鉄壁の金床(アンビル)と、見えざる狙撃手
【第3章・世界樹防衛編、堂々開幕!】
★毎日「朝7時」更新中!★
舞台は王都から世界へ! ついに「ファストトラベル」と「新たなロマン重火器(RPG&対空ミサイル)」が解禁!
剣と魔法のファンタジー世界を、FPSのロジックで圧倒する痛快無双劇!
※第1章・第2章(王都編まで)完結済み。今からの「一気読み」も大歓迎です!
ズドォォォォォォンッ!!
地上の『鉄機平原』に、絶え間ない爆音が鳴り響いていた。
開戦から数十分。アイアンホルムの工兵部隊が急造した簡易砦は、帝国軍の機甲兵団が放つ無数の魔力砲弾と巨大な矢の雨に晒され、少しずつ、だが確実に削り取られていた。
「ひぃぃっ! また来るぞ、頭を下げろ!」
「くそっ、帝国の最新鋭機はなんて火力と連射速度だ! この旧式の石巨人じゃあ、まともに撃ち合えん!」
塹壕やバリケードの陰に隠れ、ドワーフの操縦士たちが必死に応戦するものの、圧倒的な性能差の前に防衛線はじわじわと後退を余儀なくされている。
誰もが「いつ陣形が崩壊してもおかしくない」と歯を食いしばっていた。
「皆さん! ここが耐えどころです! 私が必ず守ります、諦めずに応戦しましょう!」
平原の土煙を切り裂き、地を滑るようにして一機の巨大な石巨人が戦線を横切った。
エリスの搭乗する防御特化型ゴーレム『アイギス・ストーン』だ。
ルルとバリンが機体の脚部に組み込んだ『風の魔石』――そのホバー機構が甲高い駆動音を鳴らし、巨大な機体が信じられないほどの高速で戦場を駆け巡り、味方を鼓舞する。
「おおおっ! 特使殿の機体だ!」
ドワーフたちが奮起し、再び立ち上がる。
(……いいぞ、エリス。完璧なヘイト管理だ)
少し離れた高台から『吉祥天ダルマ』で戦況を見下ろしながら、俺はほくそ笑んだ。
苦戦しているように見えるこの状況こそが、俺の描いた作戦図の第一段階だった。
『いいか、帝国はゴーレムの性能差でこちらを舐めてかかってくるはずだ』
開戦前夜、俺はエリスにそう伝えていた。
『攻撃は致命傷を避けつつ応戦してくれ。見た目は少しずつこちらが削られているように見せて、さらにこちらへ引き込むんだ。エリス、難しい役目だが『プロテクション』で味方の致命傷を避けつつ、敵を惹きつけてくれ』
『はいっ。ポンタさんに任された大役、必ず果たしてみせます!』
その作戦通り、エリスは今、完璧な立ち回りを魅せていた。
敵の猛攻で砦の一部が崩落し、ドワーフの機体が瓦礫の下敷きになりそうになった瞬間。
「させません……『プロテクション』!」
アイギス・ストーンの巨大な腕が翳され、エリスの魔力に反応して、正確にピンポイントの座標へ局所的な魔法障壁が展開される。
降り注ぐ瓦礫は光の盾に弾かれ、味方の機体は無傷で生還した。
「ああ、嬢ちゃんの障壁のお陰で何とか持ち堪えれるわい!」
「皆さん、持ち堪えれば必ず戦況は変わります! もう少しだけ耐えてください!」
エリスの献身的なサポートにより、防衛陣地は「崩れそうで絶対に崩れない」という絶妙なバランスを保っていた。
(エリス、そっちの戦況はどうだ?)
『はい。言われた通り、魔力を抑えて要所で障壁を展開しています』
(ナイスだ。魔力を上げすぎると完全防御だと気づかれて、敵も警戒して足を止めるからな。匙加減が難しいが、何とか任せる)
『はいっ!』
念話での通信を切り、俺は敵の本陣へと視線を向ける。
やがて、少しずつ破壊されていく砦の様子に満足げな笑みを浮かべながら、指揮官であるガンツ率いる先頭部隊が、砦の目と鼻の先へと近づいてきた。
圧倒的な優位を確信した油断からか、敵の行軍は不用意に縦長に伸び切っている。
(分断するなら、今だ)
俺は正確に戦況を見極め、全軍へ号令を出した。
「ドワーフ軍よ、良く持ち堪えた! 今から逆襲の一手を仕掛ける! ……エリス、やって良いぞ!」
「はいっ、その言葉待ってました!」
エリスの弾むような声と共に、アイギス・ストーンが巨大な『石の大盾』を大地に突き立てた。
先ほどまで抑え込んでいた彼女の無限の魔力が、一気に解放される。
ゴォォォォォォッ!!
