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1章 第6話 悪役令嬢VS宇宙海賊2 ~ 疾走のモヒカンライダー

 「えっ!? ……なにこれ!?」


 ライトは驚いて辺りをキョロキョロと見回した。


 ライトの寝泊まりしている部屋に集まって、紅茶とお菓子を味わいながら、皆で雑談を楽しんでいたその時、突然アラームが鳴り響いたのだ。


 エリザベスXは目を閉じて動きを止め、数秒後に再び目を開けると、不機嫌そうな声を出した。


 「……今、確認致しましたわ。どうやらこの宙域に近づく宇宙船があるようです。

 ふう……この前の海賊の件があったので、センサーの感度を上げておいたのですが、まさかこんなに早くそれが役に立つとは思いませんでしたわ」


 エリザベスXは「今、映像を映しますわ」と言って、部屋に備え付けられているモニターの方へ顔を向ける。次の瞬間、彼女の目がピッと光ったかと思うと、モニターに宇宙船の映像が表示された


 そこに映った宇宙船を見たライトは、あれ? と首を傾げてしばらく考えたあと、数秒してから思い切り驚いた様子を見せた。


 「この宇宙船! 多分、俺が逃げた船だ! この船に武器や戦闘アンドロイドのパーツがが積んであったんだよ! そして、それを入れたコンテナにはアラシ・クレームメールのエンブレムが……!」

 「……待って下さい」

 「えっ?」


 アラシ・クレームメールの名前を出したとたん、エリザベスXはピクリと反応してライトの言葉を遮った。


 「貴方がトラブルを抱えていることは聞いていましたが、アラシ・クレームメールと関わりがあるというのは初めて聞きましたわ。……それは本当の事なのですか?」


 「あ……うん。そう言えばそこは言ってなかったね。どんな関係なのかは知らないけど、アラシ・クレームメールのエンブレムがあったのは確かだよ」


 「アラシは死んだはずです。となると当時の残党か、別の組織が勝手に名前を使っているか……ですか。対処は悩むところですわね……。安全を考えるのなら先制攻撃で撃墜するのがベストなのですが、情報を得るためにも船ごと確保したい気持ちもあります。

 相手がここに気づかないのならば、このままやり過ごすという選択肢もあるにはありますか……まあ、どれを選ぶにせよ、戦闘準備はしておくべきですわね」


 その時、モニターを眺めていたミリィちゃんが驚いて声を上げた。


 「……あれぇ!? 画面が見えなくなっちゃった?」


 バッ、と振り向きモニターを確認したエリザベスXは忌々しそうに表情を歪めた。


 「……ジャミングですわね。あちらは私たちに気づいている……というより、初めから戦闘を考えていると思っていたほうがよいかも知れませんね。

 ジャミングをかけられた以上、遠距離射撃は難しいですね。目視してから手動で狙うという手もありますが、命中精度的にあまり現実的ではありません。……どうやらまた白兵戦になりそうですわね」


 そう言ってエリザベスXは、戦いの準備のためライトの部屋から出て行った。


 「戦いか……嫌だなぁ。でも、ここを守らないとね」

 「……店主として、自分の店は守らなくては」


 ミリィちゃんとシェフも、気乗りはしないようだが自衛の戦いであれば仕方ないという様子で、戦いの準備をしに行く。

 部屋に残されたライトは、こういう時に自分がなにもできないという無力感に、悔しさを覚えてグッと唇を噛み締めた。





 ーーーー



 「ヒャッハー! コイツはご機嫌だぜぇ!」


 元、宇宙海賊のリーダー、モヒート・モヒカンダルは、ゴツいバイクで宇宙空間を飛び回っていて、その周囲には、いわゆるドローンのような外見の小型無人戦闘機が二十機ほど飛んでいる。


 この宇宙用戦闘バイクと無人機は、マエザー社長から渡された物だ。

 モヒートは、マエザーがこれらを気前良く貸し出してくれた上に、目的地に一番乗りして好きに暴れて言いと言われた事に上機嫌だった。

 ……実はマエザーは、モヒートを相手の出方を探るための駒として先頭に立たせているのだが、彼はそんなことには気づかずに、すっかりヒャッハーな気分である。


 「あそこだ! 見えて来やがったぜぇ! ヒャッハー! 行くぜ行くぜ行くぜぇー!!

