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名無しの黒姫  作者: 天桜犀 海陽
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魔法の練習1

ジェーンは急いできた道を戻った。

すると、来た時よりも簡単にスイスイと山を下りていくことができた。

後宮にすぐ着くことができたのだ。

しかも、あまり疲れずに。



「魔法ってすごい!」



と思わず部屋で叫んでしまうくらい、不思議な体験をした。

ジェーンは晩ご飯を食べてから、図書室の本の中の魔法の本を持ち出して、ベッドの上で読んだ。

どれもこれも嘘みたいなことが、そんなことできるはずがないと思っていたことがたくさん書かれている。

前は、そんなことできる人いるわけないと思っていたが今は違う。

自分自身が魔法を体験したのだ。

きっとこれも、あれもできるとワクワクしながらそのままジェーンは眠りについた。




次の日。

ご飯を食べて、選択と掃除をした後、ジェーンは急いでドラゴンたちの住処へ向かった。

ビュンビュンと流れる景色が面白くて、ジェーンの走るスピードはどんどん上がっていった。

そして、昨日よりも早く住処へとついた。



「ただいまっ!」



ジェーンは大声で挨拶をした。

ジェーンが来たことにドラゴンたちは喜び、お帰りなさいと次々に声をかける。

たったそれだけのことだけど、ジェーンの胸は温かくなった。

うれしくてみんなといろいろな話をしていると、ジェーンドゥが降りてきた。



「おはようジェーン。お帰りなさい。」

「ただいま、ジェーンドゥ!」



降りてきたジェーンドゥに向かって、ジェーンは走り寄り抱き着いた。

まさか抱き着かれると思っていなかったジェーンドゥは驚き目を丸くするが、やさしく受け止めた。



「あのねっ!昨日帰ってから家にある魔法の本をたくさん読んできたの!ねえ、魔法って何でもできるんでしょ?私も本に書いてある魔法が使いたい!」

「まあまあ、落ち着け。魔法は逃げないし、今日は時間がたくさんある。簡単な魔法から教えてあげるから。」

「やったー!」



ジェーンは大喜びしてさらにギュッとジェーンドゥを抱きしめた。

ドラゴンたちはその様子を微笑ましく見守っている。



「ここは私たちが生活する場所だから、少し移動してもっと広い場所で魔法の練習をしよう。ついてきなさい。」



そう言ってジェーンドゥは歩き出した。

それにジェーンも走ってついていく。


ちょっと進んでいくと、大きく開けた場所に出た。

そこには若いドラゴンたちがいて、戦う練習や魔法の練習をしているようだった。


ジェーンドゥはその場所にずかずかと入っていく。

ジェーンドゥが来たことに気づいた若いドラゴンたちは、彼に向けて頭を下げる。

それを気にせず、ジェーンドゥは広場の隅にある大きな岩がある場所へジェーンを案内した。



「さ、今日からここがジェーンの魔法練習場所だ。」



ジェーンはワクワクしていた。

こんな気持ち初めてだったが、もう待ちきれなくて仕方がなかった。

早く早く!と目が語っていた。

それに気づいたジェーンドゥは、苦笑いしながら早速魔法を教え始めた。



「昨日教えたのは、自身を強化する強化魔法だ。今日は、それとは違う攻撃魔法を練習しよう。」

「うんっ!」

「ははは、元気な返事ありがとう。それじゃあ、始めるよ。まず、水はわかるか?」

「うん、わかるよ。水は冷たくて、ちゃぷちゃぷ音がして、飲むとおいしいの!」

「ああ、そうだな。じゃあ、それを思い浮かべながら、魔力を手のひらに集めてごらん。」



それを聞いてすぐジェーンは目を閉じ、手のひらに魔力を集めながら水をイメージした。

水。

川を流れてたり、洗濯をするときに使ったり、飲んだりする水。

きれいなきれいな水。



「もういい!目を開けてくれ!」



ジェーンドゥの焦った声に驚き、ジェーンは目を開く。

すると、目の前には巨大な水の塊が手のひらの上に浮いていた。



「わぁっ!すごいおっきな水だ!!」

「ジェーン、そなたは魔法を扱うのがうまいな。こんなに大量の水を出せるとは。やはり、見立て通り魔力が多いのだな。」

「魔力が多い?」

「ああ、魔力が多ければ多いほど大きな魔法を使うことができる。今そなたが出したこの水も、魔力が多いからこそできることだ。」

「そうなんだ!」

「さ、その水の玉をあの岩に向けて飛ばしてごらん。」

「うん!」



飛ばす、飛ばす。と小さくつぶやきながら、ジェーンは両手を岩のほうに向けた。

そして、彼女は飛ばすイメージとして、ドラゴンたちが飛んでいる様子をイメージした。

その瞬間。



バシャーンッ!!



