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タイムリミットまであと3秒、通信指令室を奪還せよ!<完結>  作者: 黎明まりあ


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9/9

9、決意表明

 その頃、街では……。


「なぁ、あの配信見たか?」

「見た見た!」

「ショックだよなぁ~……あの美少女の正体が男だなんて!」


「ショック通り過ぎて幻滅(げんめつ)したわ、オレ!

 だからさっそく退会した……課金した金額は戻らないけどな」

「そう!ソレな!

 ツライよなぁ~、いくら赤部屋に溶(と)かしたんだよ、オレ!

 ゾッとするわ」

「それにしても、なんで声と正反対なビジュアルを選んだのかしら?」

「よく言われる、理想の自分になってみたかったというヤツじゃない?」


 3人組の男性たちが、ドリンク片手に歩きながら話したり、ある公園では男女各2名からなるグループが芝生(しばふ)に座り込んで、話題の配信について話し込んでいる。

 赤いウサギの正体について、人々は一日中話題にしているといっても過言(かごん)ではない状態であった。


「……だそうですよ、先輩?」

「あぁ、何がだよ?」


 あの、警察史上最大の危機と称(しょう)された、赤いウサギによる通信指令室乗っ取り事件がある程度の収束(しゅうそく)を迎えた数日後、ミナトとアソウはいつもの食堂で昼食をとっていた。

 警察内部が爆破対象、かつ、その犯行の一部が全世界に配信されたこともあり、直接その対応に関わったミナトとアソウも庁内で注目を集め、2人が食堂に姿を見せただけで堂内が騒(ざわ)めく。

 普段は無口なアソウだが、さすがにあちらこちらで耳に入るせいか、ウサギに対する人々の反応を、わりと小まめにミナトに教えてくれた。


 そもそもコイツは、情報収集能力がズバ抜けているからなぁ〜

 まぁ、このおキレイな顔面を目にしただけで、話すつもりがないコトも話したくなるよな


 真正面に座っているアソウの整(ととの)った顔をなんとはナシに見ながら、ミナトはぼんやりと思う。


「先輩がウサギの正体を暴(あば)いてから、ヤツの評価はダダ下がり、会員数もほぼゼロで、サイトは閉鎖されたってさ」

「やはり……あのビジュとのギャップがな……美少女に野太い声は一発アウトだよな?」


 そんな話を小さな声でアソウとヒソヒソと交(か)わしていると、ミナトの隣の席に、いきなり本日のオススメが乗ったトレーが置かれた。


「仲間に入れてくれる?」

「ボス!」


 驚いたミナトの呼びかけをOKと受け止めたのか、ミナトの左隣にカナエがストンと座る。


「まだ捕まってないわ」


 席に着くのと同時に、ミナトが尋(たず)ねようとした内容をカナエが答えた。


「なんでオレの質問が分かったんですか?」


 更なる驚きにミナトが目を大きく見開いて口にすると、カナエは箸(はし)を手に取りながら教えてくれる。


「最終的に気になるのは、ソコしかないじゃない。

 しかもミナト、かなり顔に出るタイプだから分かるわよ」

「オレにはボスのワカる能力の方がスゲ~と思う」


 遠回しに小学生扱いされたミナトは口を尖(とが)らせながら、ご飯を頬張った。


「あの発信地は東南アジアだ」


 ざわめく周囲に配慮(はいりょ)してか、アソウが汁物を啜(すす)りながら、小声でボソる。


「そうね、だから身柄の確保は現地委託(いたく)なの。

 う~ん、この唐揚げ、美味しい~ぃ」


 前半の一文は声を潜(ひそ)めて、後半の一文は大きな声で述べたカナエに、食堂の配膳(はいぜん)担当のおばちゃんから「良かったわ~」との返事があった。

 その声に「いつも美味しいランチ、アリガトね!」と笑顔で返したカナエをさらに凝視(ぎょうし)しつつ、ミナトがカナエを賞賛(しょうさん)する。


「コミュ力(りょく)、すげぇ~!

 さすが、ボス!」

「うふふっ。

 私の部下たちって、情報管理能力はピカイチだけど、まるでそれを引き換えにしたかのようにコミュ障ばかりじゃない?

 上司の私は、そこを補(おぎな)ってあげないとね!


 でもミナト、今回もすごかった!

 さすがウチのゲートキーパーと呼ばれるだけあるわ!」

「……仕事だからな」


 どストライクに上司から褒められたミナトは、頬を薄っすら赤く染め、付け合わせのサラダをつついた。


「あのね、ミナト……」


 まだミナトに話しかけようとしたカナエだったが、ふとポケットに手をやると、慌(あわ)てて立ち上がる。


「やだ~、食べ始めたばかりなのに、呼び出しがかかっちゃった!

 行くわ!」


 そう言ってカナエは、トレーを持ってサッサと出口に向かった。


「相変わらず、騒(さわ)がしいよな、ボス」


 突風のように訪れ、去っていったカナエの背中を見送りながら、ミナトの口からボスへの評価に続き、あの時の感想が溢(こぼ)れ落ちる。


「残り3秒だったけどな」


 ミナトの感想にアソウは箸を置き、静かにミナトの目を見つめた。


「止めること自体が神技だ。

 さすがゲートキーパー」


 最近知った自分の二(ふた)つ名に、ミナトは顔を顰(しか)めて、抗議の意を表す。


「ヤメろ、その呼び名」

「ははっ」


 珍しく声をあげて笑ったアソウは、ふと真顔になると、スイッと首を前に出し、ミナトの目の前で音は発さず、唇の動きでこう告げた。


『先輩へのアクセスは、オレがゲートキーパーですから』


 目で読み取った瞬間、ミナトの耳から一切の音が消える。

 ドクンと跳ねた自身の鼓動(こどう)に驚いたミナトは、つついていたサラダを急いで口に押し込んだ。

 だが、どうやら喉(のど)はまだ驚愕(きょうがく)から立ち直れていなかったらしく、ミナトはすぐさま派手に咳(せ)き込む。


「ゲホッ、ゴホッ、なっ、何だよ、ソレ!」


 手で口を覆(おお)い、涙目になりながら、ミナトはこの原因を作った本人に、怒鳴ってしまった。


「水、飲んでください」


 当の本人は前に出した首をスイッと元の位置に戻し、何事もなかったかのように自身もコップを手に取る。


「隣に立つ者の務(つと)めです」


 コップを口につける直前に放った言葉は、飲んだ水と共に、アソウの内側に深く流れこんだ。


 <完>

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