特殊業務 収集
「能力はその委員会に準じた能力が与えられる。故に、
一、収集。これは能力を集める事。
二、整理。これは収集した能力の解読と解析。
三、保存。これは収集した能力は本の形を取っているので管理を行う。
四、提供。これは収集した能力を用いて戦う。
これが図書委員会に与えられた能力」
そこで一呼吸置く。
「おい綾女、繋がったぞ」
司書さんが室内の右奥にある扉を開ける。
「収集はあの扉の奥に能力が収まってるから、それを見つけてくるのよ」
扉の奥を少し覗くと、薄暗いレンガ作りの空間が広がっていた。それはどう見ても司書室から続いているわけが無い広さ。
すると灯也の背後から悠が声をかける。
「図書委員会の特殊業務のうち、一~三は私の仕事です。これの理由は後でにして、とりあえず灯也君も行きますよ。私から離れなければ安全ですから」
笑顔で悠に言われるが、離れれば危険が伴う事がわかった。
特に準備もいらないらしく、悠はさっさと扉の中へ入って行く。その後を灯也も慌てて追いかけて扉をくぐる。
灯也が完全に中に入った瞬間に扉が閉められる。扉が有った場所は完全に消滅して、空間だけがある。
「慌てないでください。今まで私も先輩たちも迷子になった事はありませんし、得体の知れない怪物も居ませんよ」
「……いや慌てないほうが無理です」
そうですか? と首を傾け微笑む。
「此処は簡単に言うと異空間です。物も異なるものですから、むやみに触らないでくださいね」
軽く注意された。先程から危険な事を事もなげに言うのは、この空間の性質に詳しいからだろう事は理解できた。
良く見れば辺りは自然の明かりなど無く、ランプが所々に点在しているだけだった。恐らくこれも先輩たちの苦労の証なのだろう。
「こっちですよ」
悠は手近なランプを持ち灯也を先導する。歩いてみると終わりが無いのかと思う程広くく、代わりに棚だけが並んで見える。棚には本らしき背表紙があるが、それ以上に隙間が多い。
「あの、質問良いですか?」
「なんですか? 何でも聞いてください」
「能力ってどうやって見つけるんですか? 本が関係してるのは何となく解るんですけど」
悠は視線を上に向ける。恐らく灯也にわかりやすく噛み砕こうとしている様子だ。
「重要なのは事前の打ち合わせなんですよ。私が適当に見繕って持って帰っても意味ないんです。収集の次は整理でしょ? 解読と解析にはそれなりの知識が必要なんです。事前の打ち合わせで資料を大量に集め皆で勉強会みたいなことをして、情報を仕入れるんですよ」
わかったような、わからないような。そう思ってリアクションができない灯也を見て悠が笑う。
「確かに自分の目で見ないとピンと来ないかもですね。アッ! ありましたよ」
一つの棚に駆け寄る。そこには背表紙に題名も書かれていない古ぼけた本があった。
「これが能力になるんですか?」
「そうですよ。これを解読するんです。少し中身を見てみますか?」
黙って頷く彼に適当なページを開いて渡す。
それを受け取った灯也は目を落とし、書かれているものを見て驚愕する。
そこには、およそ文学を記した書物とは思えない事になっていた。平仮名、片仮名、漢字、アルファベット等の世界に存在するであろう文字が並んでいた。 これの文章や文脈が正しいのかも理解できない。
「何か感じるものはありますか?」
「……どう見ても無茶苦茶な文字の羅列なんですけど」
やっぱり難しいですよねぇ、と本を灯也から回収して小脇に抱え、ブレザーのポケットから手のひらサイズのベルを取り出し数回鳴らす。
すると、少し離れた場所に入った時と同じ扉が出現した。
「ベルを鳴らすと司書さんが扉を繋げてくれるんですよ。常に繋げておくのは疲れるみたいで」
扉をくぐり元の場所に帰ってきた。暗い場所だったので司書室がとても明るい。
「お疲れ様。収穫はあったみたいね」
労う綾女が右手を出す。
「ありましたよ。めぼしいものが」
悠がそう言って、出された手に回収してきた本を乗せる。それをぱらぱらとめくり頷く。
「確かに良さそうね」
本を悠に返す。
「多分この程度だったら三日もあれば解読できますよ」
そう言ってから、灯也に別室へ移動する旨を伝える。