巨大な水の塊は勢いよく岩にぶつかり、飛び散った。

もちろん、その勢いの良さから周りにいたドラゴンたちも、ジェーンもびしょ濡れになってしまった。

ただし、ジェーンドゥを除いて。



「あっはっはっはっは!これは傑作だ。飛ばしてくれと言われて、そんなに勢いよく飛ばすとは!せめて風に吹かれて飛ばされる弱弱しい動きを予想していたのだがな。」

「うぅ…。ごめんなさい。ジェーンドゥは濡れてない?」

「ああ、濡れてないとも。」

「えっ!?濡れてないの?どうして!?」



ジェーンはその言葉を聞いて、ジェーンドゥを見ると本当に濡れていなかった。

驚いたジェーンは、ジェーンドゥの体をペタペタ触りだす。



「こらこら、やめぬか。私も濡れてしまうだろう。」

「でも、どうして濡れてないの?みんな濡れちゃったのに。」

「それは、私がとっさに結界魔法を使ったからだ。」

「けっかい魔法?」

「ああ、結界とは、自身を攻撃から守る盾を作ったり、相手を閉じ込めたりする魔法だ。」

「盾なのに、相手を閉じ込めるの?」

「ああ、だが、この魔法はまだジェーンには難しいから教えるのは相当先になるだろうがな。」

「えぇー!私も濡れないようになりたい!」

「では、私がさっき言っていたことをイメージできるのか?」

「うっ…それは、できないけど…。」

「なら、まだ教えられぬな。」

「はぁい。」



ジェーンは肩を落とした。

彼女の髪から水がしたたり落ちる。

その様子を見たジェーンドゥは、彼女にかかった水を魔法で乾かした。

暖かい風が吹き抜けたあと、自分の服や髪が乾いているのを見てジェーンは頭を上げた。



「今のは?今のはどうやってやるの?」

「ジェーンは何でもやりたがるな。これは風と炎魔法の応用だよ。まだ覚えてない魔法があるから、それを先に覚えたらこの魔法もできるようになる。」

「ほんと!じゃあ、新しい魔法教えて!」

「わかった。では、次に行こう。次は炎だ。火はわかるか?」

「うん。あったかいけど、触ったら熱いやつ!」

「それをイメージして、手のひらに魔力を集めてみてくれ。今度は少しだけでいいからな?」

「わかった!



そういってジェーンは炎をイメージし始める。

蠟燭の火、ゆらゆら揺れる、暖かい炎。

そうしてジェーンが目を開いたら、目の前に握りこぶしほどの炎の玉が揺らめいていた。


「できたよ!」

「こら、炎は危ないから、それを持ったまま急に動かない。」

「ご、ごめんなさい。」

「それじゃあ、さっきと同じように、あの岩に向けて放ってごらん。」



ジェーンは先ほどよりやさしく、それでもやはり早いスピードで岩に向けて炎を放った。

炎が岩にぶつかり消える。



「やったぁ!」

「うん、うまくできたみたいだね。それじゃあ、どんどん行こう。次は風だ。」

「風だね。わかった!」



ジェーンは風をイメージする。

走った時のビュンビュン吹く風、木の葉を巻き上げる風。

目を開けたら、そこには風の球体があった。

ジェーンはジェーンドゥがいう前に、球体を岩に向かって飛ばした。



「どう?どう?」

「おお、そこまで簡単にできるようになったか。これならもっと早く多くのことを教えられそうだな。」



そうして、ジェーンドゥはジェーンにたくさんの属性の魔法を教えた。

土、木、雷、氷、光、闇。

イメージするのが難しいものもあったが、ジェーンはどれも成功させた。



「やはり、ジェーンは私と同じで全属性に適性があるみたいだな。」

「全属性?」

「今まで出したものが、すべての属性だ。すべてできるものはそうそういない。」

「そうなんだ。」



その言葉に、ジェーンは少しうれしくなった。

喜んでいる様子を見て、ジェーンドゥもうれしくなる。



「さあ、先ほど見せた風と炎の応用魔法を教えたいところだが、そろそろお腹がすいたころだろう。果物でも食べに行こう。」

「うん!」



ジェーンたちは広場に戻り、他のドラゴンがとってきてくれた果物を食べた。



「おいしいか?」

「うん!おいしい!でも、前食べた時よりおいしい気がする。」

「そうなのか?それなら、きっと私たちと一緒に食べているからかもな。」



ジェーンはその言葉に胸を撃たれ、また涙した。

嬉しくて嬉しくて仕方がない。

周りのドラゴンたちも彼女を囲みながら、やさしく声をかける。



「おいしいねえ。」

「うん。いつもよりおいしい。」

「いっぱいお食べ。」



どの言葉も優しさにあふれていて、ジェーンは涙をぬぐいながらドラゴンたちがくれた果物をたくさん食べた。


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