 この前の礼をしてやるぜ! 出て来いドリル女あぁーっ!!」


 モヒートは、そう叫ぶとアクセルを吹かして更に加速し、一気に研究所を隠している瓦礫に向かう。


 「これは挨拶代わりだぜ! 受け取りなあぁっ!」


 目的の瓦礫を目視すると同時に、バイクに装備されている小型ロケット砲を発射した。

 当然、ナーロウ博士の研究所は、その程度の攻撃で大きな被害を受けるほど脆くはないが、表面の瓦礫の部分はカムフラージュのために被せただけのただの漂流物の塊だ。ロケット砲の直撃で呆気なく一部が剥がれ、隠れていた研究所の外壁が見えた。


 それはモヒートにとっては幸運な事に、(ライトたちにとっては不運だが)ちょうど研究所の裏口に当たる扉の位置であり、今の一撃で扉が丸見えになってしまっていた。


 「おおっと、ビンゴだぜぇ。ヒャッハー! 適当に撃った一発で入口が見つかるとはラッキーだなぁ、おい! こりゃあ日頃の行いのお陰かぁ? どれ、もう一丁!」


 モヒートが扉を爆破しようと、もう一発ロケット砲を発射したその時、扉が開きウェイトレス姿にお下げ髪の少女が飛び出して来た。

 そう。ミリィちゃんである。


 「えいっ!」


 彼女は、迫り来る砲弾に向けて、持っていた拳銃の引き金を引いた。

 するとその拳銃からは普通の弾丸ではなく、スライムが打ち出され、それはロケット弾に当たった瞬間に広がり、薄い膜のようにロケット弾を包みこんだ。


 ロケット弾はそのまま飛来してミリィちゃんの近くの壁に着弾したが、爆発することはなかった。

 完全にスライムに包みこまれて、機能を失っていたのだ。


 たかがスライムと甘く見てはいけない。ナーロウ博士のスライムは、やけに優秀なのだ。


 

 「えいっ! えいっ!」


 ミリィちゃんはモヒートに向かってスライム弾を連射する。

 掛け声といい、へっぴり腰の構えといい、いかにも素人っぽいのだが、その射撃はやけに正確だ。


 それもそのはず。素人っぽいのは、あくまでも飲食店のウェイトレスで非戦闘員デスヨー、というキャラ作りのためであり、実際は高性能の人工知能を積んだアンドロイドなのだから弾道計算はお手のものだ。


 「うおぉ!? クソッ! 危ねぇ!」


 バイクを急加速させてジグザグと走り、一発、二発と回避するが三発目がタイヤに当たり、スライムがまとわりついて車輪が回らなくなった。

 宇宙空間を飛び回っているのだからタイヤは重要ではないはずなのだが、安全装置が起動した事でバイクは停止してしまった。


 「ちくしょうっ!」


 モヒートがバイクから飛び降りると、どこからか声が響いた。


 「……あら、お久しぶりですわね。ご機嫌いかがですか?」


 声のした方向を振り向いたモヒートの顔に大量のバラの花びらが吹きつける。

 驚いて顔を伏せ、数秒後に顔を上げたモヒートの目の前にはソファーに腰かけて紅茶を飲んでいるエリザベスXの姿があった。……宇宙空間なのに。


 「隠れているはずのこの場所をまるで始めから知っていたように、真っ直ぐこちらへ向かってくるの宇宙船があるからおかしいとは思いましたが……。貴方が案内していましたか」


 「っ……! てめえはあの時のドリル女!! 会いたかったぜぇ! この前の礼だ! 受け取りなぁ!」


 モヒートは火炎放射器の引き金を引きながら右から左へと大きく振った。

 吹き出した炎が前方を薙ぎ払うように動くが、エリザベスXは飛び上がり、それを避ける。だが、モヒートはそれを待っていたとばかりにニヤリと笑い、左手で火炎放射器を持ったまま右手で腰からショットガン……銃身を切って短く改造したそれを引き抜き、空中にいるエリザベスXに向けて発射した。


 「そちらが本命ですか?……まあ、当たりませんが」


 ハイヒールの踵からジェット噴射のように炎が吹き出し、エリザベスXは空中でくるりと旋回して銃弾を回避し、そのまま横回転しながら旋風脚のようにショットガンを蹴り飛ばす。

 モヒートは舌打ちしながら火炎放射器を構え直すが、着地と同時にフルーレ型スタンガンを構えていたエリザベスXを見て、瞬時に火炎放射が間に合わないと判断したモヒートは、火炎放射器そのものを投げつけながら、後ろに飛んで距離を離した。


