特殊業務 保存
「次は【保存】よ。悠、保存が必要な本は有ったかしら?」
「それがないんですよねー。実物が有れば説明しやすいんですけど。と言うか、少し休憩にしませんか?」
先ほどから働いているのは悠だけなので、疲れて当たり前だ。
そこで退屈していた一人の少女。
「仕方ない。私が代わりに説明してやろう」
元気よく立ち上がる司書さんは、備え付けのホワイトボードに駆け寄り、黒色マーカーを手に取りキャップを外す。
「保存というのは、整理された本の管理にある。本は紙だから当然劣化する。その劣化した本という器から能力が漏れるのだ。故に定期的に状態を確認するのだが、今は劣化しそうな本が無い」
そこまで喋ると満足そうにしている司書さんに悠がツッコミを入れる。
「マーカー不用でしたね。ホワイトボード真っ白ですよ」
悠が指摘したうように、マーカーのキャップを外した司書さんはそのまま話し始め、結局一度もボードに向かう事は無かった。
司書さんは、無言でマーカーを放り投げ自分の席へと戻り紅茶をやけ気味に煽る。
「必要になったら、その時また教えるわ」
四つの仕事の内容を聞き、残る一つの仕事は提供。その事について綾女が口を開く。
「提供の担当は私よ。と言っても練習するにも専用施設でなきゃ能力は出しちゃいけないのよ。だからこれも今日は無し」
しかし、そこで気になった事を聞く。
「四つの仕事のうち、収集と整理と保存は水沢先輩が担当してるんですね」
そのセリフに対し、綾女が軽く睨み、
「私を無能と言った菅野は提供の戦闘練習で酷い目に合わせるわ」
と、恐ろしいことを呟いたのが聞こえ、戦慄する灯也。
悠が紅茶を一口飲んでから答える。
「私は戦うことに向いていないんですよ。運動神経が悪すぎるのが問題だったんですよねぇ。子供のころから、体を動かすよりページを捲る方が好きでしたから、今の図書委員会の仕事は適所と言えるんですよ」
なるほど、とその答えに納得した灯也もコーヒーを啜った。
一時間ほどかけて図書委員会の特殊業務を教えられたが、いかにこの高校が特異な環境にあるのかは理解出来た。
完全に疲れ切った灯也はため息交じりに、冷えた残りのコーヒーを流し込む。
綾女は自分の腕時計を確認して、
「まだ時間に余裕があるから、通常業務も教えましょう。これは向き不向き関係ないから全て覚えてちょうだい」
そう言って今度は通常業務の説明を受けた。




