年の時を超えて蘇った、燃え盛るような『誇り』が宿っていた。

 自分たちの血は、汚れてなどいなかった。誰よりも気高く、世界を護り抜いた英雄の証明だったのだ。


 シャドウはゆっくりと顔を上げ、ポンタを真っ直ぐに見据えた。


「……赤い悪魔。いや、ポンタ」


 初めて、彼女の口からポンタの名前が紡がれた。

 それは、ただの暗殺者から、真に一族を率いる英雄の末裔へと生まれ変わった、決意の宣誓だった。


「私はもう、帝国ガウスの言いなりにはならない。騙され、利用されるだけの歴史はここで終わらせる」

「……」

「私は、難民地区に人質として囚われている同胞たちを……私の手で、必ず解放する。誇り高き、エルミナとルシオンの末裔として」


 血まみれの身体で立つ彼女の姿は、誰よりも凛々しく、美しかった。


「はっ。いい顔になったじゃねえか。……だが、その前に」


 ポンタは手の中の『記憶の水晶』を軽く放り投げ、カチャリと受け止めた。


「帝国の外道ガウスをぶっ飛ばしに行く前に、まずはこの国の『大掃除』と『戦後処理』が先だ」

「戦後処理、だと?」

「せっかくの最高画質の記録映像ログだ。この真実を、魔力拡声器か何かを使ってエルフェリアの全土に堂々と公開してやろうぜ。この国がこれからどう歩むべきか……ジジイ共ではなく、国民全員に選ばせるためにな」


 ポンタの不敵な提案に、これまで長老に従うしかなかった近衛兵たちも、ハッとして力強く頷いた。


「ええ、賛成です! そしてシャドウさん……」


 エリスが、激痛に耐えて立っているシャドウの元へ優しく歩み寄った。


「千年の間、あなたの血脈が背負ってきた痛みを……少しでも軽くさせてください。私の『聖盾アイギス』の力なら、その身体を蝕む呪いを浄化できるかもしれません」

「私の、呪いを……?」


 

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