 「一番から五番! やっちまいな! 他は中に入って暴れてこい!」


 モヒートが叫ぶと、辺りを飛んでいた無人機が一斉に動き出し、大多数は研究所の入口に向かって行ったが、その場に残った五機がエリザベスXに向けて機銃を乱射した。


 「鬱陶しい羽虫ですわね」


 エリザベスXは、先ほど腰かけていたソファーを蹴り上げ、それを機銃の盾にするようにその陰を駆け抜け、落ちていたショットガンを拾い、振り向きもせずに肩越しに後方に発射する。

 撃ち抜かれた一機が小さな爆発を起こして飛び散った。


 「一つ!」


 くるりと振り向きながら腰だめにショットガンを構え直し、すかさず二連射し、二機を撃破。


 「二つ! 三つ!」


 それでショットガンの弾は空になったため、エリザベスXは後ろに回り込もうとしていたモヒートにそれを投げつけて動きを牽制し、その隙にハイヒールのジェットの起動させて残る二機の無人機に向けて突撃。

 人間用に出力を下げてあったフルーレの電圧を最大まで上げ、それで一機に突きを放った。

 バチィッ! と青白い光が弾けて、突きを食らった一機は機能を停止させ、沈黙した。


 「四つです! そしてっ……!」


 五機目が機銃を乱射したが、エリザベスXは飛び上がってそれをかわすと、そのまま飛んで行き、その無人機の上に着地した。


 「これで、五つですわね」


 エリザベスXは無人機を踏みつけたままの状態でハイヒールのジェットを起動させた。

 ヒールから炎が吹き出し、ズバンッ! という音とともに、無人機は撃ち抜かれて粉々になった。



 「お待たせして申し訳ありませんでした。……さあ、次は貴方の番ですわよ」


 「チィッ……! 上等だ、やってやるぜ! ヒャッハー!」


 モヒートはバイクの収納から愛用の釘バットを取り出し、構えた。 





 ーーーー



 研究所の入口に立っていたミリィちゃんの所に、多数の無人機が押し寄せた。

 ミリィちゃんは銃で応戦し、先頭にいた二機をスライムまみれにして動きを止めたものの、やはり拳銃一丁ではとても対処しきれないようだ。


 「わわっ!? 数が多すぎるよー!」


 そして、一機が機銃をミリィちゃんに向けた、時、飛び出す影があった。


 「せいやぁぁっ!」


 シェフことマスター・アジヤがテーブルクロスを鞭のように振り、その無人機を下に叩きつけ、更に踏みつけて破壊した。

 

 「せいっ、せいっ、せいっ!」


 次に、正面にいた一機に、テーブルクロスで往復ビンタのように叩いた後、手刀で叩き落とす。


 本来、彼は戦闘用アンドロイドではないが、かつて、作っていた豆腐の温度管理を間違えて腐らせてしまった時、己への怒りから攻撃手段を編み出したのだ。

 それが今の戦闘技術……『流派・豆腐を腐敗(とうふ ふはい)』である。

 そう、今、ここにいる彼はシェフではない。一人の格闘家……

 『豆腐を腐敗・マスター・アジヤ』なのだ!


 とはいえ、彼もミリィちゃんも多数を相手にする攻撃手段を持っている訳ではない。力を合わせて数機を破壊したが、大多数は内部に通してしまった。


 「ど……どうしよう? 結構通しちゃった」


 「もう少し減らしたかったが……仕方ない。後は任せるしかないな」





 ーーーー



 無人機たちは、途中で何度もゴブリンロボットと遭遇し戦った結果、数を減らしていったが、まだ七機残っていた。

 そして、そのうち三機は、通気用ダクトを通って生産プラントに侵入していた。

 だが、そこにはカクカクした番人がいたのだ。


 侵入者に気づいたスティーブン舞倉は、持っていたクワをしまい、弓矢に持ち替えると無人機に矢を放った。

 矢は見事に先頭の一機に突き刺さるが、無人機もそれだけで機能停止はしなかったらしく、機銃で反撃してきたが、スティーブン舞倉は、どこからともなく四角い石のブロックを取り出し、それを積み上げて盾にして銃撃を防ぐと、また弓矢に持ち替えてブロックの陰から矢を放った。