現れたのは、これまでの局所的な盾とは次元の違う、半透明の黄金色に輝く超巨大な魔力障壁。
それは最前線の簡易砦の全域をすっぽりと覆い隠し、帝国軍の砲撃を波紋一つ立てずにすべて弾き返し始めた。
「な、なんだあのバカげた出力の障壁は!? ええい、撃て! 撃ちまくって粉砕しろ!」
ガンツが激昂して命令を下すが、エリスの魔力は底なしだ。
敵軍は射撃に固執し、砦の正面で完全に足を止め、密集した大渋滞を引き起こした。
◇ ◇ ◇
一方その頃。
平原の遥か後方、敵の視界すら届かない岩山の高台に、ミリーナの搭乗する『アルテミス・ストーン』が静かに身を潜めていた。
コクピットの中で、ミリーナはそっと、ポンタたちからプレゼントされたイヤーマフに手を添える。
人間の彼女が持つルナ一族ならではのユニークスキル、『地獄耳』。
名前こそ可愛らしいが、その真の能力は、相手の感情の機微、果ては隠された『殺意』でさえも「音」として正確に捉えることができるという、恐るべきものだ。
その精度は、王国の宮廷魔術師が複数人で展開する広域索敵魔法すら足元にも及ばない。
だが、かつての彼女はその制御できない感情の波に怯え、いつも周囲にビクついていた。
人に嫌われないように八方美人を通し、醜い感情の音に耳を塞いで生きてきた。
しかし、ポンタ達と出会い、半ば強制的にパーティーでの依頼をこなす中で、表裏のない彼らの人柄に触れ、閉ざしていた心は少しずつ開いていった。
そして今、正確無比な索敵能力の真価を発揮した彼女は、ルナ一族のもう一つの特性である『精霊との調和能力』を経て、風精霊シルフィー、水精霊マリーと契約し、恐るべきスナイプ力と火力を手に入れたのだ。
『ミリーナ、お前には超遠距離のスナイプを頼みたい』
ミリーナは、開戦前のポンタの言葉を思い返していた。
『俺たちは数で言えば圧倒的少数だ。スナイパーの場所を特定されると、分散する敵を取り囲むのに手を焼くからな。だから、エリスが引き付けて防御障壁の出力を上げた瞬間を狙え。その時、敵は必ず混乱する。その隙に、敵の指揮官クラスだけを見つけて個別撃破を頼みたい』
『はい、ポンタ様。今の私なら楽勝です〜。任せてください』
そして今、ミリーナの拡張された耳には、眼下で繰り広げられる戦場の「音」がすべて筒抜けになっていた。
ポンタの予測通り、エリスの絶対防御を前に、帝国軍からは焦燥と混乱の音が激しく鳴り響いている。
(本当に、ポンタ様の仰った通りの展開……さすがポンタ様です)
ミリーナが頬を緩ませたその時、念話の通信が入った。
『ミリーナ、待たせたな。準備はいいか?』
「はい、いつでも行けます」
『OK、やってくれ』
ポンタの短い合図。
その刹那、アルテミス・ストーンが二連装の超大型弩弓を構え、機体から水のマナがとめどなく溢れ出した。
貫通に特化した、水精霊マリーの得意とする貫通水魔法。
その特性をゴーレムの操る巨大な弓に乗せると、装填された鋼鉄の矢尻が、青白く鋭い光を放ち始める。
標的は、数キロ先で声を荒げている小隊長クラスの指揮官機。
「一発必中……『ウォーターショット』! ですっ!」
ミリーナの凛とした声と共に、空気を引き裂く轟音が岩山に響き渡った。
青白い光の尾を引いて放たれた死神の矢が、絶対の死角から、帝国の機甲兵団へと牙を剥く。
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