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ファーストフード

「これで説明はすべて終了よ。お疲れ様」

 綾女の終了の声と共に、灯也は今度こそ本当に疲れ切った表情で、業務についてメモしたノートを閉じる。


 学校の管理下にある委員会と言っても、学生にゆだねている部分が多い為か仕事量がそれなりに多い。

「菅野、明日の昼休みはカウンター業務よ。悠が居るから問題はないはずだから、しっかりやりなさい」

 そして委員会も終わり解放される。


「はあ」

 図書館を出てから何度目かのため息。傾きかける太陽を見ながら歩いていると、後ろから声を掛けられた。

 振り向くと、クラス委員長もとい長坂楓ながさかかえでが立っていた。


「菅野君も今帰り?」

「まあね、今まで委員会で図書館で業務を教えてもらってたんだけど、もうくたくただよ」

 今までに無い和やかな会話に安心しながら会話を重ねる。

「長坂さんも今帰りなんだ。部活?」

 彼女は軽く首を振り否定する。

「私も生徒会。覚える仕事が多くて困っちゃいそう」

 そう言って微笑む姿にドキリとする灯也が、気恥ずかしさから思わず顔をそむける。


 その事に首を傾げる楓をごまかす為の言葉を探す。

「あー、良かったら、これからファストフードでも行かない?」

 何とも安っぽいナンパのようになってしまったと灯也は後悔した。昼食を食べていない事が影響してか、咄嗟に出た誤魔化しのセリフがそれだった。

(絶対に引かれた。いきなり仲良くもない男子に変な誘いされたとか思われてる!)


 変な汗が頬と背中を伝う。明日から変なあだ名で呼ばれても仕方が無いと諦めていると、楓が息を吸い声を発する。

「私で良かったら付き合うよ? 何処かで休憩したいと思ってたから」

 楓の優しさに救われた形で難を逃れた。

 二人とも会話を続けているものの、どことなく距離を掴めずに歩き続けて校門を出る。


 その後、十数分歩き続けて駅前のファーストフード店に入る。

「長坂さん、誘ったのは俺だから会計は俺が持つよ」

「そんなに気を使わないでよ。自分の物は自分で買うよ」

 楓はそう言って、自分の分を購入した。灯也もハンバーガーのセットを注文して席に着く。


 二人は行儀よく、いただきますと手を合わせハンバーガーの包みを開け、会話と食事を繰り返す。そして二人が食べ終える頃には、だいぶ仲良く話せるようになっていた。


「それでね、先輩が……。なんかゴメンね、さっきから私喋りすぎだね」

「そんなことないよ。長坂さんの話は聞いてて面白いよ」

 そして気付けば、太陽も半分以上が沈み込んで辺りが薄暗くなっていた。

「長坂さん門限とか大丈夫?」

 彼女は時計を確認して頷く。


「まだ大丈夫だけど、もうそろそろ帰らないと心配されちゃうかな」

 二人は店を後にして駅に向かう。改札を抜け、お互いに乗る電車が来るまで立ち話をして時間をつぶす。

 五分後、楓の乗る電車が到着し、

「じゃあ、また明日」

「うん、また明日ね」

 と、軽く手を振り合って別れを告げる。


 夜九時、夕食と風呂を済ませた灯也はベッドに倒れこむ。枕に顔をうずめ今日の委員会で教えてもらった事を反芻する。


「明日から俺も一員として頑張らないとな」

 寝がえりを打って天井を眺める。手足を投げ出していると、自然に瞼が重くなってくる。後数秒で眠るというところで、はたと気づく。


「このまま寝たらまた風邪ひくな。学習を活かした人生を送りたい」

 そう言って電気を消し、掛け布団にもぐりこんだ。


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