 二本目の矢が刺さったことで一機が機能停止したが、残りの二機が機銃を向けてくる。

 スティーブン舞倉は、やられる前にやれ! とばかりに駆け出し、弓を剣に持ち替えてそれで一機を叩き割り、またブロックに持ち替えて三機目の銃撃を防いだ。

 そしてまた剣に持ち替えて斬りつけるが、この三機目にはあまり効いていないようだった。


 硬い! さてはコイツがボスだな!? そう考えたスティーブン舞倉は、気合いを入れ直し、懸命に攻撃を続けた。気持ちとしては、魔王に挑む勇者の気分であった。


 途中で何度か銃撃も食らい、傷を負いながらも十発以上も攻撃したことでやっと無人機を撃破し、やれやれと座りこんだスティーブン舞倉は、自分の右手を見て愕然とした。


 自分が持っていたのは愛用の剣……ではなく、バケツだったのだ。

 どうやら色々な道具に持ち替えながら戦っているうちに自分でも混乱して、剣のつもりでバケツを振り回していたらしい。


 最後の一機が硬かったのではなく、バケツで殴っていたからあまり効かなかっただけだったのだ。

 それを、『硬い! さてはコイツがボスだな!?』なんて考えて、勇者気分で戦っていた自分の姿を思い出し、彼は恥ずかしさに床をゴロゴロと転がった。


 痛い。痛かった。 そう、あまりにも痛かった。

 数発食らった機銃の弾丸より、バケツで戦っていた自分の姿が痛かった。

 スティーブン舞倉は、精神的ダメージのため、倒れたまましばらく動けなくなってしまった。


 ……結局、彼は今回の戦いで出た、最初の犠牲者となった。



 スティーブン舞倉…………  リタイア。


 ーーーー



 「うーん……みんな大丈夫かな?」


 ライトは不安そうにそう呟いた。

 

 彼は今、メンテナンスルームにいる。

 彼の部屋は防衛設備の面で不安があるし、メンテナンスルームで休ませているサイボーグの女の子を放置するわけにもいかないので、いっそライトもメンテナンスルームに避難すればいいという結論になったのだ。

 今回もライトの背後には護衛としてクッコローネRが待機している。

 エリザベスXが言うには、彼女に通信機を持たせてあるらしい。


 「戦いが終わるか、あるいは、何か緊急事態になれば連絡をくれるって言っていたから何も連絡がないって事は、まだ戦っているんだろうなぁ……」


 はぁ……と、今日何度目かもわからない溜め息をついた。

 皆が戦っている時に、自分がこんな所に引きこもっているという事が申し訳ない気分なのだ。


 命の危険がある状況で、人間がアンドロイドやロボットを盾にして安全な場所に逃げる事は、なんらおかしなことではない。

 当然だろう、アンドロイドもロボットも人間のための道具なのだ。

 ライトも頭では分かっているし、ここに来るまでの彼ならばそこまでの罪悪感は感じなかっただろうが、今の彼は、まるで家族や友人を置き去りにして逃げてしまったような、酷く苦々しい気分になっていた。


 「……俺っていつの間にか、思ってた以上にみんなの事を大切に感じるようになってたんだなぁ」


 そんな事をしみじみと口にした直後、ライトは突然の銃声と振動を感じ、飛び上がるほど驚いた。


 「うわっ! なに!? 今のって銃声だよね!?」


 立ち上がり、キョロキョロしているライトの耳に、今度は、マシンガンのように続く銃声が聞こえた。

 今度はハッキリと場所が分かった。メンテナンスルームの入口だ。


 「多分、ここを……こうだよね」


 ライトはドアの前にあるモニター操作する。天才博士の研究所だからといって、モニターの操作方法まで特殊な訳ではないので、一般人であるライトでも基本的な操作はできる。


 ピッ、とボタンを押すとモニターに、ドアの向こう側の映像が映し出される。


 「ん?……うわあっ!?」


 そこに映っていたのは、ドアに無人機が機銃を向けている映像だった。


 その直後、無人機は機銃を乱射し、先ほどと同じ銃声が響いた。

 この無人機は、さっきから何度もドアに機銃を撃っていたのだろう。だが、どうやらこの部屋のドアはその程度では壊れないようだ。

 最初は恐怖に顔を青くしていたライトだが、ドアがびくともしない事を見て安堵の息をついた。

 だが、その直後、脳裏に不安が過る。


 (あれ……? コイツらが建物に入って来たってことは、みんなは敵を止めきれなかったって事? い……いや! 止めきれなかったからって負けたと決まった訳じゃないよね?)


