副長とカレーライス
海上自衛隊と言えば、やはりカレーライスである。艦艇乗組員に限らず、陸上部隊や航空部隊にも人気のあるメニューとなった。いつの頃か初めは土曜日に提供されていたが、後に金曜日の昼食に出されるのが定番となった。
これには由来があり、日本海軍の頃は土曜日の午後が艦艇乗組員の上陸日であったのだが、若手の海兵は食事の後片付け当番に当てられる事が多かった。そこで某艦艇の副長が、後片付けが少しでも早く終わり、上陸出来るように皿一枚で済むカレーライスを土曜日の昼食に取り入れた。通常の食事では一人が使う食器類は、お盆に飯碗に汁椀におかず皿と湯飲み茶碗に箸の6種類であるが、カレーライスならば、皿一枚とスプーンと湯飲み茶碗で間に合い、それだけ短時間で洗浄が終わると考えた訳である。
こうして日本海軍にはカレーライスの習慣が根付き、瞬く間に陸上部隊にも波及した。後に週休二日となり、カレーライスの日は土曜日から金曜日になったとされる。この様に階級の低い者への配慮や勤務意欲の向上を図るのも副長の役目である。ただし、実際に洗浄する若い乗組員の中にはカレーのぬるぬるした皿を洗うくらいなら例え量は多くても、通常の配膳で構わないと思う隊員がいるのも、事実である。
また、入港前日の景気付けとして定番化している「入港ぜんざい」も食べる分には良いが、洗い手からは余計な手間であり不評であった。
こうした経緯で毎週金曜日の昼食はカレーライスと言うのが定番化した。勿論、メニューを固定化することで曜日感覚を維持すると言う戦略的な意味もあった。ただ、現在においては自動食器洗浄機を備えている艦艇や陸上部隊がほとんどであり、昔の皿洗いの労苦軽減と言う意味合いは薄れている。
また、術科学校等では昼食にカレーライスを食べた午後の授業では、学生がよく寝る傾向があると危惧する向きもある。カレーライスと眠気の因果関係は不明であるが確かに眠くなる人が多いのは事実である。




