第6話 「土地神の依頼と、ヒキガエルの祠神」
――心を鎮める料理人、誕生の章――
茶畑の秘密基地で、茶太郎の淹れた“縁の茶”を囲んでいたとき。
土地神さまが湯飲みを置き、茶太郎をじっと見つめた。
土地神さま
「茶太郎よ。そなたに、ひとつ頼みがある」
茶太郎は背筋を伸ばした。
ゆかりは茶太郎の手をそっと握る。
ゆかり
「茶太郎の糸……少し震えてる。緊張してるの」
希太
「……にゃ(※心配)」
茶丸は静かに茶太郎の背後へ寄り添う。
土地神さまは茶畑の端を指さした。
土地神さま
「この茶畑の“縁”が乱れておる。
原因は、茶畑の端にある古い祠じゃ」
お地蔵さま
「昔は人がよく手を合わせてくれたんだけどねぇ……
今は誰も来なくなって、祠の霊が寂しがってるのよ」
ゆかりの瞳に、淡い青い糸が揺れた。
ゆかり
「……祠の縁が細くなってる。
このままだと黒く変わっちゃう」
希太は毛を逆立てた。
希太
「シャッ(※警戒)」
茶丸
「……(念話)
——この祠の霊は、まだ救える。
茶太郎、料理を作れ」
茶太郎
「……ぼくにできるかな」
土地神さま
「そなたの“縁の料理”ならできる。
祠の霊を癒してやってほしい」
茶太郎は拳を握った。
茶太郎
「……やってみる!」
茶太郎、ゆかり、こたろ、希太、茶丸、伊平じいさん。
みんなで茶畑の端へ向かった。
祠は小さく、苔むしていて、
風が吹くたびに寂しげな音を立てていた。
ゆかり
「黒い糸が出てる……
このままだと悪霊になっちゃう」
茶太郎の胸の奥が、苦い味で満たされる。
茶太郎
「寂しい味……」
茶丸
「……(念話)
——茶太郎、祠の霊を癒す茶を淹れろ」
茶太郎は頷いた。
◆祠の霊のために茶を淹れる
茶太郎は亜空間収納から茶葉を取り出し、
胸の熱を茶葉へ流し込む。
ゆかり
「茶太郎の糸が……祠の黒い糸に届いてる」
希太
「……にゃ(※応援)」
こたろ
「お湯持ってきたよ〜!」
伊平じいさん
「火はわしが焚くで」
茶丸は祠の前で霊を静めている。
茶太郎は湯を注ぎ、
祠の前に茶をそっと置いた。
茶太郎
「飲んで……」
風がふわりと吹き、
祠の奥から白い光が現れた。
祠の霊
「……ありがとう……」
ゆかり
「黒い糸が……全部消えた!」
希太
「……にゃ(※安心)」
茶丸
「……(念話)
——よくやった、茶太郎」
土地神さま
「試練、見事達成じゃ」
その瞬間——
祠の奥が再び光り、
小さな影が現れた。
苔むした背中を持つ、
丸いヒキガエルの神さまが姿を現した。
ヒキガエルの祠神
「ほほ……茶太郎くん、よう来てくれたねぇ」
こたろ
「しゃ、しゃべった〜!? カエルがしゃべった〜!」
ゆかり
「この人……白と金の糸がある。
祠の神さま……ヒキガエルの神さまなんだ」
希太
「……にゃ(※興味)」
茶丸は静かに頭を下げる。
茶丸
「……(敬意の鳴き声)」
ヒキガエルの祠神は茶太郎の茶を覗き込み、
ふわりと笑った。
ヒキガエルの祠神
「この茶……ええ味じゃ。
心がほどける味じゃよ」
ヒキガエルの祠神は、
茶太郎たちの前でゆっくり語り始めた。
ヒキガエルの祠神
「むかしむかし……わしは“引き返る(ひきかえる)”の神と呼ばれておったんじゃ」
ゆかり
「引き返る……?」
「そうじゃ。
道に迷った旅人が、間違った道を“引き返す”とき、
わしはその背中をそっと押してやったんじゃ」
こたろ
「カエルなのに道案内するの?」
「カエルはのう……昔から“無事帰る(かえる)”の象徴じゃ。
旅の安全、心の帰る場所……
そういう縁を守るのが、わしの役目じゃった」
茶太郎
「だから……ヒキガエル?」
「そうじゃ。
“引き返る”と“無事帰る”を合わせて、
人々はわしを ヒキガエルの神 と呼ぶようになったんじゃ」
ゆかり
「優しい糸……
人を帰らせる神さまなんだね」
ヒキガエルの祠神
「そなたらの秘密基地も、
“帰る場所”になるじゃろう」
そのとき——
伊平じいさんが、ふっと寂しそうな顔をした。
ゆかり
「伊平じいさん……糸が黒くなってる。
心が苦いよ」
伊平じいさん
「……茶畑のことで悩んどるんじゃ。
人手が足りんし、わしも歳でな……
みんなに迷惑かけてる気がして……」
茶太郎の胸の奥が、
渋くて苦い味で満たされた。
茶丸(念話)
『茶太郎、やってみろ。
人の心を鎮める料理だ』
茶太郎は茶を淹れ、
伊平じいさんに差し出した。
伊平じいさん
「……あったかい……
胸が軽くなる……
なんや、涙が出そうや……」
ゆかり
「黒い糸が消えた……!」
希太
「……にゃ(※安心)」
ヒキガエルの祠神
「ほほ……見事じゃ。
これが“人の心を鎮める料理”じゃよ」
茶太郎
「ぼく……もっと料理を作りたい。
みんなの心が軽くなるように」
ヒキガエルの祠神は茶太郎の頭に手を置いた。
ヒキガエルの祠神
「茶太郎くん。
そなたは霊も神も、人も救う
《縁結びの料理人》じゃ」
土地神さま
「この茶畑の秘密基地……
そなたらの“帰る場所”として認めよう」
茶太郎
「うん!」
ゆかり
「茶太郎の糸……金色が太くなってる」
希太
「……にゃ(※誇らしい)」
茶丸
「……(尻尾を揺らす)」
こうして、茶太郎は
霊・神・人の心を鎮める“縁結びの料理人”として完全に覚醒した。
宇治の物語は、ここからさらに深く動き出す。




