図書委員会
そこまでの話を聞き終えて、灯也は大変なところに来てしまったと後悔する。 どういうものかは知らないが戦闘がおこなわれる学校で、尚且つ普通の図書委員会ではなく、戦闘において実力トップクラスの委員会。
「あの、最初に言っておくべきだったんですが、図書委員会に入るかはこの後担任の先生と話し合ってからじゃダメですか?」
浅雨高校は基本的に自由な校風で通っている。委員会は強制ではなく、あくまで任意。しかし、それだけに任せてしまうと立ち行かなくなる委員会も存在するので、一先ずきっかけとして選出が行われる。そのあとに委員会を続けるか辞めるかは本人が選択できるシステムになっていた。
この知識もクラスの委員長に教えてもらったものだった。
「委員長である私の目の前で、そのセリフをよく言えるわね」
全てを聞いたうえでの結論だったが、どうにも納得してもらえている様子が無い。
「確かに、図書委員会と聞いたら嫌がる新入生は多いですからねぇ。部活の先輩から聞いたとか、友達同士のネットワークとか、大概は最初だけ来て、そのまま除籍になりますし」
悠には思うところがあるらしく冷静に語るが、
「でも委員会としては一年生の確保は必須だと思わない? 今年も彼以外には逃げられそうだし」
綾女は絶対に逃がさない、という目で灯也を見る。と同時に司書室の扉が開き、一人の教師が入ってくる。
「お待たせしましたぁ。先生って大変なんですよぉ?」
その間延びした口調に覚えがある灯也はそちらを向くと、そこには紛れもなく担任がいた。
「あぁ菅野君、ちゃんと来てくれたんですねぇ。先生嬉しいですよぉ」
「なんだ、薫子ちゃんのクラスだったのね」
先生をちゃん付けで呼ぶ綾女。しかし呼ばれた方は全く気にする様子は無く、席について一息つく。
「あ、そうそう菅野君に渡し忘れたプリントがあるんですよぉ」
手持ちのケースからプリントを取り出し、灯也に渡す。
受け取ったプリントのタイトルには【校憑について】と書かれていた。
綾女からもタイトルが見えたようで、
「校憑なら、さっき私たちが教えたわよ? 納得はしてなかったみたいだけど」
と、灯也の心の中を見透かしていた。
灯也はプリントを担任から渡されたことで、半分以上校憑の事を信じ始めていた。
「昨日は大変だったんですよぉ。毎年の事なんですけど、生徒さんに校憑の存在を教えると必ず、疲れてるんですか? って心配されちゃうんですよねぇ。……まぁ、特殊な事情ですから仕方ないんですけどねぇ。菅野君も徐々に納得すれば良いですよぉ」
一仕事終えた薫子に悠が紅茶を持って現れる。
「先生もどうぞ」
「ありがとうございます水沢さん。頂きますね」
空間に馴染んでいる担任に灯也が聞く。
「ところで、何で先生は此処でお茶を?」
すると担任は不思議そうな顔した後に気付く。
「それはですねぇ、私が図書委員会の担当教員だからですよぉ?」
人差し指を立て話を続ける。
「それから先程、扉の前で聞こえてしまったんですが、菅野君は委員会に入る事に躊躇を感じているんですねぇ? 私も図書委員会が避けられがちなのは知っていますぅ。しかし、図書委員会というのは学校において重要な委員会ですよぉ? 菅野君にはイメージだけで嫌がらずに前向きに考えて欲しいんですけどねぇ」
担任と先輩たちに囲まれている中で、改めての拒否や先延ばしは出来そうにない。自分の高校生活の三年間を考えたうえで答えを出す。
「わかりました。図書委員会に入ります」
あきらめ半分でそう告げる。
「菅野君ならわかってくれると思ってましたぁ」
「後輩ができるのは嬉しいです。よろしくね」
「図書に従事してくれる生徒が増えるのは喜ばしいな」
担任、悠、司書さんの三人は喜んで歓迎している。
「まあ歓迎はするけど、今日から委員会の仕事をこなしてもらうわよ」
戦闘ばかりに目がいっていたが、当然委員会としての業務もある。その事を失念していた灯也の心境を悟った綾女が続ける。
「今日の放課後に集合。さぼりは屋上から逆さ吊りだから」
その宣言と同時に昼休み終了のチャイムが鳴る。
「はーい、皆さん授業ですよぉ」
教師の解散命令により、逆さ吊りの真意を聞く暇もなく灯也は司書室から出された。