 ぶんぶんと頭を振って、嫌な想像を振り払ったライトが顔を上げるとクッコローネRがドアの前に立っていた。

 オートモードになっている彼女は、今まで指示された部屋を守るかライトの後ろをついてくるかがほとんどで、自主的な動きをすることはなかったのに、なぜか突然ドアに向かった事に怪訝な表情をしたライトだが、彼女の次の行動を見て酷く動揺した。


 ドアの前に敵がいるというのに、クッコローネRはそのドアを開けたのだ。


 「ちょっ……! 何をやってっ……!?」


 当然、ドアが開いたことで無人機たちは入り込んで来る。

 焦ったライトは、不慣れな動作で銃を取り出して、構えるが……


 ライトが銃を構えた時には四機の無人機は真っ二つになり、床に転がっていた。

 ふとクッコローネRを見ると、その右手には剣が握られている。……おそらく彼女が無人機を斬ったのだろうと予想は出来るが、速すぎてライトには具体的にどう動いたのかは分からなかった。


 「す、凄い……。あっ、でもそっか。あれだけ強いエリザベスXでも汎用タイプなんだもんね。純粋な戦闘タイプのクッコローネRが凄く強いってのも納得かぁ」


 ライトは、改めてナーロウ博士のアンドロイドの性能を目の当たりにして、驚くと共に安心もした。


 「みんな、あのナーロウ博士の秘蔵のアンドロイドやロボットなんだ。そこらの軍隊よりも強いんだから、危険な事なんてないよね」



 その時、突然、トゥルルルル……という、電話のアラームのような音が聞こえた。

 どうやらクッコローネRの方から聞こえているようだ。


 「あ、もしかして通信機かな? クッコローネRに持たせてあるって言ってたし」


 通信機を取るために彼女に近づいたライトは、ある事に気づいて表情を固くした。

 ……アラームは、明らかに彼女の胸の谷間から聞こえているのだ。


 「ちょっ……! なんて場所に通信機を入れてるのさっ!? えっ!? コレ……取らなきゃダメ? 俺が取るの!?」


 ライトが迷っている間も、アラームは鳴り響いている。

 顔を赤くしながらも、ライトは彼女の胸にチラリと視線をやった。


 クッコローネRは、ドレスと鎧が一体になったような格好をしている。

 その胸の辺りは、ドレスの上に、胸当て……というか、金属のブラを着けたようなスタイルになっていて、胸元はしっかりと固定されていて、あまり隙間は無い。

 という事は、その奥にあるであろう通信機も、しっかりと胸の谷間に固定されていて、ひょいっと軽く引っ張るくらいでは取れそうにない。

 鎧を外して胸元をゆるめてから取るか、ガッツリと手を突っ込むかのどちらかをする必要があるだろう。


 ライトは、鎧を脱がせる方を選んだのだが……


 「え……コレ、どうなってるの? 外れる部分が無い……て言うか、ドレスの生地に鎧が縫い付けてあるっポイ? もしかして、これはドレスと鎧が()()()()()()()()()()()()()じゃなくて、本当に物理的に一体になってるの?」


 しばらく色々と試したライトだが、結果、鎧の部分だけ外す事はできないという結論に達した。

 あれこれしているうちに数分経ったが、まだアラームは止まっていない。

 ……本当に重要な要件なのかも知れない。


 「えっと……ゴメン。 本当にゴメンね!?」


 意を決したライトは、思い切って彼女の胸の谷間にズボッと手を突っ込んだ。

 ぷるんと柔らかい、未知の感触がライトの右手を優しく包み込む。

 ライトの頭は沸騰しそうなほど熱くなっていたが、できるだけ余計な事は考えないようにしながら、なんとか通信機を取り出す事に成功した。

 ……通信機に温もりと甘い香りがついている気がするが、それも気にしないようにして、スイッチを押して通信を受けとる。


 ライトは、今回はエリザベスXにキツ目に文句を言わなくてはいけないな、と考えていたのだが、通信機から聞こえて来た声は、意外な事にシェフの声であった。


 「……お客様、聞こえるでしょうか?」


 「シェフ? 聞こえるけど……なにかあったの?」


 シェフの真剣な声に、先ほどまでの火照った頭が冷えて行くのを感じながら、ライトは訊ねた。

 すると、信じられない言葉が帰って来た。




 「……賊の迎撃に失敗しました。 エリザベスXとミリィちゃんは……賊に捕らえられました」


 

 

  


サブタイトルが、疾走のモヒカンライダーなのに、モヒートがバイクで疾走してるシーンが少ししかありませんねー……

まあB級アクション映画とかにも、こういうサブタイトル詐偽みたいなのありますし、OKですよね?


次回も金曜日の投稿予定です。

それと、活動報告にも書きましたが、4月2日にウッディライフ! を再開する予定です。

そちらも読んでもらえたら嬉しいです